インタビュー

京セラのスマホは今後どうなる? 「TORQUE」は? 説明会での一問一答

 京セラは3日、報道陣向けの説明会を開催し、高耐久スマートフォン「DuraForce EX」の発売などを発表した。あわせて、「TORQUE」の新機種リリースも予告されている。

 5月、個人向け端末事業からの撤退方針が示され、大きな話題となった同社。今後の事業展開や「TORQUE」のゆくえはどうなるのか――今回は、執行役員 通信機器事業本部長の飯野晃氏と、通信機器事業本部 クロスインダストリーユニット 責任者の大内康史氏との一問一答の様子をお届けする。

飯野氏
大内氏

「DuraForce」と「TORQUE」

――個人向け事業の通信端末の取り組みに関して、「TORQUE」の予告があった。時期など、もう少し情報がほしい。

大内氏
 具体的なリリースの日程など、今日の時点ではお答えできません。ただ、リリースはもう間もなくお出しできると思います。KDDIさまのリリースをお待ちいただければ。

――来年に「DuraForce EX」が出る一方、「TORQUE」の新製品もある。2つのブランドで違う製品が出るが、今後も同じようなかたちで進めていくのか。

飯野氏
 「TORQUE」がある意味、特殊な存在かもしれません。

 (TORQUEの)大きな顧客基盤としては、アウトドア向けの個人ユーザーの方々がいらっしゃいました。その一方、もうひとつ大きな顧客基盤として、法人向けにも長い間売らせていただいています。

 そういう意味では今後も、メーカーとしては基本的に法人向けの端末として「TORQUE」を扱っていきます。それ(TORQUE)を個人向けにも引き続き販売されるかどうかというのは、KDDIの判断なのかなというところです。

――「DuraForce EX」は、個人が購入できるということでよいか。

大内氏
 購入は可能です。ただ、店頭には並びませんので、オンラインなどで購入いただくかたちになるかと思います。

――「DuraForce」は北米向けにずっと販売されてきた。今回、国内に導入した理由を知りたい。「TORQUE」を法人向けに据えることもできたのでは。

大内氏
 「DuraForce」シリーズは、北米向けに展開をしてきました。米国で販売しているものを逆輸入するかたちで、「DURA FORCE PRO」「DuraForce PRO 2」を法人向けの端末として国内で展開していました。

 後継機となる「DuraForce EX」は、逆輸入ではなく完全に国内向けのオリジナル端末という位置づけです。

 「TORQUE」シリーズはKDDIさまから販売されており、それ以外のキャリアさまからはこれまで展開できませんでした。今回我々がソリューションビジネスにシフトしていくなかで、法人さま専用の高耐久スマートフォンを開発し、SIMフリーとあわせて展開させていただくかたちになります。

――「DuraForce EX」がKDDIでは販売されない理由は。

大内氏
 「TORQUE」と「DuraForce」は、高耐久モデルとしては“似て非なるもの”です。

 そういう意味で、KDDIさまについては、ポートフォリオ上で「TORQUE」をしっかりビジネスとしてやっていく。

 一方、ほかのキャリアさまについては、残念ながらキャリアブランドの端末として、我々の端末を販売させていただくことができていませんでした。

 「DuraForce EX」では、ドコモさま、ソフトバンクさまと、我々の自社ビジネスというかたちで展開し、法人さまのニーズにお応えしていこうという考えです。

――「DuraForce EX」のキャリア版とSIMフリー版で、ハードウェア的に差異はあるのか。

大内氏
 対応バンドの差異はありません。基本的なアンテナ仕様は同じです。

――もうひとつMNO(楽天モバイル)があるが、販売されないのか。

大内氏
 今のところ予定はしていません。

――「DuraForce EX」の販売目標は。

大内氏
 具体的な販売目標は、この場でちょっとお答えできません。望んでいただいている方がさまざまおられるので、そういったところにしっかり届けていきたいと思います。

――「DuraForce EX」について、国内の法人向けには「TORQUE」よりも大きな売上が期待できるのか。

大内氏
 予測も含めて検討中で、お答えはちょっと控えさせていただきます。

 ただ、いずれにしても法人さま向けの基軸になる端末ですので、そこは数を含めて伸ばしていきたいと考えています。

――法人向けとして、「DuraForce EX」は機能として「TORQUE」よりも充実しているということか。

大内氏
 「TORQUE」も法人さまから評価していただいていますので、優劣があるようなものではありません。場面に応じて、「DuraForce」「TORQUE」のそれぞれの利点が出てくるのではないかなと思っています。

今後の展開について

――個人向け事業については、すでに「終息する」という意向が示されており、このあとの進め方があまり理解できていない。計画などを知りたい。

飯野氏
 個人向けについては、基本的に2025年3月までに順次、お客様と相談した上で収束させていく計画です。

 ただし我々が法人さま向けにも提供しているモデルについては継続するようなかたちになります。「TORQUE」やフィーチャーフォンは、法人のお客様が大半を占めていますので、継続するような計画です。

――キッズ向けやシニア向け端末を見ると、学習塾でのタブレットのように、BtoBtoCのようなビジネスモデルのものも多かった気がする。こういったビジネスはどうなるのか。終息するビジネスの定義を知りたい。

大内氏
 基本的には、いわゆる個人のユーザーさまに販売されているような端末については、キャリアさまを介したビジネスであっても終息する方向です。

 キャリアさまを介して法人向けで活用されているような機器について、我々は力を入れていきます。

 「シニア向けのスマホはどうなるのか」ということについては、順次相談のうえ、終息していく方向です。

――たとえば介護施設向けのビジネスとして、キャリアが「シニア向けスマートフォンが欲しい」と言えば、やるという理解でよいのか。

大内氏
 ビジネスモデルを確認させていただきながら、になります。先ほどのタブレットなど、近いかたちで法人向けのビジネスができるのであれば、考えられると思います。

飯野氏が語る「個人向け端末への意気込み」

 会見後、飯野氏にあらためて個人向け端末への意気込みなどを聞いた。

――個人向け端末事業の終息は5月に大きな話題となった。

飯野氏
 「個人向け端末事業をやめたのであれば、もう事業をたたむということでは」というように(世間では)理解されていたのかなと思いますが、これは我々の意図とは異なります。

 我々はやはりグループですから、事業を見極めて整理し、やるべきところに注力する。戦略のメリハリをつけたというところが、今日の発表になります。

――個人向けでは、サポートなどで法人向けとは違う手間もかかると思うが。

飯野氏
 今までやってきたものに対するメンテナンスやサービスについては、やはり責任があるので、それはやっていきます。

 法人向けをやりながらであっても、コストがかかっても、責任は果たしていく考えです。

――個人の人たちに向けたメッセージは。

飯野氏
 「TORQUE」について、次の世代をやるからには、アウトドアユーザーには喜んでいただけるよう全力でやっています。

 決して手抜きをしているわけではなく、今まで以上に責任感を持ってやります。「TORQUE」は、社内の中ではメンタルを切り分けてやっています。

――ありがとうございました。