石川温の「スマホ業界 Watch」

ドコモ新プラン「irumo」「eximo」は、もっとわかりやすい名前にできなかったのか

 NTTドコモは6月20日、新料金プラン「irumo」「eximo」を発表。7月1日から提供を開始するとした。

 リアルで開催された記者会見に出席したが、自分を筆頭に、参加している記者たちの表情がみるみると曇っていく様子がわかった。

 正直言って、今回のNTTドコモにおける料金プラン改定は「わかりにくい」の一言に尽きる。

 そもそも、料金プランに「irumo」とか「eximo」なんて、名前をつける必要があるのか。

 確かに、2020年12月に「ahamo」という名前をつけて華々しくデビューさせたのはインパクトがあり、大成功だったように思う。

 Z世代に向けたというのが一目でわかるし、しかも20GBで3000円程度というNTTドコモがこんな値付けをしてしまうのか、という驚きを持って受け入れられた。

 しかし、「ahamo」という名称は「5Gギガホプレミア」とか「5Gギガライト」に対して、つけられたからこその意外性が受けいれられたのだ。

 最近のNTTドコモは「ahamo」がヒットしたせいか、動画配信サービスを「Lemino」と名付けてみたりと、調子乗っている感が出ていた。そのあげく、料金プランを「irumo」とか「eximo」にしてくるとは、悪ふざけが過ぎて、思いっきりダダ滑りしてしまっているように見える。

 プレスリリースには、それぞれの名称に込めた思いが載っている。

 irumoとは、

 「あなたにiru(要る、必要とされる)」「あなたのそばにiru(いる)」ドコモを表現しました。また、「i(I:私)」「r(relation:関係)」「u(you:あなた)」から、私やあなたと関係する「irumo」という意味を込めました。

新料金プラン「irumo」の提供開始

 という。

 また、eximoは、

 「お客さまの期待をエクシードする(exceed:超える)スペックで、あらゆるニーズに応える」「料金、サポートなどあらゆる面において上質なcustomer experience(顧客体験)を提供する」ドコモを表現しました。

新料金プラン「eximo」の提供開始

 とのことだ。読んでいて、こちらが恥ずかしくなってくる。ドコモのCMで人気になった女優の交換日記を思い出した。

 これが百歩譲って「ブランドの名前」であれば理解できる。NTTドコモがメインブランドやサブブランドとして、これらの名前でサービスを提供するのであれば、納得だ。

 しかし、NTTドコモではirumoもeximoも頑なに「NTTドコモの料金プラン」であると強調する。いまだにahamoも「料金プランのひとつ」という位置づけだ。

 NTTドコモが、irumo、eximo、ahamoを「料金プラン」だと言い張るのは、2020年11月に当時の武田総務大臣がUQ mobileやワイモバイルが発表した値下げプランに対して「メインブランドではなければ不親切」という発言に縛られているのだろう。

 当時、NTTドコモは12月3日発表予定のahamoを「サブブランド」と準備していた。しかし、その直前に「メインブランドで値下げしろ」との武田総務大臣からのプレッシャーがあったため、記者会見場では関係者に対して「ahamoをサブブランドとは絶対に言うな」という箝口令が敷かれたほどだった。

 その流れを汲んでいるようで、irumoもeximoも「ブランド」ではなく「NTTドコモの料金プラン名」ということになっているようだ。

わかりやすさを追求すべきでは?

 正直言って「料金プラン」なのだから、「ギガホプレミア」「ギガライト」のようにシンプルでわかりやすさを追求すべきではないか。

 KDDIなんて、auでは「使い放題MAX5G/4G」「スマホミニプラン 5G/4G」、UQ mobileは「トクトクプラン」「コミコミプラン」「ミニミニプラン」という具合だ。

 ソフトバンクもメインブランドでは「メリハリ無制限」「ミニフィットプラン+」、ワイモバイルは「シンプルS/M/L」で、楽天モバイルは「最強プラン」だ。

 それぞれ「名前に込めた思い」なんて、広告代理店がパワポでプレゼンしていそうなフレーズなどなく、とにかく「わかりやすさ」のみが追求されている。

 そもそも総務省の有識者からは「料金プランがわかりにくい」と指摘されている。

 データ容量の刻み方やオプション設定など、料金プランは、どうしても取っつきにくく、中身がわかりにくくなる。だからこそ名前だけはシンプルにわかりやすくすべきだろう。

 こうしてみるとワイモバイルの「シンプルS/M/L」の徹底したわかりやすさは、素直に拍手を送りたいほどだ。

 先日、UQ mobileも料金プランを改定したが、キャリアとしても料金プランをそろそろ値上げしたいというのは理解できる。

 3年ほど前の官製値下げで、各社の収益はボロボロになった。そんななか、ここ最近は世間のあらゆるものが値上げしている。官製値下げの影響もあり、キャリアが値上げを自分から言い出せる雰囲気ではないが、とはいえ、キャリアも電気代の高騰などで、コストが上がっているのは間違いない。

 5Gスマホが普及し、データトラフィックが増えていることから、データ通信料収入は回復の兆しを見せているが、やはり、料金プランに手を入れるのが収益回復には手っ取り早いはずだ。

 ただ、従来の料金プランのたてつけで、単価を上げればすぐに「値上げ」がバレてしまう。

 従来の料金プラン設定から一新し、ガラガラポンすることで、値上げをできるだけ見つからないようにする工夫をしているものと思われる(結局、バレるけど)。

 NTTドコモとしても値上げをわかりにくくしようと大幅な料金プラン改定に踏み切ったのかも知れないが、名前からわかりにくくなってしまい、7月1日以降、ユーザーもショップも混乱してしまうのではないかと心配だ。

 料金プランの名前に「格好よさ」なんて誰も求めていない。もっとダサくてもいいから、ストレートにわかりやすく伝わる名称をつけることが「こんなドコモを待っていた」ということではないだろうか。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。