【Mobile World Congress 2016】

「5G」に向けた取り組みを披露したエリクソン

1GbpsのLTEや、5GHz帯の活用も紹介

エリクソンブースの様子。今年は一般来場者向けの展示スペースも設けられていた

 エリクソンは、「Mobile World Congress 2016」で、LTE関連技術を出展。2020年には商用化される、5Gに向けた取り組みを披露した。

 5GHz帯のUnlicensed Bandを使ったデモでは、「LAA(Licensed Assisted Access for LTE)」を紹介。実際に、スペイン最大手のキャリアであるテレフォニカのコアネットワークに接続し、20Mbpsに速度を絞った通常のLTEと、5GHz帯のLTEをキャリアグリゲーションしていた。通常では、最大でも20Mbpsしか出ないところを、キャリアアグリゲーションで高速化。Unlicensed Bandの帯域を足し合わせることで、100Mbps近くにまで上げることができる様子を確認できた。

既存の周波数帯に、5GHz帯のUnlicensed Bandをキャリアグリゲーションで組み合わせて、速度を測定。100Mbps前後のスループットを記録していた

 エリクソンの説明員によると、これは「キャリアにとって、非常に有効なソリューションになる」という。既存の周波数帯を補完する用途で利用でき、なおかつ、Wi-Fiなどのアクセスポイントを流用しやすいからだ。サービス化の動向については、クアルコムのブースレポート(※関連記事)にも記載したため、そちらをご参照いただきたい。

MulteFire

 その隣では、5GHz帯のUnlicensed Bandを単独で運用する、「MulteFire」のデモも行われていた。MulteFireは、「キャリアが、これまでアクセスできなかったビル内などを、エリア化する際に有効」(説明員)な技術。ライセンスが不要なため、ビルのオーナーなどが基地局を設置することができ、エリア展開を容易にできる。キャリアの持つコアネットワークへの接続も想定されており、これによって、屋外の基地局とのハンドオーバーも可能になる。エリクソンブースでは、そうした運用をした際のデモも行われていた。

「MulteFire」のデモ。屋内でも基地局を簡単に設置でき、キャリアのネットワークとも協調する

GIGABIT LTE

 GIGABIT LTEとして、下り最大1Gbpsの通信デモも行われていた。これを実現する手法としては、3波のキャリアアグリゲーション(3CC-CA)を行ったうえで、そのうち2波に4×4のMIMOを導入。さらに、変調方式を256QAMにしている。これによって、20MHz幅の1波が4×4のMIMOで400Mbpsとなる。1波は2×2のMIMOで200Mbpsだが、「400+400+200」で1Gbpsを実現できるというわけだ。1GbpsのLTEには、クアルコムのモデムチップ「X16 LTE」が対応。エリクソンの設備を使い、クアルコムブースでも同様の展示があった。

3波のキャリアグリゲーション、4×4のMIMO、256QAM化という既存の技術を組み合わせて、下り最大1Gbpsを実現

 ただし、256QAMに関しては、干渉もしやすく、速度が低下しやすい。これに対して、エリクソンは「Ericsson Lean Carrier」と呼ばれる技術を導入。256QAMを適用できるエリアを広げ、GIGABIT LTEを実現しやすくするという。

遠隔でロボット操作――5Gで実現すること

 これらの技術は、既存のLTEの延長線にあり、「5G」に向けた取り組みの1つとなる。その先には、ビームフォーミングや、高い周波数帯、Massive MIMOなどの技術を組み合わせた5Gが控えている。エリクソンのブースでは、その利用シーンを展示するとともに、ドコモとの共同実験を披露していた。

 ユースケースとしては、リモートでロボットを制御できるコーナーを設けていた。デモは、エリクソンブースにあるコントローラーで、スウェーデンにあるABBの工作機械を操作するというもの。フィードバックが返ってくる仕組みになっており、ディスプレイで離れた場所にある機械の様子を確認できた。

遠隔地にあるロボットを、コントローラで操作する様子。低遅延な5Gだからこそ、有効なユースケースだ
模型と映像のみの展示だったが、車間距離の自動調整のためにも、低遅延な通信が生きるという
デモ環境では、20Gbps前後の速度が出ていることを確認できた

 現状では、5Gが商用化されていないため、ネットワークには既存のLTEを使っていたが、5Gでは、これがさらに低遅延になる。わずかにあったタイムラグがなくなり、コントローラを動かした際に、それが即座に、遠隔地にあるロボットの動きに反映されるようになるそうだ。

 ドコモとの共同実験結果としては、15GHz帯の800MHz幅を使い、ビームフォーミングやマルチユーザーMIMOを用いて通信する装置が置かれていた。端末側は常に動いていたが、ビームフォーミングがこれに追従。2つの端末の平均スループットが、20Gbps以上になる様子を確認することができた。

非常に高い周波数帯を使い、ビームフォーミングで高速通信を実現。端末が移動しても、速度が極端に落ちることはなかった

石野 純也