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スカイツリーで5Gをいち早く体験――ドコモと東武鉄道が「5Gトライアルサイト」
2017年5月22日 17:11
鉄道内で高精細製造を視聴、電子マガジンも楽しめる
5Gトライアルサイトならではの取り組みとして、4月21日運行開始の新型特急車両「リバティ」の運転席で撮影した4K映像を、8台のタブレットで同時に再生できるデモンストレーションが実施された。こちらは28GHz帯、800MHz幅という帯域を使い、4Kサイズの映像(ビットレート:18Mbps程度)を8本同時に送出するというもの。5G対応のタブレットはまだ存在しないため、5G基地局→5G受信機→「リバティ」内のWi-Fiルーター→タブレットという流れでデータが送られた。このデモは一般ユーザーが体験することはできないが、将来的に5Gの高速大容量を活かすサービスのひとつとしてイメージされたものと言える。
一般ユーザーが参加できる取り組みとして、「リバティ」車内では、7月1日~8月31日、「TOBU FREE Wi-Fi」経由で、雑誌700冊以上をタブレットやスマートフォンで読み放題になる「dマガジン for Biz」や、観光パンフレットなどを楽しめる「ささっとパンフ」を、手持ちのスマートフォンやタブレットで利用できる。「リバティ」に5Gの通信装置が搭載されるわけではなく、あくまで5Gをイメージした例のひとつだ。
5Gだからできる高精細映像を
5月28日まで、地上の東京ソラマチ イーストヤード 1Fに大型モニターが設置され、東京スカイツリーの展望デッキ(地上350m)にある6つの4Kカメラからの映像を地上にいながらにして楽しめる。
これは5Gで実現する高速・大容量を活かした取り組み。視界よりも広い180度のライブ映像が、展望台のカメラから、地上まで光ケーブルで配信され、モニターのすぐ横にある5G基地局と受信機で送信される。ビットレートが30Mbpsという高精細な映像を、5G区間は、4.5GHz帯の8×8 MIMOのシステム(実測2.5Gbps程度)を使って、2ストリームで配信した。今回はわずかな距離での伝送だが、過去、横須賀で実施した実験では、200mほど離れた距離でも十分届いた。
マルチベンダー、パートナーとの協業をドコモの強みに
場を提供する形となった東武鉄道の根津嘉澄取締役社長は、「開業からちょうど5年を迎える東京スカイツリーが実験のフィールドになるのは、開業以来の開発構想の延長線上にある。スカイツリーは観光立国・日本のシンボルでもある」と誇らしげに語りつつ、浅草・スカイツリーエリアに加えて、日光鬼怒川エリアで今後、何らかの取り組みを進めたいと意欲を見せた。
NTTドコモの吉澤和弘代表取締役社長は、「5Gトライアルサイトは、単にネットワークの速さや大容量を見せる場ではない。パートナーのみなさんと5G時代にどういうサービスと融合できるか、サービスと一緒にビジネスへ進化させることに意味がある」と説明。スペック競争としての取り組みという側面ではなく、通信を活かした新たな事業をいかに創出するかが重要とする。
ドコモでは、エリクソン、ノキア、ファーウェイなど、複数の通信機器ベンダーと5Gの実用化に向けた協力体制にある。そうしたマルチベンダー体制が強みのひとつとする一方、実際のビジネス上でも、パートナー企業との協力を進める姿勢を打ち出すのもアドバンテージとする姿勢だ。
5Gトライアルサイトが発表された2016年11月の段階では、路線バスとの間での通信など、いくつかの実験を行う方針を明らかにしており、今後も順次実施していくと見られる。