ケータイ用語の基礎知識

第944回:地域BWAとは

市区町村単位で地域事業者が提供するBWA(ブロードバンド無線)

 地域BWAとは、その名の通り、市区町村単位で地域事業者が提供する無線電気通信システムです。「BWA」は「広帯域無線アクセス」を意味する英語“Broadband Wireless Access”から来ています。

 2008年に、地域をカバーする「地域BWA」と、全国をカバーする「全国BWA」との区分が制度化されました。全国BWAは、日本全国において公衆向け高速データ通信を行うサービスでWireless City PlanningとUQコミュニケーションズがこれを提供しています。

 地域BWA・全国BWAの免許はどちらも総務省が審査の上で付与します。ちなみに、携帯電話・BWAの全国事業者及びその関連事業者は、地域BWA事業者となることができません。そのため、地元のケーブルテレビ局などが地域BWA事業者となる傾向が多いようです。

 開始当初、地域BWAには、周波数として2.5GHz帯の10MHz帯幅(2582MHz~2592MHz)が割り当てられ、方式としてはWiMAXが選択されました。

 そして2014年の制度改正で、使用できる周波数帯域は2575~2595MHzの20MHz帯幅となり、方式もWiMAX方式もしくはTDD-LTEをベースとしたAXGP方式及びWiMAX R2.1 AE方式が利用できるようになりました。こちらをWiMAX方式に対して「高度化方式」ということがあります。

 2020年1月現在では、地域BWA無線局免許は、高度化方式80者・既存WiMAX方式7者(うち3者が両方)を取得して、サービスを展開しています。また、通信速度も向上し、高度化方式を採用し最も速い事業者では4x4 MIMOなどを使用し下り最大220Mbpsでの通信サービスを提供しています。

ラストワンマイルの固定回線代わりなどに

 地域BWAが制度化された経緯としては、「地理的条件によるデジタルデバイドの解消」、ブロードバンド無線を使って「地域の公共の福祉の増進に寄与すること」といったことが目的にありました。

 地方の過疎地や急峻な場所など条件によって有線のブロードバンド回線を引けないという状況があり、それがインターネット回線の有無による貧富の差の拡大につながる、という恐れがあったわけです。そのために政府は、どのような場所でも充分なスピードでのブロードバンドインターネット回線を提供すべく「地域BWA」という制度を作ったわけです。

 実際に、現在では地域BWAは地理的不利条件にある地域などで固定回線の代わりにラストワンマイルのブロードバンド回線として使われています。ラストワンマイルとは、通信事業者と利用者を結ぶ最後の区間、たとえば電話であれば最寄りの通信局舎から家庭までの回線ということになります。

 また、「地域の公共サービス向上」というのも、地域BWAに大きく期待されていることのひとつです。そのひとつの例が、地方都市部などで地域ユビキタス環境の整備のために、地域イントラネットの基盤として地域BWA回線が使われるケースでしょうか。

 自治体から出先機関への回線、災害現場などへの臨時回線、学校などへの回線などに、地域BWA回線が使われています。また、地域の住民への情報提供サービスの手段としても、地域の防災情報、気象情報、交通情報、防犯情報などを伝えるために使われています。

 2014年の地域BWAに関する制度改正で、免許取得には、市町村との連携が要件として明確化されました。そして上に挙げたようなサービスを提供することを「免許主体と市町村長との間で締結した協定」などが必要となりました。

 免許を付与された地域BWA事業者は、市町村と連携してサービス計画を確実に実施していくことを省庁や市町村、住民から期待されることになるわけです。

自営BWA(案)も……

 地域BWAに割り当てられている帯域を、自営無線でも利用できるようにする検討も進められています。地域BWAが提供されていないエリアでは自営無線として使おうという発想です。利用周波数・方式は地域BWAと全く同じ、2575~2595MHz・AXGPまたはWiMAX R2.1 AEです。

全国的に考えると「地域BWA」のカバーエリアはそれほど大きくないことから、この周波数帯を他の用途にも有効活用しようという動きがあるのです。

日本国内BWAカバーエリア。こうしてみると白の「未カバー」エリアが多いことがわかる。出典:総務省

 また、この「自営BWA」をローカル5Gと併せて制度化し、5G NRの28GHz帯(28.2~28.3GHz)と共に利用することでローカル5Gをより実用的に利用しようという動きもあります。

 5Gの通信方式には、4Gの通信をアンカーバンドとして使い5Gの通信も使う「NSA」方式と、5Gのみの通信で完結する「SA」方式とがあります。「NSA」方式のほうが今のところエリア構築・運用も容易で、多くの事業者・利用者がこのNSA方式から5Gをスタートさせています。

 ローカル5Gの場合も同じで、構築当初の段階ではNSAで構成するケースが多いと考えられます。その場合4Gのアンカーバンドが必要になるのですが、自営のローカル5Gの場合、4G LTEに同じ自営無線「自営BWA」をアンカーバンドを使えばよいのではないか、という発想がここででてきたわけです。

 この構成であれば、SA構成での構築よりも、より早く5Gネットワーク構築が可能となります。それに、両方とも通信事業者などが参入できない自営無線、通信メーカーなどがパッケージとして売り込みやすい構成にもなるでしょう。

 そのようなわけで、地域BWAの未カバーエリアなどでは、周波数帯域の有効活用ということで自営BWAが多く使われるようになるかもしれません。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)