インタビュー

ドコモが新料金プラン「irumo」「eximo」で目指したものとは何なのか

 NTTドコモが7月、新料金プラン「irumo」「eximo」の提供を開始した。

6月20日に発表会が開催された

 ahamoに続く新プランで、irumoは割安でありながらドコモ店頭でサポートを受けられるもの、そしてeximoは使い放題といった特徴を持つ。その一方で、その名称やサービス内容に「わかりづらい」という声も少なからず寄せられた。

 果たしてドコモは、どういった価値を新料金プランで提供しようとしているのか。NTTドコモ営業戦略部長の山本明宏氏、営業戦略部料金戦略担当の永井一将氏に聞いた。

山本氏(左)と永井氏(右)

「大変なご好評」

――サービス開始から約3週間が経ちました(取材日は7月21日)。「irumo」「eximo」を契約する動きはどうでしょうか。

山本氏
 発表後、厳しいお言葉の記事もたくさん頂戴しておりますが、お客さまには好評いただいており、想定よりも多くの契約になっています。

――irumoの場合は、たとえばOCN モバイル ONEの料金プランのここ数カ月の実績と比べてどの程度増えたのでしょうか。

山本氏
 具体的な数字は公表できないのですが、「エコノミーMVNO」を始めた際と比べると、はるかに大きな契約数になっております。「大変なご好評」と表現しても大丈夫なレベルです。

ほぼ半年で作り上げた背景

――ちなみにいつごろから検討を開始されたんでしょうか。

永井氏
 はっきりとは覚えていないのですが、かなり急ピッチで検討しましたね……たしか今年に入ったぐらいに素案ができたといったところでしょうか。

――え!? では半年ぐらいで発表にこぎつけたということですか。それは料金プランとしては、ものすごく急ピッチで形にされたのでは……。

山本氏
 そうですね。プランの具体的なところに関しては非常にタイトなスケジュールで検討を進めました。それはもう、いち早く、このプランを提供したいっていう思いもありながら、でしたね。

――7月1日開始でしたが、秋には毎年iPhoneが登場していますし、そうした時期にするといった考えは……。

山本氏
 発表会でもお話したことではあるんですが、正直に申し上げますと、低容量をお使いの方、いわゆるライトユーザーがポートアウトする件数が、どうしてもエコノミーMVNOでは補いきれていない、つまり転出のほうが多いという状況だったんです。

 その状況をなんとか食い止めたいというのは、ずっと考えていました。他社さんも頑張っておられますし、時間がかかるほど、他社さんの料金プランが変更されることもあります。お客様のニーズに応えるというのは、この意味でも、なるべくはやくと。

わかりづらいという指摘に

――新料金プランについては、名称をはじめ、わかりづらいという声が多く上がりました。個人的には、「irumo」でメールサービスがオプションになったり、家族間通話が無料じゃなくなったりするなど、ユーザー体験の違いがわかりづらく感じています。こうした指摘をどう受け止めていますか。

山本氏
 現場のスタッフは、短期間でかなり勉強してくれて、特徴などを、きちんと自身の言葉で提案できるようになってきています。その結果、店頭でお客さまから「わかりづらい」というお声をいただくことは少なくなってきています。

 とはいえ、ニュースなどで新料金プランを知った方が「irumoとeximoって何が違うんだっけ」「自分はギガライトだけど、どれにすればいいんだろう」とお客さま自身で調べるのは、まだちょっとむずかしい状態にあるのかな? と課題として感じています。

 なるべくお客様に分かりやすく特徴を伝えられるように、わかりやすくWeb上でも情報をご提供したいと思っています。

 irumoについては、料金水準をお安くしたいと我々の想いがありました。そこで機能を絞りこんで、お出しすることになり、サービスの差分が生じることになった。

 メールサービスがオプションになったり、家族内通話がなかったりするなどといった違いが、わかりづらいというご指摘の要因かなと……。

――料金を安くするために差分が生まれたというお話は、発表会の質疑応答でも話しておられましたね。となると、差分をなくす、といった方策など、すぐに対応するのは……。

山本氏
 もちろん何も変えない、ということはありませんが、今の段階では、わかりやすくご紹介できるよう、コミュニケーションの部分で改善を図りたいです。

 それでも「分かりにくい」という声を長く頂戴するような状態であれば、どこか共通にしたり、やり方を変えたりすることを考える。まずは今の状態をご理解いただけるよう努力していきます。

――実際に新料金プランを開始して、店頭ではどういった声がありますか。

山本氏
 やっぱり「安いのが嬉しい」というお声が多いです。

 家電量販店を中心に、こういってはなんですが、「やっとUQモバイルや、ワイモバイルに対抗できるようになった」というスタッフの声もあります。「光回線を売りやすくなった」といった話もありました。

どうしてirumoは「〇〇がない」状態になったのか

――では、irumoについて教えてください。まずは「サービスの違い」、差分についてです。ちょっと極端な例かもしれませんが、たとえば、eximoだけではなく、ahamoも含めて新料金プラン全体で同じようなオプションの体系にするといったアイデアも検討されたと思うのですが……。

山本氏
 確かに検討段階では、そういったことも議論しました。ただ、たとえば店頭サポートを有料化するとお客さまのニーズにお応えできないと考えました。求められているサービスなんだと。

 「irumo」で提供する割安な価格帯は、いわゆるシニア層の方に求められています。これまでは「エコノミーMVNO」で対応していましたが、どうしても「店頭でサポートしてほしい」という声がかなりあったんです。

 そうなると、ユーザーサポートをすべて有料化するとそうした声に応えづらくなる。有料化したい部分もありますが、基本的なところは無償サポートでご提供したいと考えたわけです。

――なるほど、それで「irumo」は安いけども店頭でサポートが受けられるという形にされたわけですね。一方で、メールサービスがオプションになる、家族間通話が無料ではない、といった点って、ITリテラシーが高い方であれば代替手段をすぐ思いついて乗り越えられます。シニア層向けなんだけど、ITリテラシーが高い人じゃないと乗り越えられない壁がある……とも思えます。

山本氏
 今のご指摘は、「シニア層と詳しい方の両方に応えようとした結果なのかもしれない」と感じました。

 60代以上のシニアユーザーに低容量で、とサポートありにした一方で、40代~50代のリテラシーが高い方々はWi-Fiで通信するので低容量でもいい、と効率的にお使いです。そうしたニーズもちょっと拾いたいという思いもありました。

 そういうリテラシーが高い方々は、上手に使えるという人なので、irumoは専用サイトを設けたというところもあります。

 一方、シニア層というか、ITリテラシーがそこまで高くない方は、店頭でサポートして、という声にお応えできると。

――なるほど、高リテラシー層は専用サイト、そうではない人は店頭でカバーと。

山本氏
 はい、ターゲットの特徴がちょっと違うんでですね。「ちょっと分かりづらい」というご指摘は、そういうところなのかなとも思います。

「ahamo小盛り」にならなかった理由

――では、irumoのかわりに「ahamo」で低容量、いわば「ahamo小盛り」にならなかった理由はどうでしょう。

山本氏
 「ahamo」で大容量オプションの「ahamo大盛り」を作った際には、「小盛りを作って」という声もいただいていたことは承知しています。

 ただ、ahamoは「できるだけシンプルにしたい」という考えがあるんです。

 大盛りというオプションを用意することにはなりましたが、オンライン専用ブランドとして、シンプルなプランでいきたいと。

 大盛りをつくることもまた、なかなかの苦渋の決断だったんですけれども、オンラインでシンプルな料金プランで、大容量通信を使いたいというニーズに応えたいというところがありました。

 一方で、低容量については、さきほどお伝えしたように「エコノミーMVNO」はありながらも、店頭でのサポートを求めるお声が絶えなかったわけです。

――もう一点、取材する側として「irumo」への印象として、ニーズに応えるというところよりも、(MVNOサービスのOCN モバイル ONEを展開していた)NTTレゾナントを7月に吸収合併するということをどうしても考えてしまいました。ユーザーニーズに寄り添うというよりも、事業者側の都合が優先されたのでは? という。

山本氏
 「irumo」のプランには、0.5GBというものをご用意していますが、これはOCN モバイル ONEでのニーズも満たしたいと思って、好評だったプランとして提供することにしました。

 で、3GB、6GB、9GBとご用意しているわけですが、当初、「irumo」で考えていたのは0.5GBと3GBプランだったんですね。

 しかし、そうなると3GBの次に選べるのがahamoの20GBになってしまいます。ちょっと差がありすぎるかな、でもあまり複雑になりすぎないようにしたい……ということで、10GB以下のところで考えることにしたのです。そこで6GBと9GBをご用意すれば、ある程度のニーズに対応できるのではないかと。

 その結果できあがった「irumo」の料金は、一見するとOCN モバイル ONEのプランに近いものという感じになりました。irumoの割引後の料金が、今回「OCN モバイル ONE」のものを引き継いだように見えて、そこで高くなった、と感じたお声があると思います。

――5Gが広がるなかでも「3GB」が軸になったと。

山本氏
 調査してみると、月間の通信量が3GB未満という方は、世の中の半分くらいいらっしゃるということなんです。

 スマホを使っていてもWi-Fiと光回線で通信するという方も多いので、大容量を必要としない方も確実に存在している。

 もちろん通信事業者としては、たくさんお使いいただきたいので、そうしたプランはご用意するわけですが、これまでのギガライトでニーズを満たせるかといえば、そうではなくなってきていたのです。

――なるほど、irumoで光回線とのセット割が用意されたのはそうしたことも背景にあるのですね。割引額まで同じという点には少し驚きました。

山本氏
 シンプルにわかりやすさを求めた結果です。プランによって割引額を変えるよりも、シンプルさを追求しました。「光回線を売りやすくなった」という販売現場の声は、そういう(狙い通り)ことなのかなと受け止めています。

端末販売について

――もうひとつ、「irumo」について教えてください。端末購入について、やや制限が多い状況です。9月に解消されるということですが、こうなった背景は?

永井氏
 これはもう率直に、間に合わなかったというところでして……。本当に最短を目指してきたためです。とはいえ、ご迷惑をおかけしておりますので反省してるところです。

――準備が整い次第、という状況だったと。世間にはアジャイル開発という言葉もありますが、段階的にサービス改善を進めることになるわけですね。

山本氏
 最終的には、irumoのサイトから、ドコモオンラインショップへリンクするかたちになります。この導線は一時的なものではありません。

――OCN モバイル ONEでは、さまざまなメーカーの機種が取り扱われてきました。それこそドコモで扱われていないような機種も含めてでした。

永井氏
 確かに幅広いメーカーの機種へのニーズはあるかと思いますので、NTTグループという大きなくくりで見ると、カバーできていた部分というところはあろうかと思います。

 ただ、irumoユーザー向けの端末販売は、ドコモオンラインショップに集約するかたちになり、ラインアップはそちらで扱われるものになりますね。

「eximo」がギガライト+ギガホになった理由

――続いてeximoについて教えてください。使わないときには割引するという料金体系は他社でも導入されていました。今回はギガライトとギガホを融合させたかたちで、他社が取り入れていた「使わないときに安くなる使い放題」にもなっています。

山本氏
 これまで通り、サポートも求められ、家族間通話も、メールも……という方に向けて、使わないときには「ギガライト」のように安くなりつつ、使い放題でもある、というプランになります。

 使いたいというニーズと、使わないときがあるというところ、そしてサポートなどのサービスなど、いわば両面を考えて段階制プランにしています。

――「ギガライト」で取り入れられていた、一定容量で通信量を抑える制限が欲しくなるところです。

山本氏
 そうですよね。そこは検討します。使いすぎが怖いなというお声もあろうかと思っていますので、検討していきます。

――ギガライトやギガホのユーザーからすると、今の段階では「eximo」へ切り替わるきっかけがないようにも思えています。

山本氏
 「eximo」の“ex”は、英単語の「exceed」、進化するという意味もあります。これからeximoにはもっと付加価値を付けていかねば、と思っています。

 ご指摘の通り、今の段階では既存プランと同じような価値のご提供になりますが、たとえばポイント還元をどうするか、といった点ですとか、いろんな価値を「eximo」には追加して、お選びいただきやすいプランに仕上げたいです。

――毎年秋に、新型iPhoneが登場しますが、期待していいのでしょうか……?

山本氏
 すいません、いつごろに進化させるか、というのはまだお伝えできないです。まさに今、チーム内でも議論中なのです。

 とはいえ、一気に進化させるのではなく、徐々に付加価値を追加したいです。

永井氏
 たとえば、「dカードゴールド」で支払いいただくと10%還元といったものがあります。こういうかたちで、ドコモのサービスと「eximo」を関連付けて、サービスも使っていただけるようにしたいなと。

――キャンペーンで、「早めに契約すればおトクだよ、ポイント還元があるよ」といったものですとか。

山本氏
 はい、移行を促進するようなキャンペーンはすでに実施中です。

――ギガホ/ギガライトのユーザーからすると、そういうキャンペーンや付加価値が登場するまで待っても大丈夫そうですし、たとえば、ギガホユーザーをどんどん移行させようというフェーズでもないのですね。

山本氏
 今のところは、「すぐにeximoに乗り換えて」とは考えていないのですが、今回の料金改定では、最初にお伝えしたように、ライトユーザーが転出するという課題がありました。

 その上で新しい料金プランの設計に取り組みましたので、ギガホユーザーの方々が他社さんに乗り換えられるのも困るわけですから、「eximoならではの価値」をご提供していきます。

――このほか、eximoの「かけ放題オプション」は1980円、「5分通話無料オプション」は880円で、従来の「ギガホ」よりも110円値上がりしています。

山本氏
 はい、ただ、「かけ放題」系のオプションでは、留守番電話サービスや、キャッチホンをご利用いただくと割引が適用されます。

――確かに割引額は利用額と同じで、追加料金なしで留守番電話、キャッチホンを利用できることになりますね。

山本氏
 そうなんです。110円で、2つのサービスが利用できるわけでして、私たちとしては、「あんしんパック」のような捉え方をしています。

 値上げしたという受け止めもあるのですが、音声通話の利用が多い方にとって、より快適になるということで、むしろ価値はアップしたと考えています。

――余談じみた質問ですが、irumoやahamoのように、eximoも専用サイト・アプリをご用意される考えは? eximoならではの体験を追求していくのであれば、そのあたりの世界観の統一もあり得るのかと思ったのですが……。

山本氏
 eximoについては、これまでの「my docomo」でご利用いただけます。

 ただ、ご指摘を受けて、特別なブランドとして訴求するという選択肢はあるのかもしれないなとは感じました。

――なるほど、本日はありがとうございました。