法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
「Pixel 9/9 Pro/9 Pro XL」、カメラとサイズで選べるAIスマートフォン
2024年11月22日 00:00
「Googleがつくったマートフォン」として、国内市場でのシェアを拡大している「Pixel」シリーズに、2024年モデルとなる「Pixel 9」「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro XL」の3機種が登場した。今回は「Pixel 9」シリーズを試用することができたので、レポートをお送りしよう。
国内でもシェアを拡大する「Pixel」シリーズ
昨年、一昨年あたりから、価格高騰や性能的に成熟したことも影響し、国内のスマートフォン市場は今ひとつ活気がないとされるが、そんな中、着実に市場に浸透し、シェアを拡大しているのがGoogleの「Pixel」シリーズだ。かつてはサムスンやLGエレクトロニクス、ファーウェイといったメーカーと、開発者向けの「Nexus」シリーズを展開していたときは、Androidプラットフォームの最新版が利用できることを重視するユーザーに支持を得ていたが、「Pixel」シリーズではGoogleが提供するさまざまなサービスや技術をいち早く体験できるスマートフォンとして、着実に認知を拡げている。
国内向けとしては2018年の「Pixel 3」シリーズから展開がスタートし、当初は反響が今ひとつだったものの、2021年に初の自社開発のチップセット「Tensor」を搭載し、ボディデザインを一新した「Pixel 6」シリーズから、徐々に「Pixel」シリーズならではの個性を発揮し、市場での存在感を増している。その個性のベースになっているのがGoogleが機械学習で培ってきたノウハウを活かして開発された「Tensor」で、AIを活かした多彩な機能を実現することで、スマートフォンの新しい方向性を打ち出している。もっとも多くの人に知られているのが「消しゴムマジック」や「編集マジック」をはじめとした画像及び映像編集の機能だが、従来から注力されてきた翻訳や通訳などの機能も充実しており、これらの機能を使いたいために、「Pixel」シリーズに乗り換えたという人も少なくない。
「Googleが作ったスマートフォン」として展開されている「Pixel」シリーズは、大きく分けて、2つのシリーズが存在する。ひとつは例年、秋頃に発表されてきたフラッグシップモデルで、今回の「Pixel 9」シリーズや昨年の「Pixel 8」シリーズなどがこれに当たる。もうひとつは例年、春頃に発表される俗に「Aライン」と呼ばれるシリーズで、今年の「Pixel 8a」や昨年の「Pixel 7a」などだ。型番末尾の「A」は明言されていないものの、「手頃な価格」を意味する「Affordable」の頭文字を表わしているとされる。ただ、他社のラインアップのフラッグシップモデルとミッドレンジモデルの関係性と違い、「Pixel」シリーズは秋頃に発売されてきフラグシップモデルと同じ世代のチップセットを翌年の「Aライン」のモデルに搭載しており、フラッグシップモデルと変わらないか、それに迫るパフォーマンスが得られることから、非常にお買い得感が高いという認識が多い。実際、利用できる機能やサービスにもそれほど大きな差がないため、「半年後のAラインを待つ」という考えのユーザーも少なくないようだ。
また、今回発表された「Pixel 9」シリーズは、昨年の「Pixel 8」シリーズの2機種構成に対し、3機種構成にラインアップを拡大している。これに加え、今回は取り上げないが、昨年の「Pixel Fold」の後継モデルに位置付けられる「Pixel 9 Pro Fold」も発売されており、一気にラインアップを拡充してきた格好だ。ただ、「Pixel 9」シリーズの3機種は、昨年のモデルからネーミングのルールが若干、変更されており、発表時はやや混乱してしまうケースも見受けられた。具体的には、昨年の「Pixel 8」シリーズがディスプレイが標準サイズの「Pixel 8」と大画面ディスプレイの「Pixel 8 Pro」で構成されていたのに対し、今年の「Pixel 9」シリーズではディスプレイが標準サイズのベースモデル「Pixel 9」、望遠カメラなどを強化した「Pixel 9 Pro」、望遠カメラに加え、大画面ディスプレイを搭載した最上位モデル「Pixel 9 Pro XL」という構成になっている。そのため、同じ「Pro」が付けられたネーミングのモデルは、「Pixel 8 Pro」や「Pixel 7 Pro」が大画面モデルであるのに対し、「Pixel 9 Pro」は標準サイズのディスプレイを搭載したモデルになり、大画面ディスプレイを搭載したモデルには、「Pro」に加え、「XL」というネーミングが付加される。「XL」のネーミングは2019年発表の「Pixel 4」シリーズまで存在したもので、ネーミングとしては5年ぶりに復活した形になるが、こうしたネーミングルールの変更は、シリーズとしての統一性を損なうので、あまり歓迎できない。
販売については、Googleストアに加え、NTTドコモ、au、ソフトバンクでも販売される。楽天モバイルについては楽天回線対応製品に含まれるものの、キャリアとしての取り扱いはない。価格は「Pixel 9」が12万8900円から、「Pixel 9 Pro」が15万9900円から、「Pixel 9 Pro XL」が17万7900円からに設定され、各携帯電話会社ではGoogleストアの価格に2万円から3万円程度、上乗せされた価格で販売される。Googleストアでも12回払いの分割払いが可能だが、各携帯電話会社では端末購入サポートプログラムにより、2年後、もしくは1年後の端末返却を条件に、月額4000円から6000円程度の支払いで、実質負担額を各社販売価格の半額から60%程度に抑えて、購入することができる。
なかでも特徴的なのがソフトバンクで販売される「Pixel 9」の128GBモデルで、新トクするサポート(プレミアム)を利用した場合、全48回払いのうち、当初の12回は月々3円の支払いに設定し、1年後に返却すれば、実質負担額が36円(別途、早トクオプション利用料として1万9800円が必要)で購入できた。発売当初に話題になったが、総務省が1年間という短期間での返却をベースにした販売に難色を示したためか、現在は端末価格の値下げと共に、端末購入サポートプログラムが新トクするサポート(スタンダード)に変更され、2年後の返却を条件に、月額1円×24回の24円で購入できるように変更されている。
販売方法や価格設定についてはまた別の機会に触れたいが、今回の「Pixel 9」シリーズは米国での販売価格から換算すると、為替レートが「1ドル=160円」程度に設定されている。昨年の「Pixel 7a」では当初、当時の為替レートよりもかなり円高の「1ドル=115円」程度だったため、割安感があったが、今回は逆に少し割高に感じられるかもしれない。ただ、こうした為替レートの変動については、各社共、さまざまな工夫で影響を抑えようとしているが、スマートフォンやパソコンのような商品の場合、どうしても避けられないもので、もし、高く感じられるようであれば、端末購入サポートプログラムなどで実質負担額を抑えるか、各社が少し販売価格を値下げしたタイミングなどで検討するのも手だ。特に、11月下旬は「BLACK FRIDAY」セールなどもはじまるので、その段階で価格を見て、検討するのも悪くないだろう。
背面の端末デザインを一新
今回は「Pixel 9」「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro XL」の3機種をまとめて取り上げるため、共通する部分を中心に、説明する。まずは外観からチェックしてみよう。
「Pixel」シリーズはここ数年、基本的なデザインを踏襲しつつ、細かい部分をリファインしたデザインを採用してきたが、今回はシリーズの特徴とも言えるカメラバーのデザインの変更に加え、ボディ形状も見直すなど、デザインを一新している。
これまでの「Pixel」シリーズは、背面の両側端を湾曲させ、手にフィットするようなデザインを採用してきたが、今回は前面と背面に対して、側面を垂直に立たせた形状に仕上げられている。わかりやすく言えば、iPhoneに近い板状のボディに変更されたわけだ。好みの問題はあるだろうが、ケースを装着して利用することを考えれば、実用面にはあまり大きな影響はなさそうだ。
背面のカメラバーは、従来モデルが左右の側面に伸びる形状だったのに対し、「Pixel 9」シリーズでは楕円状のカメラバーが背面の上部にレイアウトされている。Googleによれば、この楕円形のデザインはスマートフォンやパソコンの楕円状の検索ボックスをイメージしたものだという。カメラの仕様が異なるため、カメラ部分(ガラス部分)のサイズは、「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro XL」が少し大きくなっている。背面のカメラ部は内部の部品レイアウトの効率性を考慮し、iPhoneをはじめ、多くの機種が片側に寄せる形でレイアウトしているが、カメラ部の突起は片側のみになるため、端末を机などに置いたとき、ガタガタと動いてしまう。その点、「Pixel」シリーズのカメラバーは、本体部分の『枕』のような位置になるため、机に置いても安定し、手に持ったときも端末の上下がわかりやすく、扱いやすいという印象だ。
ボディサイズについては従来の「Pixel 8」シリーズよりも数mm程度の違いだが、ボディ形状が変わったことで、手に持ったときの印象は少し分厚く感じられるかもしれない。「Pixel 9」「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro XL」の3機種のうち、標準サイズのディスプレイを搭載する「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro」は、ボディサイズがまったく同じで、ケース類は共通のものが利用できる。Google純正のケースではそれぞれのボディカラーに合わせたカラーのものが販売されているが、「Pixel 9 Pro」を購入したユーザーが「Pixel 9」のみのボディカラーであるPeonyのケースを組み合わせたり、「Pixel 9」のユーザーが「Pixel 9 Pro」のみのボディカラーであるRose Quartzのケースを組み合わせるといった楽しみ方もできる。
本体の背面は指紋が付きにくいコーティングが施され、今回試用したモデルでは「Pixel 9」が光沢、「Pixel 9 Pro」と「Pixel 9 Pro XL」がマット仕上げとなっている。耐環境性能はいずれもIP68準拠の防水防塵に対応する。落下時の破損などの補償については、各携帯電話会社で購入した場合、「ケータイ補償サービス」などの各社のサービスが利用できるが、Googleストアで購入した場合も「Preferred Care」が提供されている。「Pixel9」の場合、2年間プランの1万7000円を一括払いすることで、メーカー保証が2年間になり、自然故障に加え、落下や水没、画面割れにも対応するという内容で、サービス料9900円で同等品以上の正規交換品を提供する。端末購入から30日以内に端末から申し込みができるので、購入したユーザーは忘れずに検討しておきたい。
バッテリーは「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro」が4700mAh、「Pixel 9 Pro XL」が5060mAhとなっており、いずれも24時間以上のバッテリー駆動、スーパーバッテリーセーバー利用時は最長100時間の駆動を可能にするとしている。本体下部のUSB Type-C外部接続端子からの充電は、「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro」が最大27W、「Pixel 9 Pro XL」が最大37Wの急速充電に対応する。Qi規格準拠のワイヤレス充電にも対応し、別売のGoogle Pixel Stand(第2世代)を利用することで、「Pixel 9」で最大15W、「Pixel 9 Pro」で最大21W、「Pixel 9 Pro XL」で最大23Wでの充電ができるほか、市販のQi規格準拠のワイヤレス充電器では最大12Wでの充電が可能。「Pixel Buds Pro2」など、他のワイヤレス充電対応製品を充電するための「バッテリーシェア」にも対応する。
生体認証はディスプレイ内の超音波式指紋センサーによる指紋認証、インカメラを利用した顔認証に対応する。顔認証はマスク着用に対応していない。超音波式指紋センサーは「AQUOS R8 pro」や「Galaxy S24」シリーズなどで採用され、レスポンスの良さと周囲の明るさの影響を受けにくいなどのメリットがある半面、ディスプレイに市販の保護ガラスを貼った場合、指紋認証が正しく動作しないなどのデメリットも指摘されている。筆者も「AQUOS R8 pro」で何度も苦労したが、指紋認証対応の市販の保護ガラスも増えており、動作確認情報などをチェックしたうえで、購入することをおすすめしたい。ちなみに、TPU素材の保護フィルムは指紋の再登録が必要なケースがあるものの、概ね問題なく、利用できるようだ。
四隅が丸みを帯びたディスプレイ
ディスプレイはボディサイズからもわかるように、標準サイズの「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro」は約6.3インチ、大画面サイズの「Pixel 9 Pro XL」は約6.8インチを採用しているが、実はそれぞれ微妙にスペックが異なる。
まず、対角サイズはインチ表記で「Pixel 9」と「Pixel 9 Pro」は、約6.3インチだが、Googleのスペック表では対角サイズが「Pixel 9」は160mm、「Pixel 9 Pro」は161mmと表記されている。ちなみに、「Pixel 9 Pro XLは」は171mmとなっている。インチ表記ではなく、ミリ表記にしているのは、ディスプレイそのものの四隅が丸みを帯びた形状に変更され、対角サイズが微妙に違っているためだ。
また、解像度にも違いがある。「Pixel 9 Pro XL」は対角サイズがもっとも大きいため、1344×2992ドット表示と、もっとも高解像度だが、対角サイズが約6.3インチでほぼ同じの2機種は、「Pixel 9」が1080×2424ドット表示、「Pixel 9 Pro」が1280×2856ドット表示と、差別化が図られている。
3機種ともディスプレイのパネルは有機ELパネルを採用しているが、「Pixel 9 Pro」と「Pixel 9 Pro XL」はSuper Actuaディスプレイ、「Pixel 9」はActuaフルスクリーンディスプレイと、それぞれ表記されている。Super Actuaディスプレイの2機種は、いずれもリフレッシュレートが1~120Hzの可変であるのに対し、「Pixel 9」のActuaフルスクリーンディスプレイのリフレッシュレートは60~120Hzに留まる。
その他のスペックでは、200万対1のコントラスト比、HDRサポートなどが3機種共通だが、輝度は「Pixel 9 Pro」と「Pixel 9 Pro XL」の2機種のスペックが高く、「Pixel 9」は1ランク抑えられた仕様となっている。とは言うものの、実用面での差が大きいわけではなく、いずれも非常に美しく、視認性に優れたディスプレイと言えるだろう。
4世代目となるGoogle独自のチップセット「Tensor G4」搭載
近年の「Pixel」シリーズが特徴的なのは、「Pixel 6」シリーズ以降、自社設計のチップセット「Tensor」シリーズを採用している点にある。今回の「Pixel 9」シリーズには今回の3機種に加え、フォルダブルの「Pixel 9 Pro Fold」を含め、4世代目となる「Tensor G4」を採用する。従来の「Tensor G3」と比較して、コアの構成などが見直されているが、Googleの親会社である米Alphabet傘下の人工知能開発会社「Google DeepMind」と共同で設計され、スマートフォン上で文字や画像、音声などを理解できるマルチモーダルを備えた「Gemini Nano」を実行する初のプロセッサとされている。ネット上で公開されているベンチマークテストでは、2024年のフラッグシップモデルに搭載される米Qualcomm製Snapdragon 8 Gen3に及ばないものの、それに次ぐ結果が得られており、GPUの性能なども十分なレベルにあるとされる。かつてはCPUやGPUのパフォーマンスでチップセットが比べられる傾向が強かったが、実用上はそれほど大きな差が感じられないという指摘も多い。その一方で、今後はAIの性能を左右するNPUのパフォーマンスが重要になり、AIでどんな機能が利用できるかによって、ユーザーの選択が違ってくるため、チップセットの性能差はひとつの目安に過ぎないという見方もできる。
チップセットとして、もうひとつ注目されるのは「Satelite SOS」と呼ばれる衛星通信によるSOS通信をサポートしていることが挙げられる。今年10月24日に、KDDIは米スペースXと共に、auスマートフォンからStarlink経由のSMS送受信の実証実験に成功し、本誌でも速報記事を掲載し、Impress Watch Videoの「法林岳之のケータイしようぜ!!/#788 『KDDI スマホとStarlink衛星の直接通信の実証に成功』」でもその様子を紹介したが、ここで利用される衛星通信機能をチップセット「Tensor G4」が標準でサポートしているわけだ。実際の利用には、法整備や技術要件など、通信事業者の対応が必要になるが、こうした機能をいち早く利用できる環境が整うこともひとつのメリットと言えそうだ。
メモリーとストレージについてはモデルによって違い、「Pixel 9」は12GB RAMと128GB/256GB ROM、「Pixel 9 Pro」と「Pixel 9 Pro XL」は16GB RAMと128GB/256GB/512GB ROMとなっている。基本的にチップセットが共通のため、実際の利用環境にはあまり差がないが、一般的にRAM(メモリー)の容量はAIの処理動作に大きく影響されるため、AIを利用した機能などを重視するのであれば、「Pixel 9 Pro」と「Pixel 9 Pro XL」にアドバンテージがあるという見方もできる。
ネットワークは国内の5G/4G、海外の5G NR/4G LTE(TDDE/FDD)/3G W-CDMA/2G GSMに対応する。5GについてはSub6のみの対応だが、国内でNTTドコモに割り当てられている「n79」もサポートしている。総務省の審議などで、ミリ波対応端末に対する割引増額なども検討されているが、今のところ、ミリ波を利用した具体的なユースケースが提供されていないことを鑑みると、あまり実効性がない検討に見える。SIMカードはnanoSIMカードとeSIMのデュアルSIM対応で、いずれも1回線ずつを有効にできる。次期モデルではiPhone 16シリーズのように、デュアルeSIMの搭載を期待したいところだ。Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax/beに(2.4GHz/5GHz/6GHz)に対応し、Bluetooth 5.3にも対応する。FeliCaも搭載しており、モバイルSuicaをはじめ、おサイフケータイ対応の各サービスが利用できる。ちなみに、同時に発表された「Pixel Watch 3」もFeliCaに対応しているため、サービスが対応していれば、「Pixel 9」シリーズで有効にしたモバイルSuicaなどを「Pixel Watch 3」に転送して利用できる。
Androidプラットフォームのアップデートを7年間提供
プラットフォームはAndroid 14が搭載された状態で出荷されているが、「Pixel 9」シリーズ向けにはすでにAndroid 15の配信もスタートしている。プラットフォームのアップデートについては、米国での発売から7年間のOSアップデート、セキュリティアップデート、Pixel Drop(Pixel向けの機能追加)が提供される。ユーザーとしては自らが利用するだけでなく、中古品として、家族などに譲渡した場合も含め、長く利用できる環境が整っていることは安心感が大きい。とは言うものの、現実的に7年間も同じ端末を使い続けるかどうかは、ハードウェアとしての耐久性も考えると、微妙な気もする。むしろ、かつて各携帯電話会社がケータイ時代に提供していた『外装交換』のようなサービスを提供する方がユーザーには喜ばれるような気がするのだが……。
ソフトウェア関連では、Googleアシスタントに代わるAIアシスタント「Gemini」の搭載が大きなメリットだろう。「Gemini」はすでに他機種でもダウンロードする形で利用でき、iOS向けにもGeminiが提供されるようになったが、「Pixel 9」シリーズではアプリを追加しなくても標準で利用できる。使い道としては「Galaxy」シリーズでも採用され、おなじみになった「かこって検索」をはじめ、翻訳や通訳、メールや記事の要約などが挙げられるほか、AIを活かした機能として、これまでも消しゴムマジックや編集マジックなど、数多くの機能が実現されてきた。
こうした機能がどういうシチュエーションで役立つのかは、ユーザー次第だが、何かわからないこと、知りたいことがあったとき、電源ボタンを長押しすれば、すぐに調べられるということをユーザー自身も意識したいところだ。はじめて「Gemini」を起動したときにも想定される質問事項としても表示されるが、まずは「Geminiでできることを教えて」あたりからはじめて、文章を作成したり、画像を生成したりしてみて、自分なりの使い道を見つけていくといいだろう。
広角カメラとAF対応超広角カメラに加え、Proモデルは光学5倍カメラを搭載
「Pixel」シリーズの魅力のひとつに、「Pixel 6」シリーズではじめて実現された「消しゴムマジック」などの画像編集機能が挙げられるが、それを支えているのがコンピュテーショナルフォトグラフィーを軸にした「Pixel」シリーズのカメラだ。
今回取り上げている「Pixel 9」シリーズの3機種では、「Pixel 9」がデュアルカメラ、「Pixel 9 Pro」と「Pixel 9 Pro XL」がトリプルカメラをそれぞれ搭載している。基本となるのは3機種共通で搭載される2つのカメラで、ひとつめの広角カメラ(23mm相当)は1/1.31インチの50Mピクセルイメージセンサー/F1.68というスペックで、光学手ぶれ補正を搭載する。もうひとつは1/2.55インチの48Mピクセルイメージセンサー/F1.7というスペックの超広角カメラで、最大123度のワイド撮影が可能で、オートフォーカスにも対応する。これらに加え、Proシリーズの2機種については、1/2.55インチの48Mピクセルイメージセンサー/F2.8というスペックの光学5倍望遠カメラ(113mm)を搭載する。光学手ぶれ補正にも対応しているため、手ぶれを抑えた撮影を可能としている。
撮影モードとしては従来モデルに引き続き、「写真」「ポートレート」「夜景モード」「パノラマ」「アクションパン」「長時間露光」がサポートされるほか、新たに「一緒に写る」が搭載される。「一緒に写る」は発表時にもデモが公開されたが、複数の人で集合写真を撮るとき、撮影者が写真に入れないため、1枚目を撮影後、空いているスペースに撮影者が入って、2枚目を撮影すると、1枚目と2枚目の写真を合成して、1枚の写真に仕上げるというものになる。2枚目撮影時に構図をうまく合わせる必要があるなど、やや慣れが必要な感もあるが、うまく撮影シーンがハマれば、違和感のない仕上がりの写真を撮ることができる。Impress Watch Videoの「法林岳之のケータイしようぜ!!/#781」でも実際に撮るシーンを紹介しているので、興味のある方はご覧いただきたい。
「Pixel」シリーズの[カメラ]アプリが他製品と少し違うのは、動画を撮影するとき、ファインダー内の最下段のアイコンをタップして、切り替えるしくみになっている点だろう。写真モードとは画角も変更されるため、少し戸惑う部分もあるが、動画を撮影しながら、シャッターボタンをタップして、同時に静止画を撮ることもできる。最近、筆者は取材で「Pixel 9 Pro XL」で動画を撮影しているが、1時間以上の長めの記者会見でも熱などでトラブルになることもなく、安定して撮影できている。
撮影した写真や動画は、Googleフォトと連携する[フォト]アプリで管理できる。おなじみの「消しゴムマジック」や「編集マジック」などの編集機能は、他機種でもクラウド経由で利用できるようになったが、「Pixel 9」シリーズであれば、端末上で編集機能が利用できるため、すぐに目的の写真を作成できる。
カメラとサイズで選べ、AIを存分に楽しめるスマートフォン
ここ数年、国内外で販売されるスマートフォンでは、カメラとフォルダブルが高い注目を集めてきた。これらの要素は今後も継続して、ユーザーの高い関心を集めていくだろうが、ここに来て、もうひとつ注目されているのが「AI」だ。日々のニュースを見ていても「AI」というキーワードに触れない日はないくらいだ。
ただ、実際に日々の生活において、AIが身近な存在になっているかというと、必ずしもそうではなく、スマートフォンでも「そうか。AI対応なのか」くらいのイメージしか持っていない人も少なくない。翻訳や通訳、文章の要約、画像編集、画像生成など、さまざまな機能において、AIが活用されているのも事実で、おそらく今後のスマートフォンの進化はAIが軸になってくることは間違いなく、ユーザーがAIの存在を意識せず、便利な機能を利用できるようになるはずだ。そんなAIを体験する環境として、おそらく世界でもっとも先端を進んでいるのがGoogleの「Pixel」シリーズであり、その最新モデルが「Pixel 9」シリーズということになる。
たとえば、かつては何かメールやメッセージは、ユーザーが自ら受診しなければならず、端末で対応するアプリを起動し、返信メッセージを入力するという使い方だったが、今やスマートウォッチを利用し、手元で確認できるようになり、ワイヤレスイヤホンでメッセージの読み上げ機能もサポートされてはじめている。留守番電話に残された音声メッセージも端末上で文字起こしされ、要約された内容がイヤホン経由で読み上げられ、AIが「法林からのメールで、来週の火曜日に打ち合わせをしたいと言ってます」とユーザーに教え、それに対し、「火曜日は忙しいから、木曜日の午後でどうかって、提案しておいて」といった指示も出せるようになる。映画『アイアンマン』に登場する人工知能「(J.A.R.V.I.S」(ジャービス)のような存在もそう遠くない未来に体験できるかもしれない。
こうした環境を目指すうえで、「Pixel」シリーズにはスマートフォンだけでなく、スマートウォッチの「Pixel Watch 3」、完全ワイヤレスイヤホンの「Pixel Buds Pro2」など、スマートフォンをサポートするラインアップが揃っている。まだ現段階では個々の機能をひとつずつ工夫しながら使うしかないが、来年以降、順次、それぞれのデバイスが連携し、より使いやすい環境が提供されていくことが期待される。
今回取り上げた「Pixel 9」シリーズ3機種は、こうした次の時代へ向けたスマートフォンとして、Gemini搭載など、AI関連の機能を充実させる一方、デザインも一新しており、非常に完成度の高いモデルに仕上げられている。ユーザーが長く安心して利用できる環境も整っており、他のプラットフォームから移行しても十分に満足できる内容と言えそうだ。3機種を選ぶときの基準もチップセットなどの基本機能が共通なので、カメラと画面サイズを中心に判断すれば、選びやすいだろう。あとはストレージの容量次第だ。
最終的な悩みどころは、やはり、価格だろう。米国での価格は「Pixel 9」が799ドルから、「Pixel 9 Pro」が999ドルから、「Pixel 9 Pro XL」が1099ドルからに設定され、基本的には従来モデルから価格が据え置かれているが、国内向けは為替レートの影響もあり、「Pixel 8」(128GB)の11万2900円に対し、「Pixel 9」(128GB)は12万8900円に値上がりしている。最上位モデルで比較すると、「Pixel 8 Pro」(512GB)が18万9900円だったの対し、同クラスのディスプレイを搭載する「Pixel 9 Pro XL」(512GB)は21万2900円と、2万円以上の値上がりとなっている。もちろん、ライバルである「Galaxy S」シリーズや「Galaxy Z」シリーズ、「iPhone 16」シリーズなども為替レートの影響で、端末価格が高騰する傾向にある。こうした価格高騰の影響で、国内はスマートフォンの購買意欲が今ひとつ芳しくないという指摘もあるが、業界全体として、どうすれば、消費者が買いやすく、楽しみやすい環境を作り出せるのかという点に、監督官庁の総務省の含め、もっと知恵を絞って欲しいところだ。せっかくの優れたデバイスもユーザーの手に渡らなければ、AIのポテンシャルを活かすこともできない。当面は各社の端末購入サポートプログラムがひとつの手になりそうだが、ぜひ、一度、店頭で実機を手に取り、「Pixel 9」シリーズの可能性を体験していただきたい。