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「NTT法見直し」第1次報告書案が示される、有識者会合は研究関連の義務と外国人役員規制で意見交換

 総務省の情報通信審議会 電気通信事業政策部会 通信政策特別委員会は22日、第11回会合を開催した。市場環境の変化に対応した通信政策の在り方として、前回(第10回)には、NTTとKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの代表者も出席し、主にNTT法に関して委員と共に意見交換された。

 今回の会合では、これまでの会合の中で一定の方向性が確認された「研究成果の普及責務」や「外国人役員規制」の見直しなどについて、事務局がまとめた「第一次報告書(案)」についての意見交換がなされた。

報告書案の内容

 今回提示された報告書案では、NTT法の在り方について、通信政策として確保すべき事柄の1つである「国際競争力の確保」について、情報通信産業の国際競争力強化を進める上で早期に結論が得られた内容を、「速やかに実施すべき事項」として提言し、それ以外のものは「今後更に検討を深めていくべき事項」として整理するものとなっている。

 「速やかに実施すべき事項」として、具体的には、NTTの研究推進責務と研究成果の普及責務の撤廃と、外国人役員規制の緩和が挙げられている。

 研究推進責務については、NTTの基礎的研究の役割は今後も重要で、ニーズを把握しているNTTの経営判断で研究内容を決めることが最も効果的であることや、NTTが責務の有無にかかわらず「研究推進に積極的に取り組む考えを表明」していることから、推進責務を撤廃し、取り組み状況を継続的に注視していくことが適当とした。

 研究成果の普及責務については、現在研究成果の情報開示が求められており、独占的な成果開示を求める海外パートナーとの国際共同研究へ支障があったり、経済安全保障の観点から技術流出の問題があったりする現状の課題があるため、この普及責務は廃止をするとする方向が示されている。

 外国人役員規制については、現在の外国人役員は一切認められていない現状では、国際展開の強化や会社経営の安定化を図るため、航空法などほかのものを参考に「代表者でないこと」や「役員の3分の1未満」への条件緩和という案になっている。

 報告書案では、これまで議論してきたユニバーサルサービスの考え方や公正競争の確保、政府の株式保有義務などに関しては、引き続き検討を深めていく事項としてまとめられた。

委員からの意見

 今回の報告書案については、研究開発の推進と普及責務について、「競争手段としての研究開発は、グローバルで活発化すれば自然と当然に行われるもので、法律の中で規定することにどれだけの意味があるのか疑問」という意見や、「NTTに依存せず、大学や民間を含めて国全体の政策として議論すべき大きな課題」といった意見があった。

 一方で、推進責務の撤廃については「本当に日本の成長力、競争力が保てるのか懸念があり、担保する仕組みが最低限必要。基礎研究を行ってきた会社が、収益性などで研究所の再編や研究所自体がなくなる会社が過去にあった。NTTからそれがなくなる懸念がある」とし、推進責務は残すべきという意見もあった。

 また、報告書案では、推進責務を撤廃し「取り組み状況を継続的に“注視”していくことが適当」としているのに対し、「注視するというのは、注目しながら見守るということで、単に見守るだけではなく、廃止に伴う影響がないか“検証していく”ということが適切ではないか」と、委員の中でもさまざまな意見が交わされた。

 委員の意見の中には「放送法で総務大臣がNHKに対して必要がある場合の研究を命じる規定がある」とし、廃止にあたっての条件などを見直すべきという意見がみられた。

 また、普及責務については「開示責務の撤廃であれば賛成」や「現代の最先端の学術は、一般ユーザーが利用できるレベルまで技術が開示されている時代に、性質が異なるものとはいえ、これらの責務を全部なくすのが、(一般に)どこまで広く理解してもらえるかが疑問」など、慎重なコメントもあった。