【Mobile World Congress 2018】
「ロボ書道」で5Gデモ、大盛況のNTTグループブース
2018年3月5日 12:24
NTTドコモは「MWC 2018」で、他のNTTグループと共同でブースを出展している。従来のNTTドコモ単体のブースと比較すると、出展場所は異なるホールに移動し、ブース面積と展示物も大幅に増えている。また、移動先のホール3は端末メーカーや各国のキャリアが集まる、MWCでも花形的な位置にあるホールで、NTTドコモブースとしては例年以上に盛り上がっていた。
特に注目されていたのは、ブース前面で行われていた、ロボットを使ったデモだ。これは操作者の動きをトレースする、いわゆるマスタースレーブ型のロボットで、通信経路に5Gを使うことで、5Gの特長のひとつである低遅延性能をアピールしていた。
黒い空手着風衣装の操作者とロボットがロボットダンスっぽい演舞をしたり、遠隔操作で書道をしたりするなど、ハリウッド映画やアメコミにでてくるような“誇張された日本観”と言えるようなデモ内容だったが、それだけに来場者のウケが異常に良く、デモが行われるたびにNTTグルーブブース周辺に通路には通行が困難なほどの人だかりができていた。
ただしこのデモ、実は技術面で見るとやや突っ込みどころもあった。5Gで通信しているが、操作者が身につけているトレースセンサーの方が5Gよりも遅延が大きく、また輻輳のためセンサー通信がやや不安定で、実はそちらがボトルネックとなっていて5Gの性能が発揮されていないようだった。また、書道デモでは操作者はHMDを装着していたが、今回は映像伝送には5Gは使われていないとのことだった。
5Gの通信は、実際にはステージ裏手の展示ブースで行われていた。これはミリ波を使った通信で、エリクソンの基地局とインテルのテスト用端末が使われていた。ミリ波は非常に指向性が強い電波で、ビームフォーミングされた位置以外ではほとんど通信できないのも特徴。ホール3では各キャリアやクアルコム、インテルといった通信チップベンダーが多数、ミリ波によるデモを行っているが、いずれもビームフォーミングをしているため、輻輳や混信で問題が生じることはまったくなかったという。
一方で2.4GHzなどの汎用通信はマトモにつながらないことが多く、枯れた技術であるBluetoothやWi-Fiよりも、開発中のミリ波5Gの方が安定通信できるという状態となっていたようだ。
ブースでは「指向性が強い」というミリ波の特性を可視化するデモも行われていた。ミリ波は電波の中でも遠赤外線や可視光など、いわゆる「光」に近い高い周波数(だいたい30GHz以上)で、反射や回折が少ないという、光に近い特性を持っている。これを使ってエリアを作るのを容易にするために、カメラの映像にミリ波の強度を重ねて表示するシステムをNTTドコモでは開発している。
デモでは2mほど離れた場所にある端末からのミリ波がどのくらいの強さでどこから受信しているかを、映像に重ねて表示していた。デモでは人間を模したパネルがアンテナを遮ったとき、ミリ波電波がどのように変化するかを見せていた。あいだに遮蔽物がないときは、端末のアンテナのある部分が最大強度となるが、そのほかにも脇にあるガラスパネルや床面にも若干反射していたり、天井のディスプレイの底面がやけに強めに反射していたりと、意外と反射でも電波強度が強いことが視覚でわかるようになっていた。
このほかにもブースではNTTグループが開発しているさまざまな技術やソリューションが展示されていた。
こちらはソニーとNTTドコモが共同開発しているスマートカー「New Concept Cart」。5Gで遠隔操作できる。実はこの車、扱いとしては「Xperia」シリーズで、ソニーの発表会でも紹介されていた。写真に写っているのが前面で、乗客は前方をモニター越しに見ることになるが、内部の4Kディスプレイと前面のソニー本気のカメラにより、筆者のような近眼にしてみると肉眼よりもよほどクリアに遠くまで見えた。もちろん暗所にも強い。さらに全方位に配置された複数のカメラの映像をスティッチし、車を上から見たような疑似映像も作れるが、それを実現するために内部の処理系統にはグラフィックボードの「GeForce GTX 1080」を搭載しているとか。
フジテレビとNTTドコモが共同開発している「Diorama Stadium」も展示。テーブル上にARで仮想のF1コースを表示させ、レースの模様をリアルタイムで表示させるといったデモが行われていた。ちなみに使われていたのはTango対応のAndroidスマートフォンだった。実用化などについてはまったくの未定だが、野球やサッカーといったフィールド競技全般で面白そうなので、是非とも実用化して欲しい技術だ。
NTTドコモがコマツなどと合同で設立したランドログが手がける「LANDLOG」。例えば、大規模な建設現場にWebカメラを設置し、その映像をサーバー上で解析することで、どの建機がどこでどのように動いているかをリアルタイムで集計する。映像解析を用いることで、建機に細かいセンサーを付けないでも、大まかな動きを把握できるようにしているが、IoT化されている建機については、その情報を処理することも想定していて、その場合はコマツ以外の建機も利用できるよう、オープンなプラットフォームとしてデザインされている。