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プラチナバンド再割り当て、楽天モバイルや各キャリアの意見は? 総務省の会合

 総務省は26日、「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース(第12回)」を開催した。

 同会合では、「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯について、携帯電話各社による意見交換などが実施された。本稿では、総務省が公開した資料に基づき、楽天モバイルの意見を中心に紹介する。

これまでの経緯

 これまで楽天モバイルは、安定した通信サービスを提供するために、屋内や地下などでもつながりやすいプラチナバンドが(同社に)必要だと主張してきた。

 プラチナバンドは現在、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに割り当てられている。楽天モバイルは、モバイル事業では後発の同社が携帯3社と公平に競争するには、プラチナバンドの存在が極めて重要だとしていた。

 そこで楽天モバイルはプラチナバンドの再割り当てを求めているが、再割り当てに要する期間や、再割り当てに伴う費用を誰が負担するのかなど、ドコモやKDDI、ソフトバンクの3社と楽天モバイルとの間で、主張の内容に食い違いが生じていた。

 たとえば再割り当てに要する期間について、携帯3社は、「レピーター」や「フィルター」といった装置の交換が必要であることを根拠に、「5年~10年ほど」と主張。一方、楽天モバイルは「レピーターの交換には、3社が見積もるほどの時間はかからない」として、1年以内の利用開始を主張している。

 また、携帯3社はそれぞれ、先述の装置交換などに要する費用を数百億円~1000億円単位で見積もっている。こうした費用について、携帯3社は、新免許人となる楽天モバイルが負担すべきとしている。一方、楽天モバイルは、既存免許人である携帯3社による負担を主張している。

再割り当て後のプラチナバンドの割合について

 楽天モバイルが主張している再割り当ての方法は、携帯3社が、それぞれ5MHz×2を楽天モバイルに割譲するというもの。再割り当て後は、既存免許人の携帯3社が20MHz×2、新免許人の楽天モバイルが15MHz×2というかたちでプラチナバンドを保有することになる。

 15MHz幅で計算した場合、他社のプラチナバンドの割合が約17%(40MHz幅/約230MHz幅)であることに対し、楽天モバイルのプラチナバンドの割合は約43%(30MHz幅/70MHz幅)。これを踏まえ、「各社が保有している周波数幅に対するプラチナバンドの割合は、既存事業者の場合、約20%程度。楽天モバイルも約20%程度のプラチナバンドがあれば良いのではないか」という質問があった。

 この質問に対し、楽天モバイルは、「プラチナバンドは、携帯電話事業において重要な帯域であり、既存免許人3社がすでに多数の基地局などを構築済みであることから、頻繁な再割り当ては望ましくない。したがって、新規免許人に割り当てる帯域幅は、長期的視野でMNO4社間におけるイコールフッティング(競争条件などの同一化)を確保することで、長期的に公正な競争環境を実現できるよう、検討を進めるべき」と回答。

 また、「ドコモやKDDIは、サービス開始当初からプラチナバンドを利用しており、100%の割合ということになる。ソフトバンクも、2011年3月のプラチナバンド取得時は33%(ミッドバンド60MHz、プラチナバンド30MHz)だった。現時点の事業者間の比較のみで、必要な帯域幅を論じることは適切ではない」と主張した。

レピーターの交換について

 レピーターの交換に関して、「当初の楽天モバイルの見積もりよりも郵送交換の台数が少なく、工事交換の台数が多いことは、認めるべきではないか。現実的な工事日程としてどの程度かかるのか、再検討をお願いしたい」という質問があった。

 これに対して楽天モバイルは、「過去の会合(第10回会合)における我々の主張として、工事が必要な小電力レピーターを約数十万台(3社の合計)と見積もっていた。この数値は、2021年2月に開催されたWGで、出席者限りで開示された数値に基づいて算定したもの。第10回会合でKDDIから約19万台という提示があったため、想定より大きい数字ではあったが、第11回会合では19万台の前提で再検討した。なお、ドコモは6.7万台、ソフトバンク殿は3.1万台と提示していたが、最大数のKDDIの数値で検討した」と回答。

 楽天モバイルは、「小電力レピーターの交換工事と同様の訪問工事が必要になる我々のフェムトセル設置工事において、一日当たり620件(ピーク時)の工事を実施した実績がある。この実績を根拠に、約19万台の工事を約300日で実施できるとした」と主張。ピーク時ではなく、楽天モバイルが常に維持できる条件で算出した場合でも、633日(約1.7年)で工事できるという。

 同社は、「エリアごとに置局計画を開示し、エリアごとにレピーターの交換工事を実施すること」「仮想化技術などを活用することで、工事をスピードアップさせること」もあわせて提案している。

基地局の数について

 基地局の数に関して、「基地局数については以前明確な説明がなかったが、基地局数は他社と同程度を目指さないということか。基地局数に関する方向性の見込みがなく、人口カバー率や基地局数が開設計画期間内で既存事業者と同程度となるレベルでは、既存事業者以上の電波の有効利用が図られているとは言えないのでは」という質問があった。

 これに対し、楽天モバイルは、「基地局数についても、人口カバー率や面積カバー率と同様に、開設計画の期間内に少なくとも他社と同程度を目指すことを考えている」と回答。

 また、3Gの基地局数や人口カバー率、面積カバー率を例に出し、「ソフトバンクは人口カバー率や面積カバー率で、他社と同じかそれ以上の数値となっている。しかし、基地局数はドコモの53%に過ぎない。単純に基地局数の多寡のみで、電波の有効利用の程度が測られるものではないと考える」と主張した。

楽天モバイルの希望は

 プラチナバンドの再割り当てに関する楽天モバイルの希望について、「長期の移行期間と労力が伴うが、あくまで再割り当て制度による周波数を希望する」「再割り当てではなく、狭帯域であるが、早期に割り当て可能な周波数を希望する」「2つの選択肢の両方を希望する」という3つの選択肢のうち、どれが楽天モバイルの希望に近いかを問う質問があった。

 これに対し、楽天モバイルは、「長期の移行期間と労力が伴うが、あくまで再割り当て制度による周波数を希望する」という選択肢を、短期間で実現することを望むと回答した。

 同社は「たとえば3GPPで標準化されていない帯域である『MCA跡地』などの活用も検討してきた。しかし、当該帯域の上り(UL)は、3GPPで定義されている800MHz帯のバンド20と26に、下り(DL)は900MHz帯のバンド8に含まれていて、それぞれ別の既存グローバルバンドの一部となっている。したがって、ネットワーク機器に新規フィルターなどの開発が必要になる。ただ、仮にフィルターを開発できても、グローバルマーケットでは需要がない」とコメント。

 また、「エリアカバレッジや通信品質を確保する観点からも、15MHz×2の再割り当てを求めてきた」として、同社がこれまで主張してきた内容の早期実現を強く求めている。