ケータイ用語の基礎知識

第923回:ローカル5Gとは

企業や自治体が導入する、自営5G通信

 ローカル5Gとは、携帯電話事業者が全国で提供しているいわゆる5G(第5世代移動通信システム)サービスではなく、企業や自治体が導入する「自営の5G通信」のことです。

 限られたエリア(土地・建物単位)で利用するという条件の下で免許を受け、5Gを自営無線として利用できるようになります。5Gの仕組みを利用し、地域内や企業内といった比較的小規模組織のニーズにも対応できる通信環境を構築します。また、免許は自ら取得することも、他者に免許取得を代行させてそのシステムを利用することも可能とする、というのがローカル5Gのコンセプトです。

 総務省の情報通信審議会で5Gの技術的条件を検討している「新世代モバイル通信システム委員会」で、このローカル5Gは提言されました。

 5G用の周波数としては、携帯電話事業者4社にも3.7GHz帯、4.5GHz帯と28GHz帯の割り当てが決まっていますが、ローカル5Gには4.5GHz帯の200MHz幅(4.6~4.8GHz)と28GHz帯の900MHz幅(28.2~29.1GHz)を使用することが計画されています。そのうち、衛星通信業務などとの共用検討が終わっている28.2GHz~28.3GHzの100MHz幅が、先行して技術的条件などをとりまとめられ、年内にも実証実験などの形で利用が開始される予定になっています。

土地・建物の持ち主・利用者に免許が交付される

 今後、検討をする可能性はあるとされていますが、ローカル5Gの特徴として挙げられるのは、その免許の割当方針と利用方法に関してでしょう。

 ローカル5Gの免許は原則として、「自己の建物内」又は「自己の土地の敷地内」で、建物又は土地の所有者などに免許することを基本とされています。もちろん、この場合の「自己の」とは借りている場合や、建物または土地の所有者などからシステム構築を依頼された場合もその範囲内で免許取得が可能になるのですが、基本的にはその場所を利用する権利を持つ者に与えられることになります。

 逆に言えば、それぞれの無線のサービスエリアは土地や建物単位で切り分けられることになります。たとえば、オフィスビルなどでは壁の向こうまでエリアになっていてはいけないというわけですね。

 こうすることで、帯域を効率的に利用しようというわけです。多くの利用者がさまざまなニーズでローカル5Gを使うようになったときに、バッティングを生じないようにするために、このような制限が設けられています。

 また、ローカル5Gでは、エリアを効果的に構築するため、免許を取得した場所だけでなく、他者の土地(たとえば道路など)をまたいで通信することも認められています。ただし、その場合は、他者の土地をまたぐ基地局・端末が移動を行わない「固定通信」であること、その土地の利用者がローカル5Gを利用する場合には、干渉を回避する措置を取らなければならない、といった制約があります。

 もうひとつ、このローカル5Gの大きな特徴は「システム構築を依頼された場合」に免許を取れる、つまり、企業や自治体の依頼を受けた通信企業がその土地のローカル5G免許を取得できるということです。

 この仕組みを使ってエリア限定の5Gサービスを提供できれば、通信に関わる企業には大きなビジネスチャンスが広がる可能性があります。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)