ニュース

楽天モバイル矢澤社長、総務省会合で強くプラチナバンド求める。他社に「時間稼ぎとしか思えない」

 30日、総務省で開催された「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース(第10回)」において、プラチナバンドの再割当てをめぐり携帯電話各社による意見主張が行われた。本稿では、その中から楽天モバイルの主張だけをピックアップしてご紹介する。

3社から5MHz×2ずつの割譲を提案

 現在、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクに割り当てられているいわゆる「プラチナバンド」と呼ばれる800MHz・900MHz帯の自社への再割り当てを求める楽天モバイルは、3社に割り当てられ、3G用に用いられていた周波数帯をそれぞれ、5MHz×2ずつ割譲するという方法を提案した。

 同社は当初、既存事業者の1社から15MHz×2の割譲という案を提示していたが、利用者への影響やコスト面を考慮して今回の案を新たに提案。

 この方法であれば、700MHz帯も含めて20MHz×2の帯域はそのままとなるため、プラチナバンドの継続提供が可能で3G用の周波数帯を割譲する場合、移行の手間も減り利用者への影響も少ないと主張した。

 楽天モバイル 代表取締役社長の矢澤俊介氏は、プラチナバンドを取得した際の活用手段として「日本の再興に向けた将来ネットワーク環境構築」をかかげ5Gエリア拡大や不感地対策などを紹介した。

 一方で、タスクフォース構成員の三瓶政一 大阪大学大学院教授(工学研究科)からは「何をもって『電波の有効活用』としているのか」という疑問が投げかけられた。

 矢澤氏は「他社よりも安く携帯電話サービスを提供できる」として、他社よりも電波を有効に活用できるとしたが、同構成員は「有効利用というのは、電監審(電波監理審議会)が定義するもので説明する必要があるのではないか。そこに料金が入っているか分からないが、その観点から有効利用について説明できないのか」と反論。

 これに対して矢澤氏が「料金を安くする以上の有効活用とは何を指しているのか」と返すなど議論が紛糾する面があった。

 総務省では、電波監理審議会の評価項目について勉強会やパブリックコメントを実施している最中で、最終的には10月1日以降に検討が進められるとしている。

各社異なる「移行期間」

 楽天モバイルは、プラチナバンドを極めて重要なものと位置づけ、改正電波法で定められる、既存免許人の使用期限が切れた後、1年以内の利用開始を求めており「なぜ10年も必要なのか大きく疑問」(矢澤氏)と、5年~10年前後の期間を要すると主張する3社とは意見が対立した。

 楽天モバイルでは、再割り当てに向けて必要となる、レピーター交換については、工事を要するものは半年で完了可能、他社の電波が漏れ出ないようにする基地局のフィルター交換については、国際基準で運用される限り不要と判断。

 もし、フィルター交換が必要とされた場合には、同社が基地局の開設計画を他社に対して公開することも検討しているとした。

 さらに、3社からの割譲により費用高騰や議論の長期化が見込まれる場合は「1社もしくは2社にターゲットをロックして再割り当てを要望する」とも明言した。

移行に係る費用は既存免許人へ負担求める

 一方で、周波数帯の割譲に際して発生する費用の負担については、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が負担することが妥当とも主張。

 今回提案の割譲は、10月の改正電波法の施行後の制度を利用し、終了促進措置を適用しないもので、使用期限後の原状回復は現在の免許人が負担することが妥当であり「なぜ楽天モバイルに費用負担を求めるのか、技術的・論理的にも理解できない」と主張。

 加えて、すでに多くの利益を挙げている3社に対して「3社合計で35兆8000億円の営業利益を出している。3社の多大な努力で出された利益なのでこれについて言う立場にはないが、すでに大きな利益を挙げている。この状況で赤字の楽天モバイルに対して費用負担を求めるのは制度的にも全くおかしな話。1ミリも納得できない」ともコメントした。

 また「過去、何度か議論したが合理的ではない。時間稼ぎをしているとしか思えない発表が多々あった。到底納得できず、本当に国民のことを考えているのか甚だ疑問。より合理的なロジックに基づいたスピーディな再割当ての議論を希望する」と早急な議論の集結を求めた。