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楽天モバイルが初めて立ち向かった大地震、明日への備えは

 1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、第4のMNOである楽天モバイルにとって初めての大規模災害となった。同社では20日、報道陣に対して今回の災害への対応や教訓、今後への備えなどを説明した。

MNOとして初の災害対応

 能登半島地震での対応では、道路寸断や積雪などさまざまな要因が能登の復旧活動を困難にさせたと楽天モバイル BCP管理本部 磯邉直志本部長は説明する。2日からは各機関との連絡役となるリエゾンを石川県へ派遣し、1月17日まで1日平均340人体制で復旧へ臨んだ。

 ネットワークの被害が最も増加したのは、1月3日。移動基地局車や可搬型基地局を展開し、1月15日までには侵入が難しい地域以外のネットワークは復旧が完了し、1月29日には残る地域も復旧を終えたという。地方ではKDDIローミングエリアが残るが今後、自社エリアの拡大に合わせて災害復旧用の設備も増強していく。

 並行して、避難所における被災者への支援も実施。携帯電話の充電器のほか公衆Wi-Fi「0000JAPAN」などを提供した。磯邉氏は「最速で輪島に駆けつけたのが楽天モバイル」「楽天のおかげで救われた命がある」とSNSに投稿された被災者の声を紹介し「復旧への取り組みがこうした身に余る声につながり、モチベーションになった」と話した。

 こうした直接的な被災地への支援のほか、対象地域のユーザーの楽天モバイル利用料金の無料化措置、楽天ふるさと納税での特設ページの募金、楽天クラッチ募金、楽天市場で被災地の産品を取り扱う特集などグループ横断で支援を実施している。

仮想基地局のメリット、Starlinkも導入

 楽天モバイルでは、災害対策として他MNOと同様に、自動車に基地局設備を搭載した移動基地局車や組み立て式の可搬型基地局を用意している。搭載するアンテナの高さの関係でトラック型がもっとも広い範囲をカバーできる一方、ワンボックス車型は機動力に優れるなど、それぞれに特徴がある。

可搬型基地局。スカパーJSATに接続される

 移動基地局車は87台、可搬型基地局は176台を用意。能登半島地震では、移動基地局車40台のほか可搬型発電機48台も持ち込まれた。移動基地局車は、ボタンでアンテナの伸縮を調整できる。冬の強風の中でアンテナ高を調整する必要があるため、重宝したという。

可搬型発電機。発電を止めずに給油できるインテリジェントタンクを備える

 基地局そのものにも対策が施されている。通常、4×4 MIMOとされているが、これを2×4 MIMOに切り替える「緊急省エネモード」で消費電力を低減させられる。さらに、一般的な基地局と異なりベースバンドユニットの機能がデータセンター側にあるため、基地局にはアンテナと無線機しかなく、その分基地局側の消費電力は低い。およそ2日間基地局の機能を維持できる可搬型発電機も用意する。

 被災地の基地局が正常に稼働しているか、電力会社や気象庁、総務省などからの情報を一元管理するBCM」(ビジネスコンティニュイティマネージャー)と呼ばれるシステムも整備。従来は複数のシステムに分かれていたというが、能登半島地震で初めて運用された。

 将来的には他社が取り組む「ドローン基地局」の可能性も検討する。また、一部の山間部や離島では衛星ブロードバンド「Starlink」をバックホールとした基地局を導入している。災害復旧でも伝送路が切断した基地局で、一時的にStarlinkを用いるなどの事例があるほか今後、災害時にWi-Fiスポットとしての活用も視野に入れる。

AST SpaceMobileの衛星通信も災害対策に活用する想定がある

今後も災害対策は強化する

 磯邉氏は今災害での同社の対応を「これが初めての大規模な災害だったが、対応は他社と比較しても遜色がなかった」と振り返る。その一方で災害への備えは今後も強化していく考えだ。

楽天モバイル 磯邉氏

 南海トラフ地震の懸念が高まるなかでさらに大規模な災害が発生した場合、自社だけでは対応しきれない懸念を感じたことを磯邉氏は話す。ほかの通信事業者各社との連携がなかったことを反省点と認識を示したうえで、同様の未曾有の事態に対する危機感は他社も感じているのではと話し、今後は通信事業者間でも協力を進めたい考えを示した。

 NTTとKDDIが運用した船上基地局に、楽天モバイルも参加したい考えがあるほか、災害時にNTT東西も含め、各社の持つ設備などを融通し合う枠組みの検討が始まっているという。

 楽天モバイルでは、社長や担当役員も含めた全社横断での南海トラフ地震に備えた訓練を実施、自治体などとの共同での訓練も2023年度の実績で75件参加するなど、平時にも災害への備えを固めている。磯邉氏は「災害時にも安定的なサービスを供給する。お客様に寄り添うため今後も災害対策の強化に努める」と話した。