石野純也の「スマホとお金」

“eximo挟み”でメイン回線をドコモ「irumo」に変更、その効果は?

 本連載で、3回に渡って取り上げてきたNTTドコモの新料金プラン「irumo」「eximo」ですが、その締めくくりとして、筆者自身もメイン回線をirumoに変更してみました。

 元々は、「5Gギガホ プレミア」で電話やデータ通信のメインにしていた回線。iPad Pro用に、主回線の容量をシェアできる「5Gデータプラス」も契約していました。この主回線を、前回紹介した“eximo挟み”でirumoに変更しています。

 その手順や前後での料金などを、実録して紹介していきます。

メイン回線として5Gギガホ プレミアを契約していたドコモの料金プランを、irumoに変更した

パケ詰まりとirumoの登場でプラン変更を決意

 最初に、筆者が6月まで契約していた主な回線と、その料金を説明しておきます。“主な”と書いたのは、話を整理するため。サブ端末やサブサブ端末に入れている回線や、予備として持っているMVNOのSIMカードの話は、すべて割愛しています。

 今回は、メイン端末として利用しているGalaxy Z Fold4に入れた2回線と、iPad Proに入れた5Gデータプラスの話に絞っています。

 まず、メイン端末のGalaxy Z Fold4ですが、以前、本誌の『みんなのケータイ』でも触れたように、5Gギガホ プレミアを中心に使いつつ、バックアップ回線としてソフトバンクの「データ通信専用3GBプラン」を契約していました。

 家族3人がドコモで、家に引いた固定回線もドコモ光のため、5Gギガホ プレミアには、計2200円の割引が適用。「dカードお支払割」は対象外だったため、料金は5115円です。

ドコモ回線をメインにしつつ、ドコモがつながりづらいときや、渡米時のみソフトバンクのデータ通信専用3GBプランに切り替えていた。Galaxyは、コントロールパネル上部に切り替えボタンがあって便利だ

 サブ回線として契約していたソフトバンクのデータ通信専用3GBプランは、5年間の割引が適用されていたため、990円です。音声通話を含むオプションやコンテンツなどを除くと、Galaxy Z Fold4用の回線には、6105円を払っていた格好です。

 2台分のGalaxy Z Fold代やd払いのキャリア決済分が乗り、毎月ウン万円払っていたので感覚が完全にマヒしていましたが(笑)、データ通信だけであれば6000円強で済んでいた格好です。

 この5Gギガホ プレミアのペア回線として5Gデータプラスを組み、1100円で容量をシェアしていました。5GデータプラスのSIMカードはiPad Proに入れていました。

 2台での金額は、7205円。使い放題と30GBの組み合わせとしては、まずまず安い金額で、料金に対しては大きな不満はありませんでした。それ以上に、いちいちデータ容量の残量を気にしなくていい使い放題の魅力の方が大きかったと言えます。

取材時のメモ取りや校正、さらには原稿執筆にと、仕事でフル活用しているiPad Pro。こちらもセルラー版で、6月までは5GデータプラスのSIMカードを入れていた

 ただ、既報のとおり、ここ最近、ドコモの回線品質が都心部などで低下しています。混雑時はもちろん、建物内でもパケ詰まりすることがしばしば。

 そのたびに、サブ回線としてデュアルSIMで入れておいたソフトバンクのデータ通信専用3GBプランに切り替えていましたが、頻度が上がってしまい、面倒だと思うようになってきました。パケ詰まりエリアを抜けたあと、回線を戻し忘れることもありました。

都心部でパケ詰まりが頻発しているドコモ回線。ドコモも対策に乗り出し、多少は緩和された一方で、やはり現時点でも速度が著しく低下する時間や場所がある。写真は4月に撮影したもの

 だったら、最初からソフトバンクでいいのでは……と考えること数カ月。とは言え、主回線をMNPで移してしまうのはなかなかハードルが高いのも事実です。自分がMNPすると、「みんなドコモ割」の回線が減り、家族の料金が高くなってしまううえに、プロバイダーはいまのところを使い続けたい事情があり、ドコモ光も動かせません。

 また、冗長化の観点では、やはりドコモ回線も持ち続けておきたいところ。都心部ではパケ詰まりに悩まされているドコモですが、やはり地方でのエリアの広さには定評があります。この条件であれば、ドコモ回線はドコモ回線として残しつつ、ソフトバンク側のデータ通信専用3GBプランを「メリハリ無制限」に置き換えた方がいいと判断しました。

 一方で、ほとんど使わない回線に5Gギガホ プレミアの料金を払い続けるのは、納得ができません。5Gギガライトに変えると、1GBまでが2365円になりますが、逆に、この容量だとサブ回線としてもあまり役に立ちません。

 そんなときに登場したのが、irumoでした。irumoであれば、0.5GBプランに落とせば550円。3GBプランでも、光回線があるため、dカードお支払割がなくても1067円で済みます。「スマホ代に、納得感を」がコンセプトのirumoでしたが、この金額は確かに納得感がありました。

「スマホ代に、納得感を」がコンセプトのirumo。ドコモが意図しているかどうかはさておき、0.5GBで550円という金額なら、回線を維持しておくための料金プランとしても納得できそうだ

5Gデータプラスをirumoに変えてMNP、7月の料金は1100円に

 そこで、次のようにGalaxy Z Fold4とiPad Proの回線を入れ替えることにしました。

 まず、iPad Proの5Gデータプラスをペア回線から切り離して音声プランに変え、ソフトバンクにMNPしたうえでメリハリ無制限を契約し、これをGalaxy Z Fold4に入れます。

 元々利用していたデータ通信専用3GBプランのSIMカードが余るので、これをiPad Pro用にしてから料金プランを「データシェアプラン」に変え、先に契約したメリハリ無制限と紐づけます。これで、iPad Pro側のデータ容量は翌月から30GBになります。

データシェアプランは翌月適用のため、現時点ではデータ通信専用3GBプランだが、変更自体はかかった状態になっている

 Galaxy Z Fold4とiPad Proのどちらも、ソフトバンク回線になり、データ容量は前者が無制限、後者は30GBになりました。

 この容量は、5Gギガホ プレミアと5Gデータプラスを使っていたときと変わりがありません。キャリアとそれに付随する料金だけが変わったというわけです。データ容量は据え置きになっているため、これまでと使い方を変える必要がないのが、この料金プラン変更のキモと言えます。

 注意したいのは、5GデータプラスのMNP。5Gデータプラスはデータ通信専用の回線になるため、そのままだとMNP予約番号を発行できません。

 そのため、転出時にはいったん音声通話対応の料金プランを変更する必要があります。変更を受け付けているのは、ショップか電話のみ。オンラインで簡単に切り替えられないため、通常の料金プラン変更よりもやや手間がかかります。

提供条件書でも、5Gデータプラスからirumoへの変更は定義されているが、オンラインでは申し込みができない。また、5Gデータプラスを残したまま主回線をirumoなどの非対応プランに変更すると、eximoに切り替わるため、注意が必要だ

 この“5Gデータプラス崩し”で変えるプランは、ギガライトが一般的でしたが、ギガライトの新規受付は6月30日で終了しています。7月1日以降は、irumoかeximoしか選択ができません。

 また、前回の連載で取り上げたように、irumoへの変更は即時適用になる一方で、変更した月に支払う料金は、5Gデータプラスのものになります。今回のケースでは、1100円で、irumoの好きな容量が使える回線になるということです。

irumoの提供条件書に記載されている注をチェック。5Gデータプラスからの変更の場合、注17、19が適用される。金額はプラン変更前の1100円で、irumoが適用された時点でデータ容量のカウントが再スタートする形だ

 口頭でのプラン選択だったため、筆者は深く考えず、0.5GBプランを選んでしまいましたが、仮に9GBを選択したとしても、料金は1100円でした。すぐにMNPするとはいえ、それまでの間はしっかり使いたいというときには、6GBなり9GBなりを選択しておいた方がいいでしょう。

 逆に、eximoを選択するのはNG。eximoへの変更は月初にさかのぼって料金計算されるため、料金が割高になります。MNPを前提にした5Gデータプラス崩しは、irumo一択と考えておいてよさそうです。

 ちなみに、ソフトバンクのメリハリ無制限を新規契約しつつ、5Gデータプラスを純粋に解約しても、上記と同じ回線構成になります。5Gデータプラスも解約はオンラインでできるため、その方が手間はかかりません。

 ただ、筆者の場合、5Gデータプラスの電話番号が比較的覚えやすい数字の並びだったため、その選択肢はありませんでした。また、MNPだと新規契約手数料を上回るキャッシュバックなり端末割引などがつくため、手間をかける価値はあると言えるでしょう。

メイン回線をeximo経由でirumoに、トータルの料金はどうなった?

 データ通信として利用する回線の切り替えが済ませつつ、残った5Gギガホ プレミアの回線も変更しました。

 料金を抑えるなら、irumoしか選択肢はありません。ただ、前回の連載で紹介したように、5Gギガホ プレミアからirumoに直接変更すると、変更月の料金が割高になってしまいます。即時適用になるのはデータ容量やオプションなどだけで、変更月は変更前の料金がかかるからです。5Gギガホ プレミアの料金でirumoの容量というのは、あまりおすすめできません。

 この場合に有効なのが、筆者命名の“eximo挟み”です。eximoは月初までさかのぼって料金、容量が再計算されるためで、1GB以下なら料金は5Gギガホ プレミアより割安。irumoに変更するのであれば、いったんeximoにしてからの方が節約になります。

 筆者のケースでは、みんなドコモ割とドコモ光セット割が適用され、料金は税抜きで1879円になっていました。税込みにすると、小数点第一を四捨五入すると2067円です。

料金プランをいったんeximoにしてから、irumoへの変更をかけた
7月ぶんの料金は以下のとおり。my docomo上では、irumoの料金が丸ごと割引され、eximoの1GB以下が適用されていることが分かる

 鋭い方なら、この金額を見て、「おや? eximoの1GBまでの料金より安いのでは……」と思われるかもしれません。実は、一部だけ料金が日割りになっているため、料金プラン変更が早ければ早いほど、irumoに変更した際の金額は割安になります。

 eximoは、ISPであるspモードがセットになった料金プラン。各段階の料金に対し、330円のspモード使用料が含まれています。この料金がirumoに変えた段階で日割りになります。

eximoの提供条件書。プラン変更時に、eximo内に含まれているspモードの料金が日割りになることが明記されている。上記のプラン変更は7月3日にかけたため、7月はわずか3日ぶんしか料金がかかっていない計算になる

 筆者の場合、7月1日に5Gギガホ プレミアからeximoに、7月3日にeximoからirumoの3GBプランに変更をかけたため、spモードの料金は3日分のみかかった状態になっています。

 その金額は、税抜き300円に3/31をかけた29円。差額である税抜きの271円に消費税をかけた298円ぶんが、eximoの料金から引かれていました。この金額なのは料金を変更した7月だけで、8月からはirumoの1067円がかかる計算です。

 なお、筆者はドコモメールでのやり取りもわずかに残っているため、これもirumoに引き継ぐことにしました。そのため、1067円以外にドコモメールオプションの330円がかかります。

 また、ドコモ回線での電話は継続して利用するため、1980円の「かけ放題オプション」もつけています。かけ放題オプションはしれっと110円値上げになっていますが、筆者は元々留守番電話サービスを330円で利用していました。新かけ放題オプションではこれが無料になるため、実質的には220円の値下げになっています。かけ放題オプション+留守番電話で言えば、2200円から1980円に下がったというわけです。

ドコモメールも継続利用することにした。330円かかるが、連絡先変更などの手間は省ける

 ドコモの新料金プランをきっかけに、大きく回線を入れ替えた筆者ですが、8月から支払う料金は、これまでよりも高くなってしまいます。ドコモ回線ぶんの支払いは5Gデータプラスがなくなり、5Gギガホ プレミアもirumoに変えて大幅に下がる一方で、ソフトバンクのメリハリ無制限やデータシェアプランが新たに加わるからです。

 しかもソフトバンク回線は家族と一緒に契約するわけではなく、固定回線もドコモ光のままなので、セット割も適用されません。回線数や契約している容量は変わっていませんが、ザックリ言えば、その割引がなくなるぶんだけ、トータルでの料金は上がっています。

料金プラン変更前と変更後。ソフトバンク側に割引が効かない関係で、トータルでの支払いは高くなっている。家族割引や固定回線のセット割を組むと、簡単にMNPしづらくなるのがよく分かる事例だ

 割引がないと、やはり大手キャリアのメインブランドは割高です。その結果として、上記のように毎月の支払額は上がってしまっています。

 筆者の場合、家族や光回線までソフトバンクには移れないという事情があり、このようになりましたが、同様の理由でMNPを躊躇する人は少なくないでしょう。セット割やサービスの利用は解約抑止に効くと言われていますが、身をもってそれを体感した格好です。

家族や光回線まで簡単には移せなかったため、メリハリ無制限は満額の支払いに

 とは言え、irumoがなかったとしたら、毎月の料金はもう1000円弱高くなっており、ドコモ回線側の容量も1GBに減っていました。その意味では、こうした組み合わせでの契約がしやすくなったと言えそうです。

 また、料金は上がってしまいましたが、少なくとも生活圏内でパケ詰まりから解放されたのは大きな収穫。QOL(Quality of Life)ならぬ、QOML(Quality of Mobile Life)が上がり、データ使用量も増えています。

 4Gからの転用周波数帯も多く含まれてはいるものの、自宅から事務所まで、ほぼほぼ4Gに落ちることなく5Gでつながるのはソフトバンクならでは。デュアルSIMの切り替え機能も、ほぼ使わなくなりました。

 キャリア同士の競争と言うと、とかく料金プランの安さだけが強調されがちですが、それはエリアの広さや回線品質がほぼ同じであることが前提。目に見えづらい回線の使いやすさには、差があります。筆者のように、料金が高くなってもなお、満足度が上がるケースもあるというわけです。メイン端末の回線入れ替えを行い、あらためてその事実を痛感しました。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya