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自民党の「NTT法見直し」提言、その内容は
2023年12月5日 20:30
自由民主党のWebサイトで、1日に取りまとめられた「NTT法のあり方に関する提言」が公開された。甘利明衆議院議員が座長を務める「日本電信電話株式会社等に関する法律の在り方に関するプロジェクトチーム(PT)」が取りまとめたもの。
本稿では、公開された提言の内容を項目別に紹介する。
提言の概要やスケジュール
NTT法については現在、見直しに向けた議論が進められている。今回の提言では、NTT法について「『電話のあまねく提供』責務と『研究の推進及び成果の普及』責務は維持されたままであり、それを担保するさまざまな制約がNTTにのみ課されている」と紹介。
そのうえで、公平かつ公正な競争環境の担保や、グローバル競争の観点からNTT法のありかたについて検討され、今回の提言に至った。
PTが政府へ求めるスケジュールとして、NTT法についてすみやかに撤廃可能な項目については2024年の通常国会での措置を求める。それ以外の項目については、2025年の通常国会をめどに電気通信事業法の改正など、関連法令に関する必要な措置を講じ次第、NTT法の廃止を求めるとしている。
研究の推進・成果の普及に関する責務
NTT法が制定された約40年前とは異なり、情報通信技術に関する国際競争が激化するなかで、研究成果を一律に公開することはグローバル競争上の優位性の毀損などにつながるとする。
研究の推進や成果の普及の責務について、次期(2024年)の通常国会で撤廃すべきとされている。
ユニバーサルサービス拡大やラストリゾート責務
アナログ固定電話については、約6300万件(1997年)の契約数が2022年末には約1500万件にまで減少している。ニーズの変化に伴い、有線かつ音声通話のアナログ固定電話のみをユニバーサルサービスとして義務付ける意義は薄れているとする。
携帯電話や衛星通信などもユニバーサルサービスの手段となるよう、電気通信事業法を改正すべきとされている。また、NTT東西に加え、通信キャリアを提供事業者に加えることも改正の内容に含めて検討される。
サービス提供者が不在の場合のラストリゾート責務について、国が適切な事業者を指定するしくみを整え、退出規制を設けるべきとしている。
これにより、NTT法第3条の「電話のあまねく提供」責務の撤廃につながるとされている。
責務の担保措置のゆくえ
NTT法では、先述の責務を果たすための担保措置として、政府による1/3以上の株式保有義務や、外国人役員の規制などが規定されている。
提言では、先述の責務の撤廃により、こうした担保措置も不要になるとしている。
1/3以上の株式保有義務は撤廃すべきであるが、政府保有株式の売却の是非は政策的な判断に委ねられるべきとする。また、仮に株式を売却する場合でも、市場に与える影響を勘案した手法が選択されるべきとしている。
売却収入の使途として、情報通信分野の研究開発支援などが挙げられている。
外資規制のあり方についても検討を求める。主要な電気通信事業者に対象を限定した外資規制の補強のほか、NTTが外国人役員を登用できるような規制の撤廃などが提言に含まれている。
公正な競争環境
NTT法の廃止については、KDDIやソフトバンク、楽天モバイルらが、NTT東西とNTTドコモの合併につながることなどへの懸念を示している。
今回の提言では、電気通信事業法において合併・統合禁止の内容を盛り込み、NTT法における規定は撤廃すべきとされている。
NTTが保有する設備はどうなる
NTTが保有する基盤インフラの所有などについては、経済安全保障上の視点も踏まえつつ、現状と同じくNTTの資産として運営する方法、国有化して事業者へ運営を移管する方法が挙げられている。早急な検討と結論を政府に求めていくという。
- 研究推進や成果普及に関する責務の撤廃など
- 2025年の通常国会をめどに、所要の法改正などの措置を講じ次第、NTT法を廃止するための措置を講ずる旨を附則に明記
- ユニバーサルサービスの手段や提供主体の拡充、ラストリゾート責務の規定、退出規制
- 外国人役員登用の要件
- NTT東西の業務範囲の規律(ドコモとの統合禁止などを含む)
- 線路敷設基盤などの通信インフラの責任主体
- 外資規制の補強など
- 外資規制の補強など
- 電話のユニバーサルサービス提供責務の撤廃
- 政府による株式保有義務の撤廃
- 外国人役員規制の撤廃
- 外資総量規制の撤廃
- 各種認可事項の撤廃など
NTTのコメント
NTTは5日にコメントを出した。提言を踏まえ、実現に向けた法整備などの議論に積極的に協力していくとしている。
引き続き、国際競争力の強化などに努め、国民生活の利便性向上などに貢献していく考えを示している。