ニュース

「5G Tokyo Bay Summit 2015」で披露された5Gの最新技術

 NTTドコモは、LTEの次の世代のモバイル通信「5G」の技術展示や講演イベントを開催する「5G Tokyo Bay Summit 2015」を7月22日~23日にかけて開催している。会場は神奈川県横須賀市の横須賀リサーチパーク内にあるドコモR&Dセンタで、会場内ではドコモをはじめ、共同実験を行うベンダー各社がデモンストレーションを中心とした展示を行っている。

横須賀市の横須賀リサーチパーク内にあるドコモR&Dセンタ
「5G Tokyo Bay Summit 2015」の会場

 ドコモが取り組む「5G」は、通信速度の高速化やさらなる低遅延化といった、これまでの発展的な内容に加えて、IoTに対応する多数の端末との接続や、省電力化といった取り組みも含めており、高性能なモバイル端末からM2Mまで、幅広い種類の通信をカバーするのが基本的なコンセプトになっている。

 技術的には3GHz帯、10GHz帯といった、これまでにない高い周波数帯もターゲットにしており、これまでは利用しづらかった電波特性を解決する技術開発も行われている。通信速度は5Gでピークデータレートが数Gbps、その次の「5G+」では10Gbps以上を実現する。

 ドコモは研究の過程で、202X年の東京・西新宿を舞台にした大規模シミュレータ「5G リアルタイムシミュレータ」を開発しており、「5G Tokyo Bay Summit 2015」の会場では、1つの基地局がカバーするエリアで100人が同時に通信を行っている場合、という想定のシミュレーション結果が披露されている。

 ドコモは現在、技術コンセプトの検証とともに、5Gの実験と要素技術を検討している段階で、2015年後半には5Gの標準化が開始される見込み。商用化は2020年を目指している。

ドコモの5Gへの取り組み
「5G リアルタイムシミュレータ」の模様

 3GではW-CDMA、4GではFD-LTEといったように、特定の通信方式が周波数帯に紐付けられて国際的に標準化されてきたが、ドコモの5Gの取り組みでは、こうした分かりやすい“5Gを代表する通信方式”がアナウンスされていない。

 この通信方式については、すでに取り組んでいるヘテロジニアスネットワークやキャリアアグリゲーション、今後のMIMO技術の発展などにより、特定の通信方式に過度に依存しない環境も見込まれており、現時点における「5G」の捉えどころのなさにつながっているともいえる。

 ドコモは現在でも、キャリアアグリゲーションなどの技術を「LTE-Advanced」の技術を先取りしたものと位置付けて商用化しているが、こうした取り組みと同様に、ある日から「5G」サービスが一斉に始まるのではなく、4GのLTEを発展させて5Gとして組み込まれるものから、新たな無線アクセスとして投入されるもの、IoT向けのものまで、「5G」の技術やサービスは段階的に市場に投入され、やがてすべてが5Gの世代に置き換わっていくイメージになっている。

5Gの高速通信では高周波数帯、ミリ波も活用

 これまで活用が難しかった高い周波数帯の技術は研究開発がさかんな部分で、「NOMA(非直行多元接続)伝送実験」は屋内の無線伝送でデモが実施されているほか、エリクソンとの共同実験として、ピークデータレートが5Gbpsという、15GHz帯を使った「OFDMセルラ無線アクセス」などが披露されている。

「NOMA(非直行多元接続)伝送実験」

 ノキアとの共同実験では、73.5GHz帯で1GHz幅を利用するというミリ波伝送実験が紹介されており、ビームフォーミングの技術は、ビームが端末を追随する様子がヘッドマウントディスプレイの中の仮想空間で見られるようになっている。

ノキアとのミリ波伝送実験

 ファーウェイとの共同実験では、6GHz帯以下でTDDのMassive MIMOなどについて、中国・成都でフィールド実験を実施している様子が映像中継で紹介されている。これらはIoT向けとしても重要な技術になるという。

 ファーウェイのブースでは、もう少し現世代よりの実験として、無線LANの5GHz帯をLTEと組み合わせてキャリアアグリゲーションを行う「LAA」(Licensed-Assisted Access)についても披露。端末が中国向けの周波数に対応しているため、小型の電波暗箱の中で通信を行い、その模様をグラフなどで示している。LAAについては2015年12月からの標準化作業を経て、2017年中の通信チップの対応、その後の商用化を目指すとしている。

太田 亮三