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「プラチナバンドの公平な割当てを」――楽天モバイルが意見表明

 楽天モバイルは、700~900MHz帯のいわゆるプラチナバンドの公平な再割当てを訴え、総務省のワーキンググループにおいて意見書を提出した。

 18日に開催された総務省のデジタル変革時代の電波政策懇談会の移動通信システム等制度ワーキンググループにおいて、楽天モバイルは、3G用に割り当てられている周波数帯の再配分やそれに係る制度の実現を主張する意見書を提出。

 同日に実施した報道陣向けの説明で、楽天モバイルはその意義や同社の考えについて説明を行った。

ビルの影や地下など……プラチナバンドが重要

 携帯キャリアとしては後発となる楽天モバイルは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに比べて保有する周波数帯が少ない。4Gに関しては3社が複数の帯域を使用しているのに対して、楽天モバイルは1.7GHz帯のみ。

 電波は周波数が低ければ低いほど、建物など障害物による減衰の影響を受けにくい特性があるが、楽天モバイルのみがそうしたエリアのカバー率向上に役立つ700~900MHz帯のいわゆるプラチナバンドと呼ばれる周波数帯を保有していない。

 プラチナバンドをめぐっては、過去、ソフトバンク(当時はソフトバンクモバイル)が、現在の楽天モバイル同様にエリア構築に苦心して強く割当てを要望していたことがある。

 楽天モバイルでは、「デジタル変革時代の電波政策懇談会」において同社への周波数帯の割当てが少ないことを理由として新規周波数の割当ておよび既存周波数の再割当てを求めている。

 楽天モバイル 代表取締役社長の山田善久氏は、2020年1月にオープンした楽天モバイル 恵比寿店のオープニングイベントにおいて「プラチナバンドのような周波数は求めないか」というメディアの問いに対して「1.7GHzは結構つながる。周波数がなかなか出てこない。今の周波数を前提にネットワークを構築する」とコメントしていた。

 今回の楽天モバイルの主張は方向転換とも取れるが、こうした声に楽天モバイル 執行役員兼技術戦略本部長の内田信行氏は「方向転換とは思っていない。参入当時に利用できた周波数は1.7GHzか3.4GHzだった。1.7GHzのほうが低い周波数だったため選択した。将来的に空きができる周波数帯は増やしていきたいと議論していた」と語る。

 さらに「数字上のカバー率では1.7GHz帯で達成できても、数字では見えない地下やビルの影などはプラチナバンドの有無は大きな差が出る」という。

 内田氏は、現在もフェムトセルの設置などの対策は行っているとしつつも、プラチナバンドによりさらにつながりやすいネットワークの構築ができるとコメントした。

 また、当初は3G用に割り当てられた電波でも、現在では4G転用が進んでいるのではという指摘に対しては、3G用として残っている帯域幅をたとえば5MHzずつ割譲する形を案として提出している。ただし、実際にこうした形での再配分になるかは今後の議論次第とした。

電波割当てには契約数やMHzの考え方のみならず利用データ量に対するひっ迫度合いも考慮すべきと楽天モバイル

3G用周波数割当

 楽天モバイルでは、安定した通信サービスを提供するためには、屋内や地下などでもつながりやすいプラチナバンドが必要と主張。とくに、後発である同社が先行する3社と公平に競争するには、プラチナバンドの存在が極めて重要とした。

 さらに、各社が3Gサービスの終了時期を予告している現在、長期間に渡って割当てが固定化している3G周波数を再配分することは、各社への負担も少なく絶好の機会であるとした。楽天モバイルでは、各社が3Gサービス終了に踏み切るのは、運用が長期間に渡っており、コスト回収が終了しているため、また利用者も減少しておりユーザーへの影響も軽微と主張した。

 また、プラチナバンドをエリアカバー拡大に使用できるよう、事業者各社へ公平に割り当てる必要があるとも訴えた。

プラチナバンド再配分の枠組みを

 周波数再配分の枠組みととともに、プラチナバンドの再配分の具体化についても電波政策懇談会の報告書に盛り込むべきとした。その周波数帯の免許失効に合わせて、他事業者がその周波数の利用意向を申し出た場合、より優れた開設計画書を提出できれば、免許を与えるという枠組みが議論されているが、その中でも特にプラチナバンドの取扱も具体的に議論するタイミングで、このチャンスを活かしたいとも語る。

 そうした再配分のコストや期間といった具体的な検討は、競争相手である事業者間の協議で実施することは困難との見解を示し、それらを中立的に評価・検討できる枠組みの構築も求めた。

 免許失効と同時にその周波数帯を他社へ渡すことは難しく、移行期間を設けることが検討されているという。この際、次にその周波数帯を使う業者が移行期間を待てない場合、自らの負担で当初予定よりも早く利用できる「終了促進措置」のようなものも盛り込まれる予定だが、この措置は、携帯電話キャリアと防衛省や放送局などといった直接の競争関係にない2者間での協議となっていた。

 ところが今回の場合、直接のライバル関係に当たる携帯電話キャリア同氏の協議となるため、楽天モバイルは、移行に必要な予算や人員などの算定が当事者同時で適正な形で実施される見通しは低いとしている。

 よって、こうした問題を中立的な立場で仲介する第三者が必要であると訴えた。

 2022年10月には、各社が保有する周波数の再免許交付がある。楽天モバイルでは、移行期間を3年として仮定した場合、上述の終了促進措置なども駆使しつつ2023年中にもプラチナバンドを利用できれば理想的であるという。