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Epic Gamesがモバイル版アプリストアを設立するわけは? サイドローディングだけで解決できない障壁

 Epic Gamesは16日、独自のアプリストア「Epic Games Store」のモバイル版を、iPhone版をEU圏内で、Android版を全世界に提供を開始した。フォートナイトなど同社のゲームのほか、他社のゲームやアプリも取り扱うという。

 同社とアップル(Apple)、グーグル(Google)を巡っては、規約違反などを理由にアップルやグーグルのアプリストアから締め出すような対応がなされたこともあり、日本においても記事執筆時点でApp Storeからフォートナイトをダウンロードすることはできない。

 今回の取り組みは、EU圏内でEU域内に適用される規則「Digital Markets Act(DMA、デジタル市場法)」が関連。日本においても「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が6月に可決、成立したため、今後日本のiPhone向けにも「Epic Games Store」が提供されるとしている。同社は「うまくいけば来年にもリリースする」としており、着実に準備が進められている。

 独自ストアをオープンさせる背景について、Epic Games Storeマネージャーのスティーブ・アリソン氏は、ユーザーからの課金額に対する手数料によるものが大きいと説明する。同社では、2018年にパソコンでアプリストアをオープンさせており、開設当時はアプリストアに30%分を納めるものにしていたが、現在は最大95%までデベロッパーの取り分が拡大しているとし、モバイル市場でのアプリストアの取り分が非常に高いと指摘。また、アプリ内課金を、アプリストアを介さずに独自の決済手段で課金できるようにするなど、デベロッパーだけでなくプレイヤーにもお得を体感できる施策を実施していると話す。

 Epic Games Storeをパソコンで使っていたユーザーは、同じアカウントでモバイル版も利用でき、たとえばパソコンでプレイしているゲームをAndroidスマートフォンでプレイできるようになる。

 今回のモバイル版リリースに当たっては、2024年末までに1億の新規ユーザー獲得を目指すとしている。

インストールしづらい体験をアプリストアで解消へ

 一方で、公式のアプリストアを介さずにアプリをダウンロードするサイドローディングについて、「手順が多い」と指摘する。

 たとえば、Epic Games StoreをAndroidでダウンロードするためには、最大12のステップが必要になる。その中のいくつかは“筋が通ったもの”とするものの、そのほかは「わざとユーザーの心をくじくような目的で入れられているのでは」と疑問を呈する。

 「2024年末の1億ユーザー獲得未達があれば、これが一番大きなハードルだ」とするほど、同社ではこのダウンロード手順を障害だと考えているとしながらも、一度、Epic Games Storeを入れてしまえば、そこからアプリをダウンロードするのは非常にシンプルだとした。Epic Games以外のデベロッパーにとっても、Epic Games Storeへアプリを出すことはメリットが大きいことをあらためて示した。

「Epic Games Store」をAndroid端末にダウンロードするまでの12のステップ

 なお、iOSにサイドローディングでアプリを入れる際は、Androidよりも多い15のステップがあるという。EUでは、アップルに対しても調査を行っているといい、ダウンロード手順についても今後調査が進むとみられる。

他社の独自ストアにも展開へ

 Epic Gamesのゲームが配信される独立系アプリストアの1つ「AltStore」も、EUのDMA法により設立されたアプリストアの1つで、過去にApp Storeからリジェクトされたアプリのいくつかがダウンロードできる。たとえば、iPadでWindowsを動かせる仮想ソフトなどがラインアップされている。

 「AltStore」の目的について「規模が小さく力がないデベロッパーを支援すること」だとしており、App Storeでリジェクトされたものやユーザーからの評価「レビュー」が不当に扱われたものなどを支援していきたいという。「AltStore」では、パーセンテージによる手数料は設けていないとしており、「開発者は自分たちが開発したものに対して、すべて自分たちで“儲け”を手に入れられる」とした。

 今回の、独自ストアとデベロッパー相互の取り組みについて、できるだけEpic Games Storeに多くのコンテンツを置いてもらいたい一方、アップルやグーグルのアプリストアから、サイドローディングで独自のアプリストアを入れてもらうのは非常に難しいとコメント。モバイル版の独自ストアの規模を全体で拡大すべく、相互への取り組みを進めていく方向性が示された。