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NTT島田社長「NTT法廃止、着地点が見出せないから政府がある」
2023年12月13日 16:44
総務省は13日、通信政策特別委員会(第10回)を開催し、見直しが検討されているNTT法について、NTT(持株)、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルへのヒアリングなどを行った。会合の詳報は別途お伝えする。
会合後、NTT(持株)の島田明代表取締役社長が報道陣の囲み取材に応じた。
――NTT法の廃止について、「2025年目処(の廃止)は自民PTの提言に書いてあるだけ。NTTは言っていない」というような発言があったが。実際どうなのか。
島田氏
(2025年目処の廃止は)望んでいないわけではないです。
自由民主党の政務調査会で、2025年度に廃止を目指す提言があることに関しては、私どもとしてはありがたく思っています。
ただ、私が申し上げたのは、「(廃止を)私どもが申し上げたわけではない」という事実。私どもが言っているからそういう提言になったわけではなく、事実関係だけ申し上げた次第です。
――2025年を目処に廃止したいのか、そこにあまりこだわりを持っていないのか。
島田氏
早ければ早いほうがいいので、2024年でも、見直されるんだったら見直してもらった方がありがたいと思っています。ただ、当然、一定の手続きには時間がかかると思っています。
私どもが従来から主張していたように、NTT法における固定音声サービスやユニバーサルサービスの提供責務は、電気通信事業法に移していく。そして、ブロードバンドサービスのユニバーサルサービスという、国民の皆さんがより快適で便利に使えるサービスにすることが重要だと申し上げています。ですので、そういう措置が図られていくことが重要です。
経済安全保障の関係から、いわゆる外資規制みたいな問題もクリアしていかなければならない。
公正競争条件は従来と同じように電気通信事業法で規定されているので、それをしっかり守っていきたいと思っています。
そうした措置がしっかりできて、電話のユニバーサルサービスの提供と、研究開発の推進・普及責務がなくなってしまえば、(NTT法は)なくなっても十分でしょうという言い方をしている。手続きを踏まえた上で廃止につながるのではという認識です。
――自民党のPTの提言には担保措置も含めてさまざまな記載があるが、全体の評価は。
島田氏
全体の評価としては、すべてに満足しているわけではありません。
たとえばNTT東西のあり方については、国有化なども含めて、少し議論して結論を出すべきとされている。
私どもはたとえば光ファイバーの整備は、だいたい2003年くらいから準備して、投資家サイドからは「こんな過度な投資をしていっていいのか」ということも言われながら、民間会社の判断として光ファイバーの投資をして現在に至っている。
日本はそのなかで、電力会社さんの子会社の通信事業者さんと設備競争して、99.7%の普及水準まで持ってきたわけです。
ですから光大国まで持ち上げてきたのは、実際には私どもと電力会社の子会社さんとの競争で、言ってみれば先を読んで投資をしっかりやってきたから今に至っている。
これから次の日本の通信インフラを考えたときに、高度化していかなければいけない。
たとえば私どもで申し上げているオールフォトニクスネットワークみたいなもので日本のインフラを構成していく必要があると考えると、NTT東西がこれからもそういう義務感を持って高度化を図っていくことが、たぶん、日本の国民の皆さまにとってベターなものになるだろうと考えています。
――今日のヒアリングで、通信事業者3社から(NTT法廃止の)反対論が強く出張された。溝が深まっている印象だが、着地点は。
島田氏
着地点はなかなか見出せないと思います。だからこそ政府があり、いわゆる政党があるわけで。政治的な議論を踏まえて、最終的に何が国民にとってベストかということを、中立的な立場で調整していただくのも政府ならびに政党の役目だと思います。
事業者自体は、日々競争しています。もちろんすべての面で戦っているわけではなくて、業界団体として協力するところは協力していますし、社会貢献のようなことも共同でやっています。
ですが主義や主張はそれぞれありますので、それぞれ主張した上で、政府が最終的には決めていただくのがいいかなと思っています。
――“特別な資産”としてのNTT東西の設備について、自民党では国有化を含めて検討するということになっている。今日も事業者からそのような主張があったが。
島田氏
仮に国有化したとして、どういうモチベーションでその事業をさらに高度化していくのか。どういうテクノロジーを用いて高度化していくのか。こうしたことについて、見通しが本当に立つのかどうか。
日本の情報インフラをそういう形の組織に委ねて、本当にみんなで幸せになれるのか、ということ。
先ほど申し上げたように、光ネットワークへの転換は、我々と通信事業者で100%近くまで持ってきました。我々にはそこまでやってきたという自負がありますし、21世紀後半に向かって新たなインフラを作り上げていくための研究開発もやっています。NTTが引き続き高度化を支えていくことが、日本にとって重要だと思っています。
――3社からのもうひとつの主張として、NTTデータとNTTドコモを完全分離すべきという意見があった。
島田氏
NTTデータとNTTドコモを一緒にするかしないかというのは、他事業者に言われたくない。そこは自由にやらせてもらいたい。もちろん今のところ、するつもりは全然ありませんが。
これから先、テクノロジーや事業のスコープはいろいろ変化してきます。今から20年~30年経ったとき、それぞれの会社は同じような事業をやっていないかもしれませんので。
――自民党PTの提言のなかから、総務省の議論に反映してほしいような点はあるのか。
島田氏
せっかく与党が提言していただいたので、私は尊重したいと思っています。
先に申し上げたNTT東西の扱いなどについては、最終的な結論を出されていないので、そこは出してほしかったと思いますが、全体的な評価としては満足しています。
ありがたい提言をいただいたと思います。
――ユニバーサルサービスがなくなるのではといった不安など、NTT法廃止によるメリットを国民が感じられる状況にない。競合3社も、裏に政治的な意図があるのではと恐れている。そういった部分の払拭に向けて何が必要か。
島田氏
皆さんに報道してもらうことだと思っています。
この議論はややマニアックな議論なんですよね。ですから、丁寧に国民の皆さんに説明していく必要があると思います。
ですが、現状のところ、何か決まったものがあるわけではなく、まさに議論をしている最中。議論の最中で結論のようなものを申し上げるのも大変恐縮で、今の段階で「こうあるべきだ」と言っても一事業者の意見になってしまう。
ある程度の整理がついた段階で、もしいろいろな疑念があるのなら、それを払拭するような活動に取り組みたいと思っています。
マイナスのほうに持っていく議論をしているわけじゃなくて、日本のインフラとして、ブロードバンドをちゃんとユニバーサルサービスにしていく議論の中身を詰めている。ぜひそこはご理解いただきたいと思います。
――3社がオープンな場の議論を求めているが。
島田氏
今日の審議会などはそういう場だと思っています。
――3者は電気通信事業法に抜け道があるのではとしているが。
島田氏
抜け道があるんだったらいくらでも見直せばいいと思っています。
――担保措置は強化されても構わない、と。
島田氏
項目によって議論の方向性はいろいろあるので、今のご指摘について、現段階で良し悪しは申し上げられません。ですが、法律は、世の中の国民のためにプラスになる方向に改善していくべきもの。
当然、今の議論も、プラス方向に持っていくためにやっているわけです。
40年前にできたNTT法は、法律の骨格自体が、40年前の価値観や仕組みで成り立っている。ですから、今の時代にあった法律の建てつけにして、国民生活がもっと豊かになるようなものにすることが今回の議論の重要なポイントだと思っています。
いろいろな細かい議論はあると思いますが、それをしっかりしていって、プラス方向になるような整理ができればいいなと思います。
【お詫びと訂正 2023/12/13 20:20】
記事初出時、自由民主党内の組織名に誤りがありました。お詫びして修正いたします。