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ソフトバンク、23年第2四半期決算は増収減益――PayPay連結などで業績予想を上方修正

 ソフトバンクは、2023年3月期第2四半期決算を発表した。連結売上高は2兆8085億5500万円(前年同期比+3.1%)、営業利益は4985億5800万円(同-12.7%)、四半期利益は2716億2400万円(同22.1%)の増収減益となった。

 すべてのセグメントで増収となったものの、コンシューマー事業は「通信料金値下げの影響」「ヤフーLINE事業は、人材獲得の強化によるコスト増や販促費の増加」などによる影響があったと代表取締役社長の宮川 潤一氏は説明する。

代表取締役社長の宮川 潤一氏

コンシューマー事業

 コンシューマー事業の売上高は、前年同期比+1%増収の1兆3855億円となった一方、前述のとおり通信料値下げの影響などで13%の減益となっている。

 スマートフォンの累計契約数は、主力のソフトバンクとワイモバイル、LINEモバイルとLINEMOを併せて7%増の2832万件となった。MNPによる転入も「各キャリアに対してすべてプラスとなった」(宮川氏)としており、通期営業利益予想に対して「進捗率66%」と順調に推移しているとした。

 一方、料金の値下げによる影響は、240億円のマイナスとなった。宮川氏は、料金プラン値下げについて「マイナスは縮小傾向にあるので安心してほしい」とコメント。2023年以降に大幅に縮小していくとし、「魔の三年の終わりが見えてきた」と宮川氏は今後の見通しを示した。

PayPay連結化の影響

 PayPayについて、ソフトバンクは10月1日にPayPayを連結子会社とした。この連結化に伴う影響について、「再測定益が2948億円を計上、無形資産の償却費(PPA)が260億円を計上する予定」と宮川氏は説明。これらを含めた2022年度上期の営業利益+再測定益+PPAが7674億円となる。これは、通期予想に対し77%の進捗率となる。

 PayPayが当期目標に対し順調に進捗しているとし、2022年度の営業利益および純利益を上方修正する。

 新しい営業利益予想は、1兆円から+500億円の1兆500億円におかれた。この通期予想について、宮川氏は「第3四半期から金融セグメントを新設するため、今回から予想に含めている」とし、金融事業の営業利益予想-190億円が組み込まれる形となっている。

法人事業

 法人事業の売上高は、前年から+3%成長の3625億円となった。ソリューションが13%増加し、引き続き牽引するかたちとなった。営業利益は前年同期比4%減の713億円となっている。

 クラウドセキュリティをはじめとするソリューションの売上が11%増加し、継続的な収益基盤が拡大し続けており「今後の成長の礎となる」と宮川氏は指摘する。

ヤフー・LINE事業

 ヤフー・LINE事業は、売上高は7849億円と前年同期比+5%、営業利益は995億円と14%の減益となった。

 先述の通り、人件費や販促費の増加によるもので、成長に向けた採用を強化した結果が要因と宮川氏は説明する。

 eコマースの取扱高は前年同期比6%増の1兆4656億円となった。

金融事業を新設

 第3四半期から新設される「金融領域」について、宮川氏は「ソフトバンクの直接投資先で構成されている」としており、主にPayPay(PayPayカード含む)、SBペイメントサービス、PayPay証券の3社をまとめて金融事業としている。

PayPay/PayPayカード

 PayPayの登録ユーザー数は5121万人となり、1年間に21%増加した。今後は、PayPayとLINEとの連携を深めて拡大していくとしている。

 PayPayの決済回数は前年同期比43%増の23.8億回となり、決済取扱高(GMV)も43%増の3.5兆円、加盟店からの収入を含めた売上高は前年同期比+129%の532億円となり「着実に改善してきている」(宮川氏)とアピールした。

 PayPayのEBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)についても、-100億円まで縮小し、着実に改善してきているとしている。

 PayPayの今後の成長要素として宮川氏は、「ソフトバンクユーザーの割合が43%と、ソフトバンクのユーザーをうまく送客できた。ソフトバンクの顧客基盤を利用して、規模を拡大していく」とこれまでの取り組みを継続するとともに、PayPayカードの事業をヤフーからPayPayに移管したことをあげた。宮川氏はこの狙いについて

 宮川氏は統合の狙いを「QR決済とクレジットカード決済の併用を促進していくことで、1人あたりの取扱高を伸ばしていくことにある」と説明した。

SBペイメントサービス

 SBペイメントサービスは、オンラインECサイトやリアル店舗などにクレジットカードや電子マネー、QRコードなどの決済を一括提供する事業を行っている。

 取扱高は2桁成長が続いており、2021年度は5.3兆円まで成長を見せている。SBペイメントサービスについて宮川氏は「最初はグループ内の決済コスト削減を目的とした企業だったため、当初は通信料の決済が中心だったが、2011年から通信料金以外にも拡大し、現在は非通信領域が年率31%で急成長している」とコメントした。

 今後は、「加盟店数を増やすこと」、「1加盟店あたりの取扱高を増やすこと」で、決済取扱高の最大化を目指すとしている。

PayPay証券

 PayPay証券では、PayPayアプリと連携した資産運用サービスを実施しており、PayPayの顧客基盤を利用し、効率的に顧客送客を行ってきたとし、「投資になれたユーザーにより充実した機会の提供」をすることで、規模を拡大してきていると宮川氏は説明する。

 PayPayミニアプリとの連携は2020年4月からスタートしており、当初は「One Tap Buy」の名前で運用していたが、21年2月に商号も変更し、PayPay連携を強化した経緯がある。

 商号の変更により、PayPayからの誘導が拡大し「ポイント運用」利用者数が700万人を超えているほか、このポイント運用を入口に、PayPay口座の新規開設数が急増しているという。

 また、証券口座の獲得単価が約7800円から550円へ大幅に下げられており、若年層のユーザーが過半に獲得でき、女性の割合も多いとしている。

 今後は、金融事業とモバイルやエンタープライズ、コマースと連携することでグループシナジーを活用し、金融事業の成長を目指す。

 金融事業はPayPayの22年赤字を吸収する形となるが、宮川氏は「ソフトバンクの屋台骨を担うような事業に育てていきたい」と、金融事業の重要性をアピールした。

主な質疑

 ここからは、主な質疑をご紹介する。回答者は、宮川氏と取締役兼CFOの藤原 和彦氏

楽天モバイル「プラチナバンドを分けてほしい」

宮川氏

――楽天モバイルがプラチナバンドを3社から譲ってもらいたいとしているが、見解を教えてほしい。

宮川氏
 個人的には気持ちは非常に理解できる。

 我々も「ソフトバンクモバイル」のキャリアを始めて、6年くらいほしいほしいと言い続けてもらった過去があり、新キャリアにとって「プラチナバンド」があるなしではずいぶん戦い方が変わると意識しているので、理解はしているつもり。

 ただ、我々の使っている周波数を渡してとなると、既存ユーザーをどうするかという問題も、あわせてキャリア同士確認しあわなくてはいけないと認識している。

 ソフトバンクでは、15MHz幅×2(上り/下り)をつかっているが、既存のユーザーがすべて使っている状態。これが2/3になるということは、これまで使っていたユーザーが使えなくなるのではないかと指摘している。相当な準備期間がない限り、「明日から」というのはさすがに無理という感覚をもっている。

 ソフトバンクでは、2.1GHz帯を使っており、当時(プラチナバンドの)ライセンス付与までの6年間で、なんとか12万局で面カバーしてきた。今思うとトラフィックがこれだけ増えてきた中で、基地局数が多い方がトラフィックを捌く力があるので、当時苦労したことが、その後の無制限のサービスなど(大容量のサービス)で相当生きてきたと思っている。

 もう少し地に足をつけてゆっくり会話しながら、我々にも事情があるということご理解いただいた会話ができればいいんじゃないかなと思っている。

非常時のローミングやデュアルSIMなどへの取り組み

――非常時のローミングやデュアルSIMなどについて、宮川氏の見解を聞きたい。呼び返し機能も最初から入れていくべきではないかという意見もあるが、どのように考えているか?

宮川氏
 前向きに検討しており、やる時期も前倒ししていきたい。

 呼び返し機能について、最初からやるのがベストだが、それをやれる仕組み作りは、ちょっと時間のかかる議論だと思っている。

 発番通知は4キャリアともできる構造になっているので、発番をノートにとれば一応呼び返しもできると思う。ただ、そのシステムを作るのは相当時間がかかると思いますので、やれる方法で工夫してやれればいいと、個人的に思っているが、できるだけのことはしていきたい。

 デュアルSIMの端末についても、弊社の提供を早くしていきたい。ソフトバンク以外の3キャリア含め、デュアルSIMの提供を、できるだけ単価を抑えながらやっていきたい。

 ネットワークについては、私がCTOだったころに東日本大震災が起こり、ネットワークの障害に対するクオリティを高くするように改善した。ソフトバンクでは、音声とデータ通信、SNSやメールも分離し、少しでもつながるように工夫している。

 今後、4キャリア一緒になって技術的な理論を行い、ネットワークのクオリティを高めていきたい。

――デュアルSIMについて、KDDIの決算会見でも全社に声をかけてやっていきたいとしていたが、今現在検討状況は? 技術的に使えない端末にはどうしていくべきか。

宮川氏
 デュアルSIMについて、KDDI髙橋社長からも実はお声がけをいただいていた。

 技術的な話し合いが始まっている。どういう方向で進んでいるかは承知していないが、できるだけ早くやるように進めている。

 技術的に難しい端末については、端末を入れ替える必要がある。全ユーザーにすすめるサービスではなく、ユーザーが(通信障害時などの)保険としての取り組みとなる。

――ローミングのあり方についてどう思っているか?

宮川氏
 ローミングについて、緊急呼の通信は最低限として、当時の大規模障害の状況を考えると、メールや決済、電車、チケットが買えないなど、今までのコミュニケーションサービス以外のサービスでもご迷惑をおかけすることになる。

 できれば、電話やデータも最低限の通信レベル(200~300Kbps)、音声のVoLTEやメール、LINE、PayPayの認証が通るくらいのものを中長期的に検討していきたい。

コンシューマー事業について

――以前宮川社長が決済でLINEMOの契約数の伸び方に満足していないという話が合ったと思うが、現状その見方は変わった? なにか手を入れる必要があるか?

宮川氏
 LINEMOについて、直近少しずつユーザーの数が増えてきている。

 一方で、契約増を目的としているわけではなく、オンラインで完結するユーザーに扉を開いて「入ってきてもらえる方はどうぞ」という形でやっている。

 ワイモバイルに入られるユーザーさんは、スマートフォンデビューする「やり方がわからない」ユーザーに、リアルのショップ店員から丁寧に説明しながら、スマートフォンのユーザーを増やしていく方法をとっている。

 ソフトバンクでは、むしろリアルショップを中心に純増に努めていきたいと思っているので、LINEMOに対する大きな改善の必要性は感じていない。

――コンシューマー事業の契約数増について、どうやって純増を加速していくのか?

宮川氏
 コロナが落ち着き、ソフトバンクの営業力が発揮されたことが要因だと思っている。営業も死に物狂いでユーザーの純増数でカバーできるよう、全社を挙げて取り組んでいる。下期もがんばっていきたい。

端末販売の値引き

――端末販売の値引きについて

宮川氏
 キャリアが少しでもユーザーに入ってもらいたいと、端末を安くしていったなかで1円端末が生まれてしまった。社会現象として良くないと思っているので、今後是正させていただく。

 ただ、1社単体で行うのは難しいが、全体で下限値を設けるということには賛同しており、すぐに追従していきたい。

 1点だけ、二の足を踏んでいた部分は、5Gの普及が遅いこと。5G端末の魅力を上げることで、乗り換えを進めていきたいという考えがあったが、下限価格など政策が決まることがあれば、喜んで従っていきたい。

HAPS

――iPhone 14などで、ユーザーが衛星と直接通信することが多いが、ソフトバンクとしてどう考えている?

宮川氏
 衛星とモバイル端末が直接通信できるというのは、周波数の問題を除けば物理的に不可能ではない。

 ただ、衛星から端末への下りのリンクは立ちやすいが、上りは端末の出力に制限があるので、あまり遠い衛星と双方向通信するのは難しく、私が関わったアメリカでの通信実験も上りが難しかった経験がある。

 そこで、より距離が近いHAPSを検討してきた。地上よりも直接見通しが良い場所では、クオリティが高い通信ができたので、いずれはHAPSを商用化したい。

 一方HAPSには課題もあり、単価を地上局以下の単価構成することや、最もほしがっている発展途上国のユーザーに向けて、通信代金はより廉価な物にしたい。

 ソーラーパネルも、衛星で使われるような高価なものではなく、通常の物を使わないとコストが合わないことや、プロペラ、バッテリーの課題などがあるが、解決できない課題ではないという認識。

 HAPSは諦めたわけではない。

PayPayや金融事業

――PayPay再評価について、企業価値はどれくらいのものか?

宮川氏
 9月末で約1兆円弱。外部調査の結果をふまえたもの。

――来年のPayPay黒字化見込みの詳細について

宮川氏
 PayPay、正直言って上場を目指しており、金融事業の黒字化についてはコメントを控えるようにしている。

 黒字化は視野に入っていると考えている。

 PayPayカードについては、促進をフルアクセルで踏んでいるが、赤字ではないだろうと認識している。

藤原氏
 PayPayの上場については、いつどういう形で上場するかは決まっていない。いつでも上場できるよう内部情勢やガバナンス整備などを進めている状況。

藤原氏

――PayPay黒字化について、もう少し攻められる余地はあるか?

宮川氏
 PayPayはまだ攻めたいと個人的には思うが、PayPay社長が決めること。

 決済事業では5000万のユーザーをもっているが、7000万ユーザーなどと夢に向かっていきたいと考えているが、PayPayの本来のモデルは、2階建て3階建ての構造をもっている。加盟店利益や金融事業など、金融ポータル化を目指し、ビジネスモデルを拡大していくところが大事だと思っている。

 それに向けて、ソフトバンクの通信事業やLINEのようなSNSの事業、グループ全体で連携していく取り組みをしていく。

――PayPayやLINE、ヤフーもっと連携が必要なのでは?

宮川氏
 もっと連携しなくてはいけないと思っている。

 横串をするための会議を前任の宮内氏が行っており、その横串を太くしようとがんばっており、もっと連携を強める取り組みを実施している。

業績について

――円安や物価高の増収減益に影響はあるか?

宮川氏
 物価高に関しては、業績に影響はない。

 携帯電話料金値下げの影響が、徐々に効いてきている。

 最近の情勢では1点だけ、電気代の値上げがかなり効いている。想定していたよりも電気代の値上げが圧迫しているのが事実。

 電気通信事業者ということで、電気食べて仕事している関係でかなりの電気使用量があり、発電側にまわらないといけないんじゃないかと議論しているくらい。

 円安は少しマイナスの影響。もともと円建てでやっていたこともあるが、小さな部品などで若干の影響はある。ただ、経営に影響を与えるようなことはない。

――来期の見通しについて

宮川氏
 コンシューマー事業について、営業利益だけでいうと、来期V字回復するとは考えておらず、来期は谷になると考えている。

 その分を法人や金融、ヤフーとLINEで補っていきたい。

 今年、ADSLとPHS、3Gの巻き取りを加速させ、コスト削減を順調に進めてきた。来期のV字回復はなんとかやり遂げようと思っている。23年5月に詳しく説明したい。