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NTT法めぐる会合、KDDI/ソフトバンク/楽天モバイルのトップが「今日は良かった」

 総務省は13日、通信政策特別委員会(第10回)を開催し、見直しが検討されているNTT法について、NTT(持株)、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルへのヒアリングなどを行った。会合の詳報は別途お伝えする。

 会合後、KDDIの髙橋誠代表取締役社長、ソフトバンクの宮川潤一代表取締役社長、楽天モバイルの三木谷浩史代表取締役会長が報道陣の囲み取材に応じた。

左から三木谷氏、宮川氏、髙橋氏(写真提供:楽天モバイル)

――特別委員会で論点整理案があり、それからNTT(持株)の島田社長からも発言があった。今日の率直な感想を聞きたい。

髙橋氏
 非常に良い議論ができたと思います。NTTさんは「ある程度役割を終えた」とおっしゃっていたが、たとえば地方の人が電話を使えなくなったらどうするのか。不安という意見も非常に多い。

 また、NTT法の廃止を前提としたとき、NTTさんの構造などについて再び議論をするという話が出ました。廃止を議論するのなら、まずそこから始めるべきということが再確認できたと思います。

 一番良かったのは、島田さんが「2025年にはこだわらない」とおっしゃったこと。じっくり議論していただけると感じましたし、「(NTT法)廃止にはこだわらない」という島田さんの言葉が聞けて良かったです。

髙橋氏(写真提供:楽天モバイル)

宮川氏
 一番良かったのは、島田さんが「2025年にはこだわらない」と発言したことです。また、「自民党のPTが勝手に言っただけ」と言っていただき、ちゃんと議論していただける人だなと安心しました。

 NTT法廃止について、本来は一部改正で済むはず。自民党PTがどうして廃止にこだわっているのか、疑問に思っていることをいくつか正直にぶつけました。

 NTT法のなかには、特別な資産を守って未来へ継続させるために、いろいろなルールが入っています。たとえばNTTさんの巨大なアセットは通信のためのものということなど。そういったものを全部撤廃したいのか、というような話をしました。

 今日は「慎重に議論すべきだ」と言っていただけて本当に良かった。意見をちゃんと言い合えたと思います。

宮川氏(写真提供:楽天モバイル)

三木谷氏
 お二方とまったく同意見です。「廃止、2025年にはこだわらない」という非常にポジティブなお言葉を聞けたのでよかったと思っています。

 通信は基本的人権だと思っている。NTTが持っている特別資産、そしてNTT法は、日本のあらゆる通信の基盤となる法律です。それを拙速に、とりあえず廃案だという議論がされていることに、何か別の意図があるのではないかと感じています。

 基本的には“大NTT”の復活が大きな目的なのかなと思っていますが、イノベーションというのは、世界で見てもトップ20のうちほとんどはベンチャー企業。

 日本の技術イノベーションということであれば、大NTTを復活させるのではなく、ベンチャーのエコシステムを作って国際的に競争できるようにしていくことが正論だと思っています。

三木谷氏(写真提供:楽天モバイル)

――今回の資料を見ると、資本分離に言及されている点が多い印象がある。

KDDI提出の資料より

宮川氏
 NTTさんがいろいろなことにチャレンジされることに対して、我々が止めているわけでも何でもありません。ただ、そのチャレンジに対して、国民の通信を犠牲にするなと。

 たとえば新しいチャレンジで大きな損失が出て通信料が値上げされたら、我々は何のために応援するのかわからない。

 やりたいことがおありならご自由にされればいいが、通信というものを犠牲にしてはいけないので、分離してくれと主張しました。

三木谷氏
 特別な資産がすべての通信の基盤、また生活の基盤になっていると思います。

 IOWNをはじめとして成功を祈っていますが、技術開発はやはりリスクがあります。お金がどこから出てくるのかというと接続料であり、通信料です。ですので、分けたほうが安全だと思っています。

 また、公正公平な取引について、そもそもドコモさんを100%子会社にした時点から、公正公平ではないと思っています。

髙橋氏
 基本的には同じですね。特別な資産の議論なくして(NTT法)廃止という話はない、という非常に単純な議論だと思います。

 担保措置をとればNTT法は廃止できるということですが、担保措置はすべてNTT法のなかに書いてあるんですね。ではなぜ廃止する必要があるのか。担保措置と言われているもの以外に、実は目的があるとしか思えないんですよ。

 それを議論するのなら、NTTさんの構造自体も話をしないと次のステップに進めません。その議論を一番わかりやすく表現しているのが資本分離です。

――自民党の提言をどう受け止めているのか。

宮川氏
 今日は「なぜ廃止にこだわっているのか、2025年にこだわっているのか」を聞きました。

 本当に、事業者間のいざこざではないんですよ。なぜ、国民を巻き込んだ議論ということを隠して法律を撤廃しようとしているのか。何か意図があるとしか思えない。大物議員たちが揃って押し通しに来たわけですから、「何かある」と思わないほうがおかしい。

 「NTTさんの資産は莫大だから担保に入れたらすごい資金調達能力になる」とか。それから、とある議員さんが「IOWNから半導体へ」というような話をして、急に半導体の話も出てくる。半導体の話は波がすごいんですよ。(波が)へこんだときに我々の通信が犠牲になったらどうするのか、と。

三木谷氏
 まったく同意見なんですが、ひとつ加えるなら、このプロセス自体がいびつというかおかしい。

 もともとは防衛費を拠出するためにNTT株を放出する話。それが、防衛費には充当しないがNTT法を廃止するとなった。何でかな、と思うわけです。

 国民の基盤であるインフラをちゃんとした形で担保するのがNTT法の基本じゃないですか。一部の議員だけでPTを作って押し通そうとすること自体が、今の与党のやり方なのかなと。

 その目的はどこにあるのかということはわかりませんが、大NTTを復活させれば、収益をあげて研究開発ももっとできる。これは国民の利益に反することだと思います。

 我々としては大反対で、徹底的に抵抗します。我々3社のためではなく、国民の通信のためです。

――髙橋社長から島田社長への質問もあった。

髙橋氏
 直接の質問は、NTT対我々みたいに見えてしまうので、181者の反対なども踏まえてやめておこうかなと思っていたんですけど……。

 「『2025年にはこだわらない、廃止にもこだわらない』というのは自民党が言っただけ」とおっしゃるので、何てこと言うんだろうなと思い、さすがにちょっと突っ込みたくなりました。ルール違反で失礼しました。

 でも結果的に、島田さんにご意見を言っていただけて良かったです。

――「2025年にこだわらない、廃止にこだわらない」という発言で驚いたとのことだが、今後の議論に与える影響は。3社の戦略において、今回の発言がどのような変化点となるのか。

髙橋氏
 戦略というより、我々はこういう議論をするのであれば、しっかり公開議論をする必要があると考えます。どんな意図があって主張しているのか、議論に時間をかけるべきだと思っている。

 その観点では、NTTさんにも「じっくり議論しよう」と言っていただいたし、廃止前提ではないということでいろいろなチョイスがあると思えたので、非常に良い成果だったと思います。

宮川氏
 NTTさんがちょっと困ったというところから始まったわけです。「ちょっと困った」って言われた当事者の方が、「別に2025年にはこだわらない」「廃止でなくてもいい」と言われたのであれば、落としどころは十分出てきたと思います。

 戦略というと我々が戦っているように見えるので、そこにコメントはしたくありませんが……。再度立ちかえって、なぜNTT法ができたのかというところも、できればきちんと国民の方々に伝えていきたいと思っています。

三木谷氏
 繰り返しになりますが、日本の通信はすべて、特別な資産の上に成り立っています。

 議論もしないで強引に通そうとなっていたところを、そこ(2025年や廃止)にはこだわらないという発言が出た点については、かなり良かったと思います。