石野純也の「スマホとお金」

ドコモの新料金プラン「eximo」徹底解説! 従来プランとの違いは?

 ドコモ自身が送り出す低価格な料金プランとして注目を集めた「irumo(イルモ)」ですが、7月1日に改定されるのは、それだけではありません。これまでドコモの主力とも言える料金プランだった「ギガホ」「ギガライト」も改定され、「eximo(エクシモ)」に一本化されます。irumoやahamoが存在するにも関わらず、eximo発表時に「ワンプラン」をうたっていたのは、ドコモの本流だった料金プランの後継という意味合いがありそうです。

ギガホの後継的な料金プランのeximo。ギガライトのような段階制を採用しているのも特徴だ

 その中身を見ていくと、ギガライトの段階制と、ギガホの使い放題をミックスしたような料金プランであることが分かります。一方で、特にギガライトを契約していたユーザーは、何も対策せず、そのままeximoに移ると料金が上がってしまうおそれもあります。ドコモにとってはARPUが上がる格好ですが、支出を抑えたいユーザーは、現状維持やirumoを検討してみてもいいでしょう。その詳細を以下で解説していきます。

フルサポートの料金プランで、0GBから無制限まで料金は3段階に変動

 eximoは、フルサポートの料金プランという位置づけで、irumoからはオプションとして省かれたメールサービスも料金内に含まれています。また、一部のサポートは有料になるものの、irumoより有料の範囲は狭く、大部分を無料で受けることができます。その意味では、ギガライトやギガホといった従来の料金プランを受け継いでいると言ってもいいでしょう。「いつもの料金プラン」と言い換えることもできます。

irumoで有料になるサポートも、多くが無料。ドコモショップで手厚くサポートが受けられる点は、従来の料金プランと同じだ

 料金自体は、データ容量が無制限だった「5Gギガホ プレミア」と、小容量からの段階制だった「5Gギガライト」を合体させたような仕組みです。具体的には、1GB、3GBを境に料金が3段階に変動し、3GBを超えると以降は無制限になります。元々、5Gギガホ プレミアには、3GBを下回った際に1650円の割引を受けられる仕組みが備わっていましたが、これを拡張したと捉えることもできます。

 金額は0GBから1GBまでが4565円、1GB超3GB以下が3278円、3GB以降が無制限で7315円です。ただし、これはいわゆる“素の料金”。eximoも、従来のドコモの料金プランと同様、割引が前提になっているため、家族で契約したり、光回線とセットにしたりすることで、料金は下がります。

 適用できる割引は、3回線以上の「みんなドコモ割」と、「ドコモ光セット割/home 5G セット割」の2つが大きく、それぞれ1100円、計2200円安くなります。また、金額はわずかで手数料のようなものですが、187円割引の「dカードお支払割」にも対応しています。3つの割引すべてを適用した場合の金額は、1GBまでが2178円、1GB超3GB以下が3278円、3GB以降が4928円まで下がります。

割引適用前の料金は、4565円から。3GBを超えると無制限になり、最大で7315円かかる

 ちなみに、みんなドコモ割で家族としてカウントされる回線は、eximoを契約している必要はありません。割引はありませんが、irumoやahamoを契約しているユーザーも、1回線として数えられます。3人家族の場合、自分以外がahamoやirumoを契約していてもOK。このケースだと割り引かれるのは自分のみになりますが、1100円安くなるのは大きいと言えるでしょう。サブブランド的なirumoやahamoですが、この点がドコモ自身の料金プランであるゆえんでもあります。

3つの料金プランは、いずれもみんなドコモ割で家族としてカウントされる。ただし、割引があるのはeximoのみだ

ギガホユーザーは移行しても大差なし、留守番電話使いにはうれしい割引も

 では、現状、ギガホやギガライトを契約しているユーザーは、素直にeximoに移るべきでしょうか。まず、5Gギガホ プレミアなどのいわゆるギガホを使っているユーザーは、eximoに変えても、あまり金額は変わらないと思います。移っても移らなくてもいいと言えるでしょう。元々ギガホユーザーはドコモにとってのお得意様でもあるため、この層を無理に移行させようとは考えていないことが分かります。

料金体系は5Gギガホ プレミアに近い。無制限で使う際の金額は同じだ

 3GB以上のデータ通信をする場合、5Gギガホ プレミアは7315円。対するeximoも7315円で金額は同じ。適用される割引も同じため、もっとも安いケースでは、4928円まで下がります。また、1GB超3GB以下の料金も同じです。唯一メリットになるのが、1GB以下で収まる月がある場合でしょう。5Gギガホ プレミアでは3GB以下の料金よりは下がりませんが、eximoであれば、最低で2178円になるからです。

 たとえば、海外出張が多く、1カ月丸々日本を離れることがある人や、複数回線を使い分けてドコモをほとんど使わない月がある人などは、5Gギガホ プレミアよりも、eximoの方が使い勝手はいいでしょう。料金プラン変更をせずとも、データ使用量に応じた料金を払えばいいのが、段階制の利点。一言で言えば、データ使用量の変動が大きい人は、積極的にeximoに移る動機があるということです。

ステップ数は3つに減っているが、ギガライトと同じ段階制を取り入れているため、データ容量が少ない月は料金を安く抑えられる

 また、細かい点では、eximoの「かけ放題オプション」は1980円、「5分通話無料オプション」は880円で、5Gギガホ プレミアにつけられたそれらよりも、それぞれ110円ずつ高くなっています。一方で、eximoには、新たに「音声オプション定額料割引」が設けられ、かけ放題オプションや5分通話無料オプションを契約し、かつ留守番電話サービスやキャッチホンを利用している場合、それぞれ330円、220円の割引を受けられます。

音声オプションはそれぞれ110円高くなるが、留守番電話やキャッチホンが事実上、ここに含まれるようになる

 これまでは、かけ放題オプションを契約していても、別途留守番電話やキャッチホンの料金を払う必要がありました。「転送電話サービス」と「メロディコール」をセットにすると、4つまとめて440円になる「オプションパック割引」も用意されていましたが、割引額はそれよりも大きくなります。元々音声通話オプションを使い、かつこれらのサービスを使っていた人にとっては、440円程度ですが、事実上の値下げになります。

現行のオプション。留守番電話サービスは330円、キャッチホンは220円だが、ここに110円のメロディコールと無料の転送電話サービスを追加すると、セット割が適用され、料金は440円まで下がる

 音声通話オプションを契約しつつ、留守番電話サービスやキャッチホンを契約していなかった人にとっては値上げになりますが、音声オプションまでフルに使っている場合は、eximoに乗り換えた方がいいでしょう。細かな違いではありますが、料金を下げられるチャンスと言えそうです。

ギガライトユーザーはそのままステイかirumoへの変更がオススメ

 一方で、ギガライトからの移行には注意が必要になります。同じ段階制を採用しているeximoですが、ギガライトより、同容量で高くなるケースがあるからです。たとえば、1GB以下の場合の料金は、割引適用後だと同額ですが、素の料金に関してはギガライトよりeximoの方が高くなっています。これは、eximoの1GB以下に、ドコモ光セット割/home 5G セット割が効くようになったためです。

ギガライトの料金体系。eximoが同額なのは、割引をすべて適用しつつ、1GB以下に収まったときだけ。それ以外は、基本的に値上げになる

 ギガライトでは、1GB以下の最低料金だったときに限って、割引がみんなドコモ割のみとdカードお支払割のみになっていました。つまり、ドコモ光やhome 5Gを合わせて契約していないと、ギガライトからeximoへのプラン変更は1100円の値上げになってしまうということです。かと言ってirumoの3GBプランに移っても、ドコモ光セット割がなければ、金額はほぼ変わりません。3GBにデータ容量は増えますが、メールサービスをつけるとirumoの方が割高になります。

3GBで880円とキャッチ―な安さのirumoだが、ドコモ光やhome 5Gがないとやや割高になる。割引なしでメールサービスをつけると、ギガライトの1GB以下よりも料金は上がるため、一部のユーザーにとっては値上げになることも

 また、1GB超3GB以下の料金は、ギガライトが2728円から4565円の間で収まるのに対し、eximoだと最安でも3278円、割引適用前だと5665円まで料金が上がります。ギガライトでステップ2に該当していた人は、irumoに移るか、ギガライトをそのまま使い続けた方が安くなる計算が成り立ちます。

1GBから3GBのときにかかる料金。irumoが安い一方で、eximoよりはギガライトの方が安い

 eximoの場合、3GBを超えると一気に無制限まで上がってしまい、ギガライトのように3GB超5GB以下や5GB超7GB以下の料金が設定されていません。3GBを超えたら料金が上限に達してしまうため、やはり低容量の人には、あまり向かないプランと言えるでしょう。ドコモ視点で言えば、ギガライトユーザーがどう移っても、あまりARPU(1ユーザーあたりの平均収入)が下がらない、むしろARPUが上がることもあるように設計されているというわけです。

 さらにeximoでは、ギガライトにあった「ギガプラン上限設定オプション」がなくなっています。上限を設定することで、ギガライトを1GBなり3GBプランなりとして利用できましたが、eximoでは自動的に料金が上がっていきます。上限があるため、料金が青天井に高くなってしまう心配はありませんが、うっかり使いすぎると、料金は想定よりも高くなってしまいます。こうした点を踏まえても、eximoは低容量のユーザーにはあまりおすすめできません。

ギガプラン上限設定オプションがなくなってしまうため、eximoだとデータ使用量が想定を上回ってしまうこともありそうだ

 一方で、ドコモ光かhome 5Gとdカードさえあれば、irumoの3GBプランは880円まで料金が下がります。ここにメールサービスをつけても、料金は1210円。同じ容量をギガライトで使おうとすると、割引適用後でも2728円かかっていたため、料金は半額以下になります。ドコモ光セット割は、三親等以内であれば離れて暮らす家族にも適用されるため、自宅で契約していなくてもOK。ギガライトユーザーは、親族にドコモ光やhome 5Gの契約者がいないかをあらかじめ確認して、いた場合はirumoに移るのが正解と言えそうです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya