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スマホ新法の施行まであと70日、公正な競争環境に向けて動くコンソーシアム「ODBC」の活動を代表理事が語る
2025年10月8日 19:10
オープンデジタルビジネスコンソーシアム(ODBC)は8日、記者向けに説明会を開催した。ODBCでは、12月18日に施行予定の「スマホソフトウェア競争促進法」いわゆる“スマホ新法”に対応すべく、公正取引委員会など当局に対して提案や助言などアプローチを行う団体で、クアルコム(Qualcomm)やグーグル(Google)、Facebookの日本法人とガーミン(Garmin)が会員となり構成されている。
5月に設立されたこの団体は、スマホ新法に対しても意見表明をしており、会員4社が合意した内容に基づき、当局に働きかけを行っている。説明会では、団体発足の目的や新法のガイドラインとその感触について、代表理事の黒田岳士氏から語られた。
ユーザーの利便性向上が第一
団体の目的を黒田氏は「消費者の利便性と安全性の向上」と説明。安全で信頼性の高いデジタルサービスを消費者に届ける環境作りを目的にしており、これに向けて公正な競争環境を構築する活動を進めている。
そこで重要になるのが、「特定のプラットフォームに依存しない相互の運用性(インターオペラビリティ)の促進」にあるという。イノベーションが促進されれば、新しいサービスが生まれ、消費者に利益を及ぼす、この循環を巡らせることを目指していると黒田氏は語る。
これを実現するために絡んでくるのが“スマホ新法”であり、団体ではこの施行を見守り、公正な環境実現に向けて活動を進めている。このスマホ新法については、指針案に対して16の意見と13の提案を実施している。たとえば、利用者における利便性の確保を明記するべきであったり、不必要な恐怖心、不安感を与えることの内容、事実に基づいた中立的表現に限定すべきといった内容を意見し、ユーザーや第三者のサービスを妨害することのないように務めた。黒田氏は「かなり反映されている」とコメント、引き続き施行を注視していくとともに、当局との意見交換も今後続けていくとした。
団体では、これ以外にも情報発信と啓発活動やスタートアップへの支援を実施していくという。ユーザー向けへの情報発信について黒田氏は「しばらくは事業者に向けた活動が中心」だとし、ユーザー向けへの広報活動はこれからの様子が見られたが、スタートアップ支援については、声かけを進めているという。
小が大を指摘できる団体に
スマホ新法では、違反事項があった場合に、誰もが公正取引委員会に申し立てができると定められており、それに対する報復行為を禁止しているが、なかなか小さい会社が大きい会社に対して「立ち向かったり注文したりすることは難しい」(黒田氏)とコメント。団体では、これら小さい会社や団体からの声を拾って、当局に届ける活動もしていきたいと語る。
黒田氏は、これらの活動を通じて、業界全体の信頼関係を作り上げていきたいとコメント。本来であれば、市場のなかで解決できればそれに超したことがないとの考えを示した上で、「市場で解決できなければ、集まって意見を集約した上で『モバイルデジタルエコシステム全体をよくしていく』という共通の目標に向けて活動したい」とした。
ガイドラインについて「結局はケースバイケース」
スマホ新法にあたり制定されたガイドラインについて黒田氏は「結局突き詰めていくとケースバイケース」とコメント。ガイドラインができて施行されたからといってすぐに問題が解決するわけではなく、声が挙がっているものに対して、事業者の方でしっかり努力していくことがまずは第一だとした。その上で、ガイドラインと照らし合わせて、改善していくことが重要になってくると語った。
欧州では、デジタル市場法(DMA)として同様の法律が先行して施行されているが、個人情報やセキュリティ面などでさまざまな問題が挙げられている。黒田氏は「実際に戦争のようにやっていくのは良くない。いきなりではなく、逐次解決できるところからやっていくのが良いのでは」とコメント。ユーザーの安全性と利便性のバランスを、“ユーザー目線”でしっかり取っていくことが重要だとした。



