ニュース
テレビゲームのような新スポーツ観戦、KDDIとGoolightがスラックラインW杯で5G実証実験
2019年9月17日 12:39
KDDIと長野県のケーブルテレビ局Goolightは15日、長野県小布施町で開催されたスラックラインのワールドカップ「2019 スラックラインワールドカップジャパン・フルコンボ」の決勝戦の模様を5G回線を使い伝送する実証実験を実施した。
スラックラインとは?
スラックラインは、ポールのあいだに張った幅5cmほどのロープの上で、さまざまなトリックを決める綱渡りを発展させたスポーツ。審査競技で、技の難易度、創造性などによって得点を競う。 スラックラインには100種類ほどの技が存在し、それらを連続してつなげるコンボを決めることで、得点がさらにプラスされていき、加えてジャンプの高さも審査結果に影響を与える。
15日に長野県小布施町の道の駅オアシスおぶせで「2019 スラックラインワールドカップジャパン・フルコンボ」が開催された。ちなみに、小布施町でスラックラインの大会が開かれているのは、同町から世界ランカーが多数排出されていることが大きいそう。小布施町にあるお寺、浄光寺の副住職がドイツで見かけてハマってしまったのがそもそものきっかけという。町民の健康のために広まったものが、いつの間にか世界ランカーを排出するまでになった。なお、同副住職の子息もスラックライン世界ランカーである。
スラックラインは、世界80カ国で300万人以上の愛好者がいる。しかし、新しいスポーツであるがゆえに、ルールや技などの浸透性が進んでいないという問題点がある。そのため、技の難易度や選手の得点などが観客に伝わりづらいという課題を抱えていた。
スラックラインの普及を推進している長野県のケーブルテレビ局Goolightでは、5Gの技術でスラックラインに付加価値をプラスしたいと考え、5Gアイディアコンテストにスラックラインを盛り上げる企画を提出したところ、信越地区の一次審査で入選、KDDIとの実証実験に至った。
今回、KDDIとGoolightが5Gを活用して取り組んだのは、スラックラインの活性化。具体的には、スラックライン大会会場を5Gエリア化、高精細の4K映像を大型ビジョンに投影するとともに、選手のスコア、決めた技を映像に重ねてわかりやすく表示。まるでゲームの画面を見ているかのような、臨場感あふれる映像を実現するとともに、プレイヤーのジャンプとともに、バイブレーションが起きる座席を設置した。
これらの相乗効果により、ルールを良く理解していなくても競技に入り込めるような工夫とプレイヤーとの一体感を生み出そうというのが今回の狙いだ。
実証実験の仕組み
今回の実験では、可搬型基地局を用いて、2基の基地局により会場全体を5Gエリア化。3台の5G端末がぞれぞれ8台の4Kカメラ、高さ判定のモーションカメラ、技の難易度の判定ボタンにつながっている。使用周波数帯は28GHzで、今回用いたのは実験用の周波数帯という。
KDDIでは、ゲームメーカーのアソビズムと提携し、技を可視化する技術を開発。これにより、プレイヤーが決めた技の難易度が表示されるとともに、プレイヤーが技のコンボを決めることで、画面に「コンボ!」などの表示ができる。また、モーションカメラにより、選手が飛んだ高さも測定され画面上に表示される。
こうしした画面上の演出により、競技ルールを知らない観客でも楽しみながら観戦でき、スラックラインのように、全国的な知名度が高くない競技でも観客を呼び込む効果が期待できる。
加えて、会場にはスラックラインのロープの伸縮に連動してバイブレーションを発生させる座席を設置。ロープの根本にセンサーが取り付けられており、プレイヤーのジャンプに合わせて座席も振動するため、観客とプレイヤーの一体感を高め、会場の盛り上がりをより高められることが期待できる。
座席へのバイブレーションの伝送は5Gの性能により遅延は極めて少ない。KDDI 技術統括本部 モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部 副部長の黒澤葉子氏によると、この振動技術は遠隔操作で可動する建機などの操縦にも取り入れることが可能で、活用できる範囲としては幅広いだろうと語った。
今後はローカル5Gの活用も
Goolight 代表取締役社長の丸山康照氏は、今回の結果をもとにほかのスポーツやイベントなどほかの可能性も広げていきたいとしている。また、総務省が提唱する自治体や企業が主体となり自営のネットワークを構築するローカル5Gを通して、コンシューマー向けのサービスはもちろん、イベント活用や工場施設への5G設備の提供なども検討しているという。