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来日したエピックゲームズCEO、「スマホ新法」に向けてアップルへの「恨み節」とグーグルへの「期待」を語る
2025年11月14日 16:56
Epic Gamesは14日、開発者イベント「Unreal Feat Tokyo 2025」を開催した。初日は、エピックゲームズ(Epic Games)CEOのティム・スウィーニー(Tim Sweeney)氏とEpic Games Japanの河﨑高之氏による基調講演が行われ、同社プラットフォームの最新情報が披露された。
また、アップル(Apple)やグーグル(Google)が提供するアプリストアについて、基調講演でも時間を割いて語られた。
ゲームだけではないUnreal Engine
Epic Gamesのゲームエンジン「Unreal Engine」は、世界各国でさまざまなゲーム開発で活用されている。ゲームだけでなく、自動車産業や建築分野などでも活用されており、裾野が広がっている。
同社でも、ゲームエンジンだけでなくさまざまな開発ツールを束ねるマーケットプレイス「Fab」や、フレンド機能やボイスチャット機能を備えたデベロッパー向けのオンラインサービスを展開している。
河﨑氏からは、日本での取り組みとして、ソニー・ホンダモビリティの電気自動車「AFEELA」の開発やカバーのバーチャルライブなどの事例が紹介された。リアルタイムで映像が生成され、実際のアーティストによる音楽ライブと同じようなカメラの露出や時間帯による変化などが演出できる。ゲームでは、サイレントヒルシリーズやソニックシリーズ、鬼滅の刃のアクションゲームなどでUnreal Engineが活用されている。河﨑氏は、開発者に向けて「皆さんの成功が、私たちの成功」と呼びかけ、今後はゲームの枠を超えたあらゆる産業でパートナーシップを結んでいくとした。
独自アプリストア「Epic Games Store」
「Epic Games Store」は、Epic独自のアプリストアで、iOS版はEU圏で、Android版は日本を含む世界各国で展開している。
Epic Games Storeの特徴として、低廉な手数料が挙げられる。iOSのApp StoreやAndroidのGoogle Playでは、アプリの購入やアプリ内の決済で通常30%の手数料がかかるという。
一方、Epic Games Storeでは、手数料を12%に抑えている。アプリ内決済では、決済スキームをデベロッパー側で手配する場合は手数料が不要になる。さらに、年間の収益が100万ドルまでのゲームでは、手数料を無償化し収益が100%得られる。
アプリストアを巡って同社は、App StoreやGoogle Playの手数料率を問題視しており、独自のアプリストアを開設している。OS提供者以外のストアでアプリを導入する「サイドローディング」については、日本でも法整備が進んでおり、「スマホソフト競争促進法」(スマホ新法)が12月に施行される。
基調講演でもスウィーニー氏は「私たちがゲーム業界全体を前向きに変えようとしている。30%のストア手数料は明らかに高すぎる」と指摘。「来年早々には、新たな日本の法規制により、競合アプリストアがAppleのApp Storeと競争し、Google Playともより効果的に競合できるようになる見込み」と期待感を示した。
また、Epic Gamesは米国や欧州などでアップルやグーグルと、手数料やアプリストアの展開を巡って法廷闘争を繰り広げてきた。スウィーニー氏は、米国での裁判によってあらゆるデベロッパーが手数料なくアプリ内決済ができるようになったことや、欧州内でサードパーティーのアプリストアが利用できるようになったことなどの事例を紹介。
特に、同社の主要ゲームの1つに挙げられる「フォートナイト」を巡っては、規約違反を名目にApp Storeで配信が停止されている。欧州では、サイドローディングによりフォートナイトが帰ってきたとし、「日本でも1月ごろには(Epic Games Storeで)提供できるようになる」との考えを示した。
アップルへの恨み節
スウィーニー氏は、特にアップルの一連の対応に嫌悪感を示している。
たとえば、先述のEU圏内でのサイドローディング解禁について、解禁当初の挙動を振り返り「わかりづらい画面や設定を変更せよという表示が出てきて、ダウンロードするまでに15のステップが必要だった。そのときに無事インストールできたのは100人中35人しかいなかった」とコメント。その後、EUの勧告などもあり「100人中75人」まで改善したという。
日本では、12月にスマホ新法の施行が控えている。現状iPhoneでは「App Store」からのみアプリのダウンロードができるとされており、基本的にはアップルのポリシーが適用される。スウィーニー氏は「アプリの流通で独占状態が続いている。決済の制限など日本の開発者も、我々と同じように課題感を持っている」と指摘する。
グーグルには一定の歩み寄りをみせる
アップルと同様に、グーグルともサイドローディング関連で争ってきた。スウィーニー氏は、グーグルとは米国の裁判所での和解に加え、両社間での和解も成立したとコメントした。
Google Playで配信されているアプリでも、アプリ内決済はデベロッパー独自の決済手段が利用できるようになったほか、決済に関わる手数料体系が見直され、より低廉な手数料でアプリをリリースできるようになった。これまでは一律で30%の手数料がかかっていたが、手数料が9%(Googleの決済手段を利用する場合は追加で5%、合計14%)に引き下げられるなど、改善された。
また、スウィーニー氏は「グーグルは興味深いポジションにいる」とコメント。和解に向けて話し合いを続けてきたグーグルについて「いいところがたくさんある」と指摘。GeminiをはじめとしたAIサービスや検索機能、クラウド、Androidも含め、素晴らしい製品だといい、「今後は平和でいきたい。これらのサービスがデベロッパーの味方になってくれればいい」と語る。Androidがより開かれたものになる兆しが見えるとし、中立的な技術サプライヤーとなれば、通信キャリアや端末メーカーにもよいことだと評価した。
日本の「スマホ新法」
日本のスマホ新法についてスウィーニー氏は「素晴らしいことだ。App Storeや決済サービスもオープンになる」と一定の評価を示す。
一方、ここでもアップルへの恨み節が続く。「アップルは新しい法律ができても、非常に賢く立ち回れる。法律を知っていても“それを守らない”、指摘して初めて守るようになるという状態が1年以上続いた」と欧州での出来事を振り返るスウィーニー氏。「政府機関も厳しく取り締まらないといけない。日本では、法律を尊重してほしい。不誠実さがなくなれば良いと思う」と自身の考えを述べた。
数兆ドルのデジタル経済への発展に期待
スウィーニー氏は、このほかメタバースや同社の将来についてコメント。
現在のメタバースについては「メタバース空間というよりは、個々のゲームにユーザーがついている状態」と評価。発展途上国などでは、端末のスペックが展開のボトルネックになっているものの、個々に集まっているユーザーが1つになることで、よりメタバースの影響力が増してくるのではないかと話した。
また、Unreal Engineがゲーム以外への活用が進んでいる点について、「技術以外にも、映画からリアルイベントへの波及など、消費者のエコシステムの循環にうまく組み込まれている」とその相乗効果を指摘。「数十年後には数兆ドルのデジタル経済が生まれるのではないか」と語った。

























