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携帯4社が通信エリアの応急復旧、今後の見通しと能登半島地震の難しさ
2024年1月18日 22:11
令和6年能登半島地震における携帯電話各社の応急復旧が完了した。今後、道路や電力の復旧とともに本復旧に向けた作業が始まる見通し。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルが、4社共同で復旧状況と今後の見通しに関する記者会見を開いた。
多くの地域で携帯電話使えず
1月1日に発生した令和6年能登半島地震では最大震度7、マグニチュード7.6を記録し津波も到達するなど、震源地の能登半島を中心として甚大な被害をもたらした。携帯電話各社の設備も被害を受けており、発災後数日間は多数の地域で携帯電話ネットワークが不通となった。
土砂崩れやトンネルの崩落など、道路の被害が目立ち復旧に向かう車両が通行しづらいほか停電が長期化する地域があり、携帯電話サービスが停止する主要な要因となった。
各社の現状は
4社では、移動式の基地局や基地局に電力を供給する電源車などを派遣し、復旧に努めている。すでに、4社の携帯電話ネットワークは一部地域を除き応急復旧が完了した。道路の崩落などにより立ち入ることが難しい地域では依然として携帯電話を利用できない場合があるものの、道路が最低限復旧し次第、速やかな応急復旧を目指す。
ドコモとKDDIでは、ワイドスターIIやStarlinkなど衛星による通信手段を被災地で提供。とくにKDDIでは、Starlinkをバックホール回線として活用するなどの復旧施策を取っている。Starlinkは避難所や災害対応機関にも提供されており、その数は合計で550台にのぼる。オンライン授業や医療用途での利用もあるという。あわせて両社では、船舶基地局を共同で運行し、一時的なエリア復旧を行っている。
ソフトバンクでは、被災地である能登半島で給油所を開設。KDDIの車両にも給油するなど会社間で連携を図っているという。同社では1月31日で3Gのサービス終了を予定していたが、今回の地震を受けて全国的に4月15日までサービスを延長、その後被災地については復旧状況を見て検討する措置が取られる。
楽天モバイルでは、77局の基地局が停波したものの、すでに76局は応急復旧しており、残り1局は道路の復旧待ちと具体的な数が明かされた。石川県内のユーザーを対象に1月~3月分の利用料金などを無償化する。
今後の見通し
今回の地震では、停電や局舎間の中継伝送路や基地局をつなぐ伝送路の切断や局舎と基地局間の伝送路が切断されるなどの被害が主となっているという。冒頭の通り、現時点では立ち入り困難地域を除き、4社ともに応急復旧は完了した。
一方で今回の地震では、道路やトンネルが損傷し、交通が寸断されるなどの被害により、状態を確認できていない基地局もあるとされた。そうした地域にある基地局は、少なくとも道路インフラの整備が最低限復旧することを待つほかないため、復旧には時間がかかる可能性がある。
そうした立ち入り困難な地域では、道路復旧後2~3日もしくは早急に応急復旧を進める方針を各社では示している。応急復旧が完了している場所では、電力会社などと連携し本格的な復旧が進められる。
基地局にたどり着けない
これまでも大規模な災害は幾度となくあり、携帯各社は対策を重ねてきた。そうした中でも今回の災害は「基地局へ行けない」ということが一番の課題になったとNTTドコモ 常務執行役員 ネットワーク本部長の小林宏氏は語る。
被災地での移動の難しさは各社が同様に課題としてコメント。楽天モバイル 執行役員 副CTO兼モバイルネットワーク本部長の竹下紘氏もひとつの場所へアクセスする道路が多方面から寸断されていると、過去の例から見ても異例だとした。
KDDI 執行役員常務 技術統括本部 副統括本部長兼エンジニアリング推進本部長の山本和弘氏によれば、光回線の切断が多かったことも特徴という。ソフトバンク 常務執行役員兼CNOの関和智弘氏は、積雪も基地局への到達を困難にした要因と指摘している。
ドコモとKDDIは、今回始めて船舶型基地局を災害対策の現場へ投入した。ドコモ小林氏はかなり広いエリアを構築できたと評価。一方で荒れる冬の日本海でスタッフの消耗が激しかったと、長期的な運用における課題を明らかにした。KDDI山本氏も同様に、想定を超えた長期運用になっていると語りつつもその有用性を認める。ソフトバンクと楽天モバイルでは、船舶型基地局を有していないが両社ともに今後導入を検討したいという。
ドコモ小林氏は、今回携帯電話サービスが不通になった主な要因である、基地局の電源喪失や通信回線の切断などから、より長期間の運用を可能にするバッテリー、Starlinkなどの衛星回線など今後の対策のポイントを示した。KDDI山本氏は今後導入予定の衛星とスマートフォンの直接通信が災害対策にも有用との見解を語り、ソフトバンク関和氏も同様の見解を示し、避難所などでのつながりやすさに差異があったことから、災害時における「事業者間ローミング」の可能性に言及。楽天モバイル竹下氏も大規模災害では、全社が影響を受けることに触れつつも、どこか1社でもつながればそれを融通しあうことで早期の応急復旧につなげられるとした。あわせて同社が出資するASTスペースモバイルの衛星とスマートフォンの直接通信の商用化を進める。