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NTTと電機大、無線通信エリア推定にかかる時間を1/100万以上に削減する技術

 NTT(持株)と東京電機大学は、無線通信エリア推定に必要とされる電波伝搬シミュレーションを世界最高速度で実現する技術を開発した。従来技術の1/100万以上に計算時間を削減できるもので、基地局の省電力化や6G/IOWN時代の次世代サービス創出が期待できる。

アニーリングマシンを活用で1/100万以上に時間削減

 電波の品質を確保し、快適な環境を実現するには一定以上のレベルで電波を受信する必要がある。電波の送信側と受信側が直接見通せない状況では、反射などにより電波の強度が下がってしまう。それを防ぐためには、電波伝搬にもとづいたエリア設計や制御が必要となる。

 無線信号が複数の伝搬路を通り受信機へ到来する「マルチパス環境」では、建物など構造物で複数回反射された電波など複数の伝播経路からのアンテナが受信機へ到来する。これらの伝播経路を、構造物の面の組み合わせで求める「レイトレース法」では、反射や回折するたびに経路の候補が指数関数的に増えていくなどの理由から、伝搬損失の小さい主要な伝播経路を高速で見つけ出すことは、計算量が膨大な数に増えるために難しいという。

 今回、NTTと東京電機大学が開発した手法は、最適化問題の近似解を求めることを得意とする「アニーリングマシン」とQUBO(二次無制約二値最適化)を活用するもの。

 レイトレース法のような電波の経路探索に伴う伝搬損失計算を、一般的な出発点から複数地点を経由して到着点に至る最短経路探索問題と組み合わせて、伝搬損失が最小となる経路を逐次検索する。

 伝搬シミュレーションでは、最短経路を探索する一般的な計算とは異なり、同一条件下で複数の伝播経路を探索する必要があり、経路検索規模は構造物の数と散乱回数の2つの要素で決定されるという違いがある。

 そこで伝搬損失の小さいものから順次伝播経路を探索するため、QUBOで記述する技術も確立。アニーリングマシン上で動作する電波伝搬のシミュレーションを実現した。NTTによれば、従来と比較して計算時間が1/100万以上に削減されているという。

省電力化・次世代サービス創出に期待

 NTTでは今回の技術により、基地局配置のさらなる適正化に加えて省電力化が期待できるとしてる。

 加えて、すでに設定されている基地局の周囲に新たな構造物が建設された際や端末側において電波の遮蔽が発生した際のエリア変化にもリアルタイムレベルに対応できることから、産業での使用などの複雑な環境でも無線通信の品質向上にもつながる見込み。

 このほか、高速大容量かつ低遅延でつながる無線システムの安定性の向上が可能となることから、6G/IOWN時代における新たなサービス創出が期待できるという。