石野純也の「スマホとお金」

「Pixel 10」シリーズいよいよ登場、コスパ最優秀が無印「Pixel 10」と言える理由

 Pixelシリーズの最新モデル「Pixel 10」シリーズが、8月28日に発売されます。今年は、10月発売にズレこんだフォルダブルモデルの「Pixel 10 Pro Fold」を除く3機種が同時に登場。チップセットを「Tensor G5」に刷新し、その処理能力を生かしたAI機能を多数盛り込んでいるのが大きな特徴です。

 昨年から4モデル展開になったPixelですが、結論から言えば、Pixel 10シリーズは無印のPixel 10が特にコストパフォーマンスに優れた端末に仕上がっている印象。販路によっては、残クレ的な仕組みで1年間月額1円になることもあり、買いやすいのが魅力です。

 では、なぜ無印のPixel 10がいいのでしょうか。実機を使いつつ、その理由を述べていきます。

Pixel 10シリーズが28日に発売される。ここでは、ノーマルモデルのPixel 10を中心に、その価値をレビューしていく

望遠カメラ搭載でProとの差が埋まったPixel 10

 望遠レンズの有無でプロモデルとの違いを出していたPixel 9シリーズとは異なり、Pixel 10はカメラの差分が少なくなりました。無印のPixel 10も、5倍のペリスコープ型望遠カメラを搭載。

 プロモデルより画素数が低い10.8メガピクセルのため、ピクセルビニングを解除した切り出しズームはできないものの、光学式手振れ補正に対応しているため、安定して遠くの被写体を捉えることができます。

これまでは超広角と広角の2つだったカメラが3つに増えた。しかもペリスコープ型で、倍率も5倍と高い

 以下は、Pixel 10と「Pixel 10 Pro」の5倍ズームで撮った写真。明るい場所での撮影だと、大きな差が出ることはありませんでした。

 10倍まで拡大すると、Pixel 10 Pro側は48メガピクセルからの切り出しになるため、それがないPixel 10の劣化が目立つようになりますが、ある程度AIで補正がかかっているため、実用的な仕上がりに。

 スマホで10倍ズームを多用する人には向きませんが、そうでなければ十分な仕様と言えます。

広角カメラ(1倍)で撮った写真
Pixel 10の5倍ズームで撮影。劣化がなく、解像感もある
こちらはPixel 10 Proで撮影したもの。画素数は高いが、仕上がりはほぼ同じだ
Pixel 10は5倍を超えるとデジタルズームが入ってくるため、やや画質は粗くなる。ただし、超解像ズームが効くため、細部を拡大しなければ十分なクオリティには仕上がる

 Pixel 10 Proは、拡散モデルを組み合わせた「超解像ズームPro」に対応しており、スペック表だと最大望遠倍率に5倍もの差があるように見えますが、これが少々クセモノ。

 早い話、生成AIを組み合わせて足りない部分を“描いている”のが超解像ズームPro。被写体にもよるところはあるものの、あたかも生成AIが描いたイラストのようになってしまうことがありました。

先ほどの写真を、50倍程度で撮影したもの。どことなく違和感はあるが、解像感は高い
100倍ズームだと粗くなって生成AIで補完する場所が増えるためか、より“書き起こし感”が増す。看板の文字が、実際とは大きく異なる書体になってしまった

 しかも、超解像ズームProの拡散モデルは30倍程度から適用されてしまいます。この機能が動作すると、元画像も残るため、その点は安心ですが、使い勝手を考えると正直なところ、「あってもなくても」というような気がしました。

 おもしろい機能であることは確かですが、実用性には疑問符がつくと言えるでしょう。この観点では、Pixel 10で十分だと感じました。

 実際には望遠カメラだけでなく、メインの広角カメラやウルトラワイドカメラのスペックも異なっており、いずれもPixel 10 Proの方が優秀。

 ただ、暗い場所で撮って拡大するといった形でなければ、差が分かりづらいほど、どちらも画質は高くなっています。

 これに対し、Pixel 10は128GB版が12万8900円、256版でも14万3900円に抑えられており、256GB版からとなるPixel 10 Proの17万4900円より同容量で3万円ほど安くなっています。

広角で撮った料理の写真
こちらは、Pixel 10 Proを使った。センサーの仕様はこちらが上だが、比較的光量がある料理の撮影程度だと、ほぼ差は出ない

AIの機能はProと同じ、新機能もほぼ網羅

 カメラ以外のハードウェアだと、ディスプレイの最小リフレッシュレートがPixel 10 Proは1Hzまで落とせるのに対し、Pixel 10は60Hzが下限になるため、バッテリーの持ちに影響します。最大輝度もPixel 10 Proの方が高いものの、正直なところ、見比べなければ判別できないレベル。

 逆に言えば、無印のPixelは、ユーザーに気づかれにくいような箇所を削ぎ落して、上手にコストダウンを図っていると言えます。

ディスプレイのリフレッシュレートは、最低値が60Hz。1Hzまで落とせるPixel 10 Proの方が、より消費電力を抑えられる

 もう1つの大きな違いがメモリ(RAM)の容量で、Pixel 10が12GBなのに対し、Pixel 10 Proは16GBとよりサイズが大きくなっています。

 ただし、これが使い勝手に影響を与えるかというと、そのようなことはありません。オンデバイスAIでの差分は、先に挙げた超解像ズームProだけ。

 将来的に搭載される機能に違いが出てくるおそれはあるものの、グーグルがどのようなものを開発するか次第にもなるため、現時点でその判断をするのは難しいと言えるでしょう。

 そのほかのAI機能については、シリーズ共通で搭載。売りの1つである「マジックサジェスト」や、「マイボイス通訳」についてはPixel 10でも利用可能。

 もちろん、Proモデルよりサジェストされるコンテンツが少なかったり、翻訳される音声がワンテンポ遅れたりというような差分はありません。

メールやカレンダーなど、各種アプリから情報を集約して、コミュニケーション中にそれを提示するマジックサジェスト
自分の声をそのまま外国語(英語)に翻訳できるマイボイス通訳も利用が可能だ

 また、写っている映像を元に、カメラのフレーミングや構図をAIがアドバイスする「カメラコーチ」も、無印のPixel 10で利用できました。

 こちらは、実際のアドバイスを生成する際にクラウドAIを使っているようで、ますます差が出ません。売りになっているのがAIであるならば、それをよりリーズナブルな価格で利用できるPixel 10の方がお得だと思います。

撮ろうとしている被写体を認識して、フレーミングや構図のアドバイスをしてくれるカメラコーチ。この機能もPixel 10で利用できる

 ただし、ストレージ容量の違いはいかんともしがたいところ。日本版は、Pixel 10が128GBと256GB、Pixel 10 Proが256GBと512GBというラインナップになっており、256GBより多いストレージが必要なユーザーだと、Pixel 10が選択肢から外れてきます。

 逆に、こうした部分にこだわりがない人にはPixel 10がオススメ。Pixel 9までの端末以上に、万人受けしやすいモデルになったと感じています。

ソフトバンクなら驚きの月1円、実質価格がマイナスになるケースも

 さらに、無印のPixel 10は売れ筋になると見込まれているのか、キャリアも販売に力を注いでいて、端末購入プログラムでは驚くような価格が設定されています。

 筆者が感心したのは、ソフトバンクの「新トクするサポート+」。128GB版に限った話になってしまいますが、MNPや新規契約、機種変更を問わず、1年間の支払いが毎月1円になります。

ソフトバンクは、新トクするサポート+の利用で1年間の支払いを月1円まで抑えた

 新トクするサポート+は、13カ月目で端末を下取りに出す特典Aと、25カ月目以降に下取りに出す特典Bに分かれており、前者が旧「新トクするサポート(プレミアム)」、後者が旧「新トクするサポート(スタンダード)」に相当します。

 詳しい解説は前回の連載を参照してほしいのですが、これによってPixel 10は1年間、支払いが毎月1円に抑えられています。

 新トクするサポート+で特典Aを利用するには、特典利用料の2万2000円と、早期利用料の1万1000円or2万2000円(機種変更の場合)が必要。これを加味すると、実質価格は3万3012円か4万4012円になります。

 ただし、翌年も機種変更をソフトバンクで行うと、「買い替え応援割」が適用され、2万2000円も免除。乗り換え(MNP)、新規契約の場合だと実質価格は1万円台、機種変更でも2万円台で購入できます。

1年後の話になるが、そのままソフトバンクで機種変更すると買い替え応援割の対象になり、さらに実質価格が2万2000円下がる

 さらにさらに、グーグル主催のキャンペーンとして、事前に抽選でPayPayポイントが当たる特典も用意されています。この1等が2万円。新規契約やMNPだと実質価格はマイナスに(笑)。

 機種変更でも2012円でPixel 10を買えてしまいます。この抽選は最低でも5000ポイントが当たるため、1等でなかったとしてもかなりお得感があります。

あくまで主催はグーグル(割引の範囲を超えないため、ここは重要なポイント)だが、最大で2万ポイントが当たる。場合によっては実質価格がマイナスになることも

 残念ながら、Proモデル2機種にはこのような大胆な価格設定がされていません。裏を返すと、これはソフトバンクがPixel 10を売りたいということ。キャリアに大プッシュされているのも、無印のPixel 10というわけです。

 特にスマホのオンデバイスAIは発展途上なだけに、進化が速い分野。処理能力によってできることが増えていくため、毎年買い替えるのも選択肢の1つになります。こうした買い方ができるのも、Pixel 10の魅力と言えるでしょう。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya