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スマホアプリ「サイドローディング」義務付ける法案、課金システムも自由化
2024年2月29日 17:52
プラットフォーマー規制、違反なら課徴金も
「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律案」(仮称)では、スマートフォンのOSやアプリストア、ブラウザ、検索エンジンを「特定ソフトウェア」と定義。公正な競争環境を確保する目的で一定の規制を設ける。OS提供事業者以外のストアでアプリを導入する「サイドローディング」の義務付けや独自の課金システムの開放などを事業者に求める。対象の事業者は「一定規模以上の事業を行う者」で政令で指定される。
これまで、独占禁止法を適用することで競争環境の確保を図ってきたが、個別の事案ごとに詳細な調査が必要で、即時性のある対処が難しい課題があった。今回、検討されている法案ではあらかじめ法的に事前規制を設けることで先手を打つ。運用に際しては、公正取引委員会が監督。定期的な報告書の提出を事業者側に求める。関係事業者や各省庁、外国の競争当局との連携も含めて、違反が疑われる場合には是正の勧告・命令、排除措置命令のほか課徴金の納付も検討する。
背景には、生活や経済の基盤としての役割を果たすスマートフォンが一部の事業者による寡占状態にあることを問題視する見方がある。ソフトウェア分野は、市場機能による是正が困難として、競争環境整備の必要性が訴えられている。今通常国会での提出・成立を目指す。同様の法規制はEU、英国、豪州、韓国でも進んでいる。
サイドローディング、課金システムなどで制限撤廃求める
スマートフォンのソフトウェアに関する競争上の課題について、アプリストアにおける競争が制限されていることが課題として挙げられている。新規参入の困難さから、アプリ事業者に対する手数料の高止まりやより低廉な価格のサービスを享受できる機会が失われているともされており、ほかの事業者がアプリストアを提供することを妨げてはならないという規定が検討されている。
ただし、Web上から無制限にアプリを導入できるというものではなく、新たなアプリストア事業者が用意するストアからアプリを導入するかたちが想定されている。プラットフォーマー側もセキュリティやプライバシー保護の観点から一定の介入が可能となる。また、拒絶のリスクをおそれるあまり、イノベーションに躊躇が生まれるとして、アプリストアでの審査でも不公正な取り扱いをしないよう求める。
あわせて、プラットフォーマーが提供する以外の課金システムの利用やアプリ内での割引情報の表示制限なども制限されている現状があるが、これらについてもアプリ事業者が独自の仕組みを導入できるよう制度を整える。さらに、プラットフォーマーが提供する以外のブラウザや検索エンジンの解禁、アプリ・サービスのデフォルト設定の操作を簡単にすることも規定。また、検索事業者が自社サービスを優先的に取り扱うこと、プラットフォーマーが取得したデータを競合サービスに取り入れることの禁止やNFCなどをアプリ事業者へ開放することも定める。
フェアな選択肢を提供する
競争政策調査会 事務局長を務める自民党の小林史明 衆議院議員は、スマートフォンのソフトウェアを取り巻く現状について「アプリ事業者の声がほとんど表に出てこない」と実情を指摘する。日本において、アップルのiOS/iPad OSではApp Store以外のアプリストアが認められていない。プラットフォーマーとの力関係の差から、アプリ事業者が声をあげづらい空気が醸成されていることを小林議員は指摘。現状の市場ではアプリストアに競争が働いておらず「本当にここ(手数料)が厳しい」という事業者の訴えを踏まえ、法制度整備の必要性を説く。
アップルは、EUで「デジタル市場法」を受けてサイドローディングを認めた。しかし、一定の基準を満たすアプリには「Core Technology Fee」を課すなど、新たな手数料も生まれている。こうした動きへの対応について小林議員は、法案は検討中であることを踏まえて「より柔軟に対応したい。今のアップルなどの対応を見る限り、想定した法律のなかで対応できるのではないか」と説明した。
さらに「サービスを提供する事業者、ユーザーにフェアな選択肢を提供することが重要。それに必要な最低限のルールを整備したい」と同法案の意義を語る。新法案は今通常国会での提出・成立を目指しており今後、手続きが進められる。