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サービスも徐々に見え始めたドコモの5G、最新動向を紹介するイベント開催
横須賀で「ドコモR&Dオープンハウス」
2016年11月16日 23:51
NTTドコモは、2020年までに商用化を目指し開発している第5世代移動通信方式(5G)などについて、最新の動向をデモを交えて展示・紹介するイベント「ドコモR&Dオープンハウス」を11月17日、18日に開催する。会場は神奈川県横須賀市のNTTドコモR&Dセンタ内。16日には報道関係者向けに公開され、担当者から解説も行われた。
5Gとは、10Gbps以上の超高速通信や、通信容量(効率)の拡大、IoTなど大量接続にも対応することなどが特徴の、次世代の移動通信方式。現在は国際標準化が進められている最中。「ドコモR&Dオープンハウス」は毎年この時期に開催されており、5Gに関する技術やデモ、開発の進捗などをまとめて確認できる機会になっている。
ドコモは国内外の主要なネットワーク関連のベンダー(メーカー)と提携し、これまでにもさまざまな開発を行っており、2015年に開催された同イベントから開発や実験の内容が大きく変更されているわけではないが、コンセプトやイメージを展示するのみだった技術が、実際に電波を発信するようなデモに進化していたり、すでにデモを行っていた技術は、公道や商業施設といったフィールド実験に場を移していたりするなど、いずれも順調に開発が進んでいる様子を確認できる。
一方で、ドコモが16日までに発表しているように、東武鉄道(※関連記事)に加えて、綜合警備保障(ALSOK)、ジャパンディスプレイ(JDI)、凸版印刷ともそれぞれ実験などで連携していく予定。連携イメージや共同開発の模様は「ドコモR&Dオープンハウス」でも展示されている。
5Gによるサービス創出を念頭にこれらのパートナー企業との連携を拡大し、「5Gトライアルサイト」として一般ユーザーも体験できるようにしていく方針になっている。5Gを体験できる実験エリアは、今後東京スカイツリータウンや浅草エリアのほか、お台場にも構築される予定で、2017年5月以降に開始予定。ここでは4.5GHz帯と28GHz帯が利用される予定で、5Gの高速・低遅延を実際に体験できるとしている。
次世代の移動通信方式の開発において、商用化前から提供サービスのイメージにまで踏み込んで連携していくのは、これまでにない動きとなっている。かねてより、5Gの商用化前からユースケースやエコシステムの確立に取り組んでいくとされていたが、今回のイベントでは、具体的な5Gの便利な使い方、5Gだから実現できる使い方といったものの一端が示されている。
サービス展示、自動運転車両から4K映像2本を無線で伝送
「ドコモR&Dオープンハウス」では、今回大きく取り上げられた上記のような「サービス展示」のひとつとして、ディー・エヌ・エー(DeNA)と共同で進めている自動運転車両「ロボットシャトル」の遠隔監視システムに、5Gを活用する例が紹介されている。
会場には、敷地内の道路を閉鎖した巡回コースが用意され、5Gの基地局と合わせて運用、車両の前後に設置された4Kカメラの映像を5Gでリアルタイムに送信し、遠隔で監視する様子を確認できる。なお、「ロボットシャトル」は5Gの商用化よりも前に実用化を目指しており、今回の展示は5Gの活用例という位置づけ。
3D VR映像もリアルタイムに無線で伝送可能
ドコモとクレッセントによる展示では、5Gの高速な通信速度を活かしたデモが展示されている。グリーンバックステージに入った人物を16台の専用カメラで捉え、瞬時に立体CG化(データ化)し、5Gでリアルタイムにデータを送信するというもので、遠隔地でディスプレイで見たり、VRヘッドマウントディスプレイでその場にいるかのように見たりできる。ディスプレイに表示されるのは、ただ人を撮影した映像ではなくCGデータになるため、ディスプレイ上に表示した別のCGオブジェクトと衝突判定を持たせるといったことも可能。主に、スポーツやエンターテイメントで、新たな楽しみ方ができるという。
ノキア製の、立体映像を360度で撮影できる3D VRカメラ「OZO」も展示され、「OZO」で捉えた3D VR映像のデータを5Gで送信し、遠隔地でリアルタイムに確認できるようになっている。「OZO」は8台のカメラと8個のマイクを搭載しており、合計で4K解像度の映像を30fpsで撮影できる。「OZO」の価格は約600万円で、プロによる映像制作の現場で利用が始まっている。
反射型や高精細パネルをJDIが展示
ジャパンディスプレイは次世代のディスプレイを展示し、5Gの通信技術を活用した新たなディスプレイの利用方法を提案している。
屋外のデジタルサイネージなどを想定したのは、32インチで、バックライト不要の反射型としたフルHDの液晶ディスプレイ。超低消費電力での駆動を実現し、バス停といった屋外の施設での利用も見込む。
また、インセルパネルでタッチイメージデータを高精細化し、指紋データなども取得できるというディスプレイも展示された。ディスプレイは8インチで4K、センサーピッチは1.2mmとなり、センサー面積は通常の10倍以上の高精細化を実現。ディスプレイが入力デバイスとしても利用できることと、5Gを組み合わせることで、高い付加価値を提供できるという。1.2mmピッチのディスプレイは、2020年までに量産化を目指している。
放送局などに向けたものでは、17.3インチで8K、510ppiの液晶ディスプレイが展示されている。120Hz駆動で、コントラストは2000:1。医療用にも応用できるという。
JDIはこのほか、反射型で2.7インチのカードタイプのディスプレイも展示しており、こちらは具体的に5Gは活用していないものの、NFC給電による書き換え、バッテリーによる表示の維持、太陽電池でバッテリーを充電可能といった特徴を紹介。IDカードやポイントカードとして活用できるとしている。
警備員のウェアラブルカメラも5G対応で高精細化
ALSOKは、NECとも協力し、5Gを活用した高度化警備サービスのイメージを紹介している。これは、ウェアラブルカメラやスマートフォンなど警備員からのデータや、ロボットやドローンなどセンサー機器からのデータのどちらもが、5Gで大容量のデータ送信に対応するというもの。高精細な画像の共有や画像解析を組み合わせて、警備サービスの向上を図るものになっている。
5Gの進捗は「順調」、世界的にも前倒し傾向
16日の報道関係者向けの案内では、NTTドコモ 5G推進室長の中村武宏氏が登場し、5Gの進捗や今後を解説した。
中村氏からは、5Gのスケジュールや仕様の特徴を解説した上で、直近で実施された実験が紹介された。
エリクソンとの屋内外の実験では10Gbps超の通信速度を達成しており、サービスインを想定する2020年の時点で最大5Gbps、その数年後には10Gbpsを達成可能とした。
ファーウェイとは横浜にて広いエリアを使って大規模MU-MIMOの実験が行われ、4.5GHz帯というLTEに近い周波数帯で、通信速度が最大11Gbps超、周波数利用効率は79.82bps/Hz/cellと大幅に高速・効率化できることが確認されている。なお、現行のLTEの周波数利用効率は、4×4 MIMOで15bps/Hz/cell程度になるとしている。
サムスン電子とは、28GHz帯を使った高速走行試験が実施され、時速150kmで走行する自動車で2.59Gbpsの伝送に成功している。鉄道などの、自動車よりも高速に移動する交通機関にも適用できるとする。
記者から5Gの進捗度合いを聞かれた中村氏は、無線技術は進んでいるものの、ユースケースまで示すことが重要で、「4割ぐらい」とした。現時点での課題については、高い周波数帯でのノウハウが今までのものと違うことが「チャレンジ」とし、さらに設備や設置のコストを含めて考えていくのが課題であるとした。
なおエリアについては、スモールセルになる傾向があるものの、当面はLTEとの併用が前提であるため、基本的にエリアに穴はないという。だたし、(4Gと5Gをまたぐことで)速度差は大きくなる可能性を指摘している。
標準化作業については、これまではあまり積極的でなかったという欧米が積極推進に舵を切ったため、海外では2020年より前倒しになる可能性が出てきているとした。北米では一部を2017年にも導入可能とし、韓国KTも2019年の商用化をアナウンスしているという。「(標準化は)アグレッシブなスケジュール。非常に大変だが、なんとかなると信じている」(中村氏)。
またその利用方法についても、5GではIoTをまず重視していく声が欧州を中心に強かったものの、現在ではモバイルブロードバンドを推進する方向に変わり、従来からモバイルブロードバンドを中心としていた日本や韓国とも方向性が揃ったことで、標準化作業もモバイルブロードバンドが優先して考えられているという。
通信速度についても、2020年の時点で5Gbpsという予測は、チップセットメーカーから否定的な意見は出ていないとし、実現する可能性は高いとしている。
5Gで実際に利用する周波数帯については、直近の動向として、3.4~3.8GHz帯が世界で利用できる周波数帯になるという傾向がみえてきたとのこと。日本は、500MHz幅を確保できる4.4~4.9GHz帯を提案しており、「世界では使いづらいが、中国では使えるため、エコシステムとしては十分」との見方が示されている。