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映画一本も瞬時にDL、ミリ波の上を行く「テラヘルツ」――遅延を解消し公平なゲーム環境もたらす技術も

 NTTドコモは、docomo Open House'22において、テラヘルツ波に関する取り組みを公開した。

暮らしを豊かにする次世代の技術

 テラヘルツ波とは、100GHz~3THzの周波数の電波を指しており、5Gで利用されているミリ波(28GHz~)よりもさらに広い周波数帯域を利用できるため、現行の5Gよりもさらに高速な通信サービスの実現が見込まれている。

 5G Evolutionや6Gに向けて超高速・大容量通信への期待が高まる中、そのポテンシャルを秘めるテラヘルツ波は大気中での電波の減衰が激しく、遠方まで到達させることが難しいなどの課題がある。現状では、近距離での通信や大気のない宇宙での活用が期待されるという。

 テラヘルツ波の活用が想定されるケースとしては、イベント会場などでのスポット的な通信に加えてスマートフォンをタッチさせて一瞬で映画などのコンテンツをダウンロードする、といったものがイメージされる。

 NTTやドコモではテラヘルツ帯デバイスの研究開発を進めており、2018年時点では100Gbpsで2.2m、2020年には9.8mの距離までの伝送に成功しているという。今後は100mの伝送を目標として装置化、高出力・広帯域化が進められている。

ミキサーやパワーアンプを一体化、小型化を図ったのが右のもの

 また、直進性の高いテラヘルツ波を有効に活用するための技術として、300GHz帯ビームフォーミング用のメタサーフェス技術を利用したRIS(Reconfigurable Intelligent Surface)なども合わせて展示された。ロスの大きいテラヘルツ帯を実用的なものとすべく現在、開発に取り組んでいるという。

 このほか、ドコモ・NTTで6G時代に向けて開発中の要素技術の検証のための機器なども合わせて公開された。

 任意の信号を作れるソフト無線機とアップ/ダウンコンバーターを組み合わせたもので、サブテラヘルツ帯(97GHz)の検証環境を構築。これを用いることで、簡易に6G向けの変復調方式の評価ができるという。

高速通信をゲームにも

 会場では、次世代のクラウドゲーミング環境を支える技術のデモンストレーションも公開。

実際にプレイした選手によると遅延の差ははっきりと体感できるようだ

 オンラインゲームでは、通信環境に起因する遅延が結果に大きく影響する。特に一瞬の判断を求められる対戦ゲームなどでは、通信の遅延で有利不利が決まりがち。IOWNオールフォトニクス・ネットワークと接続するユーザー向けの装置により、高精度なネットワークの遅延測定が可能になる。

 さらに遅延に応じて調整を入れることで、公平なゲーム環境の構築が可能になるという。会場ではeスポーツプレイヤーが実際にゲームで対戦。東京と大阪程度の距離で想定される遅延を再現してのデモが披露された。

 現在ではオンラインゲームの大会であっても、プレイヤーは会場に集まりプレイするスタイルが多いというが、こうしたテクノロジーが進んでいくことで将来的にはプレイヤーも完全リモートで大会を開催できるようになるかもしれない。

【お詫びと訂正】
 記事初出時、「オートフォトニクス・ネットワーク」としていましたが、正しくは「オールフォトニクス・ネットワーク」です。お詫びして訂正いたします。