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海中で1Mbps/300mの通信に成功、ドコモらの実験

 NTT(持株)、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、海中音響通信技術に関する共同実験で、浅海域(水深30m程度)での伝送速度1Mbps/300mを達成した。

 この実験には、海中音響通信の高速化を実現する時空間等化技術と、安定化を実現する環境雑音耐性向上技術が用いられている。そして、これらの技術に対応する完全遠隔無線制御型水中ドローンも開発された。

 今後は、通信のさらなる高速化や長距離化、水産分野における実用化などが期待される。

水中ドローンのシステム構成

 今回の実験では、海中に固定した共振周波数の異なる5素子の送波器アレーと海上の音響通信装置から構成される送信機を活用。広帯域の変調信号が、合計10素子の送波器から海中へ送信される。

 受信機は16個の受波器アレーと海上の音響通信装置によって構成され、受波器アレーで受信した変調信号を、音響通信装置による信号処理で復調させるしくみ。

伝送実験系の構成

 これまで、海中での無線通信については、陸上と比べて20万倍低速となる遅延波の影響により、正常な通信が困難だったという。また、海洋生物が発するインパルス性雑音の影響や、海面の反射波によるドップラーシフトも、通信の高速化や安定化を妨げる要因とされていた。

 今回は、受信機の音響通信装置の受信回路において、遅延波の影響を除去する時空間等化技術と、環境雑音耐性向上技術を組み合わせた。これにより、浅海域における伝送速度1Mbpsの300m無線伝送実験に成功した。

 伝送速度は従来の10倍以上高速となり、SD画質(圧縮方式H.264・480p・30fps)映像のストリーミング再生に必要な伝送速度に相当する。海中の設備や岸壁を撮影した映像を伝送することで、リアルタイム劣化診断などへの活用が見込まれる。

「完全遠隔無線制御型水中ドローン」も開発

 新たに開発された「完全遠隔無線制御型水中ドローン」は、海上では水中の映像を確認しながら水中ドローンを操作できる。

 また、海上にある音響通信装置が水中ドローンに対して制御信号を送信。水中ドローンは制御信号に従って移動・撮影を実施し、撮影した映像のストリーミングデータを海上の音響通信装置へ送信する。

 従来の有線制御型の水中ドローンでは航走が困難であった狭いエリアでも、水中ドローンの遠隔操作が実現し、海中設備点検の作業性の向上などにつながる。

 NTT(持株)、ドコモ、NTT Comは、この水中ドローンを用いた実証実験を、静岡県静岡市の海洋実証フィールドで実施する予定。