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3月24日開始「マイナ免許証」のはじめかた、メリットと注意点は?

マイナ免許証の運用が3月24日からスタート

 “マイナンバーカードと運転免許証の一体化”、いわゆるマイナ免許証の運用が3月24日から始まる。マイナンバーカードが運転免許証として利用できるようになるが、一方でどのようなメリット、デメリットがあるだろうか?

これまでの運転免許証は引き続き利用可能

 今回のマイナ免許証は、免許証の発行形態として新しく追加される形になる。既存の運転免許証は引き続き利用でき、今後の免許更新や再交付においても従来の運転免許証での発行は継続される。

 24日以降の免許更新や新規取得、再交付などの際は、「マイナ免許証」「既存の運転免許証」と「その両方(2枚持ち)」の3つの持ち方を選択できる。「マイナ免許証」のみを保有する場合は、既存の運転免許証を返納する形になる。

 なお、いずれの場合も自動車を運転する際は免許証の携帯が必要だ。たとえば、「既存の運転免許証」のみを選択したユーザーが、マイナンバーカードのみ携帯して運転すると、マイナンバーカードには運転免許証としての効力がないため、“免許証不携帯”の状態となる。

 また、Androidスマートフォンに搭載したマイナンバーカードの電子証明書は、マイナ免許証として用いることはできない。必ずいずれかの物理カードが必要になる。

「マイナ免許証」メリットとデメリット

 ここからは、それぞれの持ち方のメリットとデメリットを取り上げる。

 まずは、「マイナ免許証」のみを保有する際のメリットとデメリットだ。

「マイナ免許証」のみのメリット
  • 免許証更新時のオンライン講習
  • 更新手数料などが安くなる
  • 住所地以外での更新の迅速化
  • 所有するカードが1枚に減る
  • 氏名や住所変更の負担軽減
「マイナ免許証」のみのデメリット
  • 券面に内容が記載されない
  • 免許証の有効期限がすぐに確認できない
  • レンタカー業者が対応していないことも
  • 本人確認ツールが減る

メリット:オンライン講習で更新時間を短縮

 マイナ免許証保有者で更新時に優良運転者講習または一般運転者講習となる際、オンライン講習を選択できるようになる。オンライン講習は、マイナポータル上での連携手続きが必要で、マイナンバーカードの署名用電子証明書を提出する必要がある。

 オンライン講習は、これまで免許センターなどで対面で受けていた講習をオンラインで受けられるもので、免許センターでの所要時間短縮が期待されるほか、講習料も安くなる。一方、視力検査や写真撮影などを行う必要があるため、受講後は免許センターなどへ来場しなければならない。

 また、オンライン講習は、マイナ免許証取得以降の更新から対象となる。次回更新時にマイナ免許証に切り替えよう、というユーザーの場合は、その更新時は対面での講習となる。

メリット:メリット更新手数料などが安くなる

 マイナ免許証のみの場合、更新手数料が2100円となり運転免許証のみの手数料よりも安くなる。

メリット:住所地以外での更新の迅速化

 単身赴任など住所地以外で免許証を更新する際、優良運転者講習または一般運転者講習の場合、新しい免許証の発行を待たずに免許更新が完了する。また、更新期間がこれまで「更新期間初日~誕生日」までだったものが「更新期間初日~有効期間の末日」までに変更される。

メリット:所有するカードが1枚になる

 マイナンバーカードに免許証の機能が内包されるため、カードが1枚にまとめられる。

メリット:氏名や住所変更の負担軽減

 マイナ免許証のみ保有している際、住所や氏名などの変更は、市区町村役場での変更手続きのみで手続きが完了する。利用には、事前に免許センターなどでマイナンバーカードの署名用電子証明書を提出する必要があり、更新時などに提出しておけば利用できる。

デメリット:券面に内容が記載されない

 運転免許証の情報は、マイナンバーカードのICチップに書き込まれるため、券面には免許証の情報が記載されない。免許証の情報は、マイナポータルにログインして確認したり、「マイナ免許証読み取りアプリ」(後述)を使って確認したりできる。

デメリット:免許証の有効期限がすぐに確認できない

 券面に免許証の情報が記載されないため、免許証の有効期限がすぐに確認できなくなる。先述のように、マイナポータルやアプリ経由での確認のみになるため、有効期限切れにならないか適宜確認するようにしなければならない。

 アプリでは、免許証情報を保存して設定すると、免許証の有効期間満了前にプッシュ通知する機能を備えている。

 なお、マイナ免許証に切り替えても、従来通り更新はがきは送付される。

デメリット:レンタカー業者が対応していないことも

 レンタカーのサービスによっては、マイナ免許証に対応していない場合がある。また、対応しているサービスでも、ユーザー自身がマイナ免許証読み取りアプリを使って券面を表示させなければならないなど、制約がある場合もある。

 たとえば、日産レンタカーではカウンターの端末で情報を確認するとしており、トヨタレンタカーではユーザーのスマートフォンで確認するとしているなど、サービスによって対応がまちまちだ。また、タイムズカーレンタルのようにマイナ免許証に対応していないとしているところもある。

デメリット:本人確認ツールが減る

 写真付き身分証明書として利用しやすかった運転免許証だが、マイナ免許証のみとすると、身分証明書が1枚減ることになる。

 マイナンバーカード自体は写真付き身分証として使用できるが、クレジットカードの新規発行時などに求められる本人確認書類の条件には、運転免許証の交付を受けているユーザーは原則運転免許証での本人確認を実施する事業者もあり、今後条件などが変わる可能性がある。

デメリット:マイナンバーカード更新後に手続きが必要

 マイナンバーカードの有効期限が満了し更新した場合、マイナ免許証の情報は引き継がれないため、マイナンバーカードの更新をした後、あらためてマイナ免許証の手続きが必要となる。

「既存の運転免許証」メリットとデメリット

 続けて「既存の運転免許証」のみを保有するメリットとデメリットを解説する。

「既存の運転免許証」のみのメリット
  • 従来の使い方そのままで利用できる
  • 免許情報の確認が容易
「既存の運転免許証」のみのデメリット
  • オンライン講習ができない
  • 更新時の手数料が安くならない
  • 運転免許証の携帯が必要

メリット:従来の使い方そのままで利用できる

 これまで通りの運転免許証としての使い方ができる。マイナ免許証制度が始まっても、従来の運転免許証の制度はほとんど変わらないので、引き続き運転する際の免許として、写真付き身分証として使える。

メリット:免許情報の確認が容易

 免許情報が券面に記載されているので、レンタカーなどを利用する際でもこれまでどおり、免許証の提示で利用できる。また、有効期限も券面に記載されている。

デメリット:オンライン講習ができない

 マイナ免許証の更新時に利用できるオンライン講習は、運転免許証のみのユーザーは対象外となる。更新時は、対面での講習を受講しなければならない。

 なお、一部の道府県で実施されていたオンライン講習モデル事業は終了し、マイナ免許証でのオンライン講習が全国で利用できるようになる。

デメリット:更新時の手数料が安くならない

 免許更新時の手数料が改定され、運転免許証のみの場合は2850円となる。これに講習料が加わる形で、優良運転者講習の場合でも合計3350円かかる。

「2枚持ち」メリットとデメリット

 最後に、マイナ免許証と従来の運転免許証の両方を持つ「2枚持ち」ユーザーのメリットとデメリットを取り上げていく。

「2枚持ち」のメリット
  • オンライン講習などマイナ免許証のメリットを享受
  • どちらか携帯していればOK
「2枚持ち」のデメリット
  • 更新手数料が一番高い
  • 住所変更時は警察署での手続きが必要

メリット:オンライン講習などマイナ免許証のメリットを享受

 免許証更新時のオンライン講習や住所地以外での更新の迅速化といった、マイナ免許証のメリットを享受できる。普段は、従来の運転免許証を携帯する場合でも、更新時はオンラインで講習を受けられる。

メリット:どちらか携帯していればOK

 自動車を運転する際は、マイナ免許証(マイナンバーカード)か運転免許証のどちらかの携帯が必要となる。

 たとえば、自動車のワイヤレスキーと運転免許証を同じポーチに入れておけば、うっかり財布を忘れて自動車で買物に出かけてしまっても、免許不携帯にはならない。買物はできるのか? という話はあるが。

デメリット:更新手数料が高い

 免許更新時の手数料は、2950円と3形態の中では一番高額だ。たとえば、優良運転者講習でオンライン受講する場合、2950円+講習料200円の3150円かかる。

 もっとも、オンライン受講できない運転免許証のみ保有している場合は、優良運転者の場合2850円+講習料500円の3350円となるため、合計金額が必ずしも高くなるとは限らない。

デメリット:住所変更時は警察署での手続きが必要

 マイナ免許証のさまざまなメリットを享受できるが、引っ越した際の住所変更時などの際は、マイナンバーカードの手続きだけでなく運転免許証の手続きが必要となる。

それぞれの特徴
形態マイナ免許証のみ運転免許証のみ2枚持ち
新規取得手数料1550円2350円2450円
更新時手数料2100円2850円2950円
対面での講習
オンライン講習
優良・一般
×
免許センターでの更新手続き必要必要必要
住所変更ワンストップサービス××
住所地以外での更新迅速化など
優良・一般
×

マイナ免許証読み取りアプリ

 先述の通り、マイナ免許証では、マイナンバーカードの券面に免許情報の記載がない。免許情報を確認するためのスマートフォンアプリ「マイナ免許証読み取りアプリ」が用意されており、マイナンバーカードを読み取れるスマートフォンで読み込むことで、免許情報が確認できる。

 読み取りには、免許証または経歴証明書用の暗証番号が必要。氏名などの個人情報を表示させるには、マイナンバーカードの生年月日などを入力して認証する。

 読み取りと認証に成功すると、読み取り結果としてチップに保存されている免許情報と、免許証のイメージ画像が表示される。イメージ画像はダウンロードもできる。

マイナ免許証読み取りアプリのイメージ

 免許証の情報は、アプリに保存できる。なお、保存したマイナ免許証のなかで、有効期限まで2カ月以内となったデータがある場合、アプリの画面にテロップが表示されるほか、設定しておくことで2カ月前、4カ月前、6カ月前のタイミングでプッシュ通知を受けられる。

情報をアプリに保存しておけば、有効期限の確認やプッシュ通知を受け取れる

マイナ免許証への切り替え、発行方法

 マイナ免許証への切り替えや2枚持ちのために発行したい場合はどうすればよいだろうか?

 マイナ免許証の発行(実際はマイナンバーカードとの一体化手続きだが、ここでは便宜上発行とする)は、新しく運転免許を取得した時と、免許の更新時、更新を伴わない発行(保有状況のみ変更)の3パターンがある。

 都道府県の公安委員会によって発行されるため、手続きの方法は都道府県ごとに案内され、切り替え・発行の手続きはそれぞれの地域の案内を確認してほしい。とはいえ、警察庁の案内では「順番が異なることがある」としつつも大まかに「本人確認・マイナンバーカードの確認」「手数料納付」「写真撮影」「免許AP(アプリケーション)搭載」といった流れを紹介している。

警察庁の案内

 たとえば、東京都を所管する警視庁では、更新を伴わない発行は「運転免許試験場」でのみ対応しており、「運転免許更新センター」や指定警察署など免許更新できても対象外の場所がある。また、更新手続きのほか、更新を伴わない発行でも事前予約が必要となる。

お得な切り替え方法は「更新時に切り替える」

 すでに免許を取得しているユーザーが、マイナ免許証を発行する際は、更新時の発行、更新を伴わない発行どちらも手数料がかかる。

 更新時の手数料は、更新後の保有状況によって変わり、マイナ免許証のみの場合は2100円、免許証のみの場合は2850円、2枚所有する場合は2950円かかる。

 一方、更新を伴わない発行の場合は「保有状況変更」の手続きとなり、保有状況変更手数料がかかる。これは、変更前後の保有状況によって変更される。

 たとえば、免許証のみ持っているユーザーがマイナ免許証を発行する場合は1500円(2枚持ちも同額)かかる。

保有状況変更手数料
保有状況手数料
免許証のみ→マイナ免許証のみ1500円
免許証のみ→2枚持ち1500円
マイナ免許証のみ→免許証のみ2550円
マイナ免許証のみ→2枚持ち2550円
2枚持ち→免許証のみ無料
2枚持ち→マイナ免許証のみ無料

 ただし、保有状況のみ変更した場合も、免許証の有効期限は変わらないため「いち早くマイナ免許証を取得したい」という強い想いがなければ、更新時にあわせて手続きするのが費用面では安価に収まる。ただし、先述の通りその更新時はオンライン講習は受けられないので、免許センターなどでの受講が必要となる。

スマホへの搭載はまだ、更新時の2枚持ちがいい?

 これまでのメリット、デメリットを見てきたが、マイナ保険証のように従来の運転免許証が廃止されたりサービスが縮小したりすることはオンライン講習のモデル事業など一部を除いて発表されておらず、現状のまま利用できる。その一方、マイナ免許証では便利な点が多いもののマイナンバーカードの仕組みに依存する手続きが発生するため、これまでとは異なる手続きが必要だったり、手続きを忘れたばかりに免許不携帯になってしまったりする可能性がある。

 ただ、免許更新時のオンライン講習のメリットも捨てがたく、5年に1回ある30分の講習も惜しいと感じるユーザーも多いだろう。特に都市部では講習よりも待ち時間をストレスに感じることも多い。

 筆者としては、まずは次回更新時に2枚持ちをしてみて、マイナ免許証のメリットを享受していきたいと思う。余談だが、筆者の次回更新はあと4年半後だ。

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