法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「Google Pixel 8a」、AIによる多彩な機能で定番モデルへ進化する一台

 Googleは5月8日、同社のスマートフォン「Pixel」シリーズの最新モデル「Google 8a」を発表した。国内ではGoogleストアに加え、NTTドコモ、au、ソフトバンクの3社からも販売される。筆者も実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

Google「Pixel 8a」、約152.1mm(高さ)×72.7mm(幅)×8.9mm(厚さ)、約189g(重さ)、Obsidian(写真)、Aloe、Bay、Porcelainをラインアップ

ライバルも羨む「Pixel」シリーズの躍進

 コロナ禍において、国内のスマートフォン市場は一時的に販売数を伸ばしたが、2023年は2022年に引き続き、出荷台数を大幅に減らしたとされる。統計によって、多少の違いはあるものの、出荷数を報じる本誌のニュース記事では「2000年以降、過去最低」「前年比10%減」といった厳しい文言が並んだ。

 そんな厳しさが増す国内のスマートフォン市場において、ここ数年、着実に支持を拡げているのがGoogleの「Pixel」シリーズだ。国内向けには2018年の「Pixel 3」シリーズから展開を開始し、例年、秋にフラッグシップモデル、春に普及モデルを発表してきた。元々、Google自身がサムスンやLGエレクトロニクス、ファーウェイなどと共に、開発者向けのリファレンスモデル「Nexus」シリーズを展開していたこともあって、当初は「Pixel」シリーズの位置付けが理解されず、販売も芳しくなかったが、2021年10月に発表された「Pixel 6」シリーズで自社開発のチップセット「Tensor」の採用し、AIを軸にした機能充実に注力する方向性を打ち出したことで、市場の反応も大きく変わってきた。

 当初、各携帯電話会社はGoogle製品の重要性を認めつつも今ひとつ販売に積極的ではなかったが、Pixelに搭載されたAIを利用したわかりやすい機能が徐々に認知されてきたことで、力の入れ方も変わってきた。特に、昨年の「Pixel 7a」ではNTTドコモの5G対応バンドの内のひとつ「n79」に対応し、NTTドコモでも取り扱いがはじまったことで、さらに販売増に弾みがついた格好だ。

 「Pixel」シリーズが拡大した背景には、別の要因もあるとされる。たとえば、価格設定とアグレッシブな販売施策だ。

 これまでのスマートフォンはチップセットやディスプレイ、カメラなどの仕様によって、差別化が図られてきた。特に、チップセットは各社製品の価格を大きく左右するもので、フラッグシップ、ミッドレンジ、エントリーではそれぞれに違うチップセットが搭載されるケースが一般的だった。

 これに対し、Googleはここ数年、自社開発のチップセット「Tensor」の最新版を秋に発表する「Pixel 7」や「Pixel 6 Pro」といったフラッグシップに搭載し、翌年の春過ぎに発表される「Pixel 7a」や「Pixel 6a」などの普及モデルにも同じチップセットを搭載してきた。つまり、半年後には最上位のチップセットを搭載したモデルが普及価格帯で購入できる戦略をとってきたわけだ。

 これまで多くのスマートフォンにチップセットを供給してきた米Qualcomm製Snapdragonは、「Snapdragon 8」シリーズや「Snapdragon 6xx」シリーズなど、チップセットを性能別にクラス分けし、搭載するチップセットによって、スマートフォンのクラスも区別されてきた。もっともスマートフォンの性能は、チップセットのみで決まるわけではなく、搭載するメモリーやディスプレイ、カメラ、ユーザビリティなど、さまざまな要因で製品の「価値」が決まるが、フラッグシップモデルのチップセットを半年後の普及モデルに搭載した「Pixel」シリーズの取り組みは、業界内でもかなり驚かれた。

 もうひとつはGoogleの価格設定と国内の各携帯電話会社による販売施策だ。ここ数年、スマートフォンの価格は高騰する傾向にあるが、「Pixel」シリーズは同じAndroidプラットフォームを搭載するライバル機種に比べ、価格設定が抑えられている。各携帯電話会社も端末購入サポートプログラムを積極的に活用し、MNP利用時の販売奨励金などを最大限に活かすことで、端末返却時の実質負担額を「12円」や「24円」といった価格に抑えて販売してきた。

 こうした取り組みに対し、ライバルメーカーの担当者からは「いや、うちでは無理」「どれだけ(販売支援を)注ぎ込むの?」「市場を破壊する気?」といった厳しい声も聞かれた。販売施策の是非はここで触れないが、こうした価格設定や積極的な販売施策の効果もあってか、「Pixel」シリーズは確実にシェアを拡大し、若い世代を中心にiPhoneから乗り換える動きも目立っているという。

 今回発表された「Pixel 8a」は、「Pixel」シリーズの普及モデルに位置付けられる。前述の慣例に倣い、昨年秋に発売された「Pixel 8」と同じチップセット「Tensor G3」を搭載しながら、昨年の「Pixel 7a」に比べ、わずか3000円程度の価格上昇に抑えた7万2600円(Googleストア価格)という価格を設定している。これに加え、Googleストアでは発売直後の5月21日まで、「Pixel 8a」購入で2万円分のストアクレジットが付与されたり、「Pixel 7a」や「iPhone SE(第三世代)」などの対象スマートフォンを高額で下取りするなどのキャンペーンが実施されていた。

 Googleに限らず、各社共、新製品発売時には予約キャンペーンや発売記念キャンペーンを実施するが、iPhoneの下取り額を高く設定するなど、Googleの並々ならぬ「Pixel」シリーズへの意気込みが感じられる。

 販路についてはGoogleストアに加え、NTTドコモ、au、ソフトバンクも販売する。当然のことながら、各社共、端末購入サポートプログラムでの販売に力を入れているが、なかでもauは「スマホトクするプログラム」利用時の2年後の実質負担額を5574円に抑えるなど、積極的な姿勢がうかがえる。

「Pixel 8」シリーズを受け継いだ丸みの帯びたボディ

パッケージには端末本体のほかに、USBケーブル、クイックスイッチアダプター、取扱説明書が同梱される

 まずは外観からチェックしてみよう。「Pixel」シリーズの外観は、2021年10月に発表された「Pixel 6」シリーズからデザインを一新し、背面にカメラを内蔵したカメラバーを搭載したデザインが採用され、その後のモデルにも基本デザインが継承されている。

 今回の「Pixel 8a」も同じコンセプトでデザインされているが、実は昨年の「Pixel 8」シリーズも含め、少しデザインに変化が見えはじめている。そのひとつがボディの「丸み」で、本体の角だけでなく、後述するディスプレイなども含め、全体的に角が落とされ、ややコロンとした感じの形状に仕上げられている。こうした変化は昨年発売の「Pixel 8」シリーズにも共通しているが、今回の「Pixel 8a」の方がより丸みを帯びたデザインに仕上げられた印象だ。

「Pixel 8a」(左)は「Pixel 8」(右)にくらべ、一段と丸みを帯びたボディに変更された
「Pixel 8a」(上)と「Pixel 8」(下)を重ねてみると、ディスプレイの角のカーブがより丸まったことがわかる

 また、背面の仕上げも変更されている。これまで「Pixel」シリーズはほとんどの機種でガラスなどを利用した光沢仕上げを採用してきたが、今回の「Pixel 8a」では背面を複合素材(リサイクルプラスチック)によるマット仕上げに変更している。昨年の「Pixel 8」シリーズでは、「Pixel 8」が光沢、「Pixel 8 Pro」がマット仕上げとなっており、「Pixel 8a」は前者の仕上げを継承した形になる。最近、指紋や手の跡が残ることを避けるため、背面仕上げを工夫する製品が増えており、「Pixel 8a」は「Pixel 8 Pro」に続き、追随した形になる。

 「どうせ、カバー付けるんだから、関係ないのでは?」という指摘があるが、クリアタイプのカバーを付け、内側に「推し」やお気に入りの写真などを入れる使い方が増えており、その背景が指紋だらけではよろしくないという考えもあるようだ。

背面は複合素材(リサイクルプラスチック)によるマットな仕上げ
左側面にはピンで取り出すタイプのSIMカードスロットを備える
右側面は電源ボタンとシーソー式の音量キーを備える。他のAndroidスマートフォンと違い、上部側に電源ボタンがレイアウトされているが、慣れてしまえば、気にならない
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。カメラバーの突起も実測で約1mm程度と、少ない
オプションとして販売されている「Pixel 8a Case」を装着。ボディの丸みが少し強調される印象だが、手にフィットして持ちやすい

 サイズについては昨年の「Pixel 7a」と比較して、幅、高さ、厚さのいずれも0.1~0.2mm程度の違いしかなく、重量は約5g、軽量化されている。ただ、前述のように、ボディ形状や前面ガラスの周囲などが丸みを帯びたデザインで仕上げられたため、並べてみると、全体的な印象は少し異なる。

「Pixel 8a」(左)と「Pixel 7a」(右)の前面。ボディ周囲の四隅の形状が変わり、丸みを帯びた形状に仕上げられている
「Pixel 8a」(左)と「Pixel 7a」(右)の背面。ボディ形状の違いがよくわかる。カメラバーに内蔵された広角カメラ超広角カメラもデザインが変更された
カバーを装着した状態の「Pixel 7a」(左)、「Pixel 8a」(中央)、「Pixel 8」(右)

 耐環境性能は昨年の「Pixel 7a」を継承し、IPX7準拠の防水、IP6X準拠の防塵に対応する。昨年の「Pixel 8」や「Pixel 8 Pro」のIPX8準拠の防水対応には一歩譲るが、実用上の大きな差はないと考えられる。

 電源関連では4492mAhバッテリーを搭載し、最大18Wの急速充電(USB PD3.0)に対応する。連続駆動時間は「Pixel 8」や「Pixel 7a」と同じように、「24時間以上持続可能」「スーパーバッテリーセーバー有効で最大72時間使用可能」としており、一般的な利用であれば、十分な連続稼働時間を確保している。Qi規格に準拠した最大7.5Wのワイヤレス充電にも対応するが、完全ワイヤレスイヤホンなど、他のワイヤレス充電に対応したIoT製品などに充電できるバッテリーシェアには対応しない。

6.1インチActuaディスプレイを採用

 ディスプレイは6.1インチのフルHD+(1080×2400ドット表示)対応Actuaディスプレイを搭載する。ディスプレイはOLED(有機EL)で、カバーガラスはCorning Gorilla Glass 3を採用する。スペックとしてはコントラスト比が100万対1、輝度は最大1400nit、ピーク輝度が2000nitと非常に明るく、最大120Hz対応のスムースディスプレイによって、滑らかな表示を可能にする。ただし、[設定]アプリ内の[ディスプレイ]では[スムーズディスプレイ]のオン/オフが設定できるのみで、オンにすると、60Hzから120Hzに自動的に変更されるのみで、他製品の「アイドリングストップ」のような1Hzからの可変リフレッシュレートには対応していない。

[設定]アプリの[ディスプレイ]では[スムーズディスプレイ]や[画面保護シートモード]の設定が可能

 基本的には昨年の「Pixel 8」のディスプレイとほぼ同じ仕様で、対角サイズの0.1インチの違いは、おそらくディスプレイの角の処理が丸くなったことを反映しての表記と推察される。

 ディスプレイには出荷時に保護フィルムなどが貼られていないが、市販品の保護ガラスや保護フィルムを貼付したとき、タッチの感度を上げる「画面保護シートモード」も用意されている。有機ELの特性を活かした「常に表示状態のディスプレイ(Always on Display)」「Google Pixelのスナップショット」「この曲なに?」などの機能もサポートされる。

 ディスプレイの内側には、光学式の指紋センサーが内蔵されており、指紋認証が利用できる。インカメラによる顔認証にも対応するが、マスク装着時のロック解除には対応していない。メガネについては筆者が試した限り、問題なく、利用できている。

マスクを着けた状態で顔認証を試みると、画面最下段のように、マスクを外して、顔全体を見せる旨の指示が表示される

 新しいところでは「ウォッチ認証」が利用できる。昨年12月に「Pixel」シリーズと「Pixel Watch」シリーズの組み合わせで利用できるようにアップデートされたもので、ペアリング済みの「Pixel Watch」のロックが解除されていれば、近くにあるスマートフォンの「Pixel」が利用できるというしくみだ。組み合わせられるスマートウォッチが「Pixel Watch」シリーズに限られているが、iPhoneとApple Watchの組み合わせでも実現されている機能なので、今後、対応するスマートウォッチが拡大すれば、普及していくかもしれない。

昨年12月アップデートで追加されたウォッチ認証も利用できる。対応するスマートウォッチのロックが解除されていれば、端末のロックも解除される。ただし、対応するスマートウォッチは今のところ、「Pixel Watch」シリーズのみ

「Pixel 8」に続き、Google独自開発「Tensor G3」搭載

 チップセットは昨年のフラッグシップ「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」に続き、Googleが独自開発した「Tensor G3」を採用する。「Tensor G3」については「Pixel 8」シリーズ発表時にも説明されているが、4nmプロセスルールで製造され、CPUやGPUのコアが最新のものに更新されたほか、Googleがもっとも重視するAIについては「Pixel 6」搭載の初代「Tensor」に比べ、2倍以上の機械学習モデルを端末上で実行できるとしている。

 パフォーマンスについては米Snapdragon 8 Gen 2に比べ、ベンチマークテストで10~20%ほど、低いスコアが記録されているが、実際に利用しているときに体感できるほどのパフォーマンスの差がなく、各社のフラッグシップに迫るか、それに次ぐクラスの性能を確保していると考えて、差し支えないだろう。

 メモリーとストレージについては、8GB RAM、128GB ROMを搭載する。外部メモリーカードには対応しない。他の国と地域向けではROM 256GBモデルも販売されているが、国内は価格などを考慮してか、ROM 128GBモデルのみが販売される。GoogleフォトやGoogleドライブなどが利用できるため、動画を毎日、何時間も撮影するような使い方をしなければ、128GBのストレージでも不足することはないだろう。もっともそれだけ動画を撮影すれば、今度はGoogleフォトやGoogleドライブのストレージが足りなくなりそうだが……。

 モバイルネットワークについては5G NR/4G LTE/3G W-CDMA/GSMに対応し、5GについてはSub6のみの対応で、ミリ波には対応しない。対応バンドについては国内の各携帯電話会社が販売していることからもわかるように、各社の5G/4G LTEなどの各バンドに対応する。海外メーカーの端末ではNTTドコモに割り当てられた5Gバンドの「n79」に対応しないものが多いが、「Pixel 8a」は昨年の「Pixel 7a」や「Pixel 8」、「Pixel 8 Pro」に続き、「n79」をサポートしており、安心して利用できる。SIMカードはnanoSIMとeSIMのデュアルSIMに対応する。

 Wi-FiはIEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax(2.4GHz/5GHz/6GHz)に対応し、Bluetooth 5.3をサポートする。FeliCaも搭載しているため、Google Payで提供される交通系ICカードやQUICPayなどの各サービスも利用できる。衛星を利用した位置情報の測位機能は、米GPS、露GLONASS、欧州Galileo、日本QZSS(みちびき)、中国BeiDouに対応する。

Android 14を搭載し、発売から7年間のアップデートを保証

 プラットフォームはAndroid 14を採用し、日本語入力はAndroid標準の「Gboard」がインストールされている。「Pixel」シリーズを使うメリットの人として、最新のAndroidプラットフォームとセキュリティアップデートが提供され、Googleの各サービスもいち早く利用できることが挙げられるが、「Pixel 8a」は本稿執筆時点で、2024年5月版のセキュリティアップデートが適用されている。

 また、今回の「Pixel 8a」は、昨年の「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」に引き続き、Androidプラットフォームのバージョンアップとセキュリティアップデートが今後7年間、提供されることがアナウンスされている。スマートフォンの利用期間のロングライフ化に伴い、他のAndroidスマートフォンでもOSバージョンアップやセキュリティアップデートの提供期間を長くする傾向にあるが、「Pixel 8」シリーズ以外に7年間(7世代)のアップデート保証を謳う製品は、サムスンの「Galaxy S24」シリーズなど、ごく一部の機種に限られている。

 長期間のアップデートが保証されることは、端末を長く安心して利用できるだけでなく、端末のロングライフ化でリセールバリューも高まる。それに伴い、各携帯電話会社が提供する端末購入サポートプログラムでも端末回収時の予想価格が高くなり、結果的に契約期間中のユーザーの負担額を減らすことにも寄与している。これらの点を考慮すると、アップデート期間のロングライフ化はユーザーとしても歓迎したいが、現実的に7年後に購入した機種を快適に利用できるかどうかは、また別の話になる。

 Googleをはじめ、各端末メーカーにはアップデート期間の延長ばかりをアピールするのではなく、修理やメンテナンスの環境を整えたり、快適に使うためのノウハウを伝えたり、場合によっては買い替えに適切なタイミングを伝え、旧機種から乗り換えやすくするなどのサポートの充実にも期待したいところだ。

 ユーザーインターフェイスとしてはこれまでの「Pixel」シリーズと同じように、Androidプラットフォームの標準的なものを採用する。上方向へのスワイプでアプリ一覧が表示され、[ホーム]や[戻る]などのナビゲーションモードもジェスチャーと3ボタンを選ぶことができる。ただ、アプリ一覧の画面でアプリをフォルダーにまとめたり、表示するアイコンのグリッドを変更するといったカスタマイズはできない。逆に、壁紙などは「Pixel 8」のレビュー記事でも説明した「AI壁紙」などが利用でき、カスタマイズが楽しめる。

ホーム画面は最下段に検索ボックス、その上にDockが並ぶ。左上の[スナップショット]のウィジェットにはGoogleカレンダーなどの最新情報も表示可能
最上段から下方向にスワイプすると表示される「クイック設定パネル」。右上にはバッテリー残量から予測される利用時間が表示される
ホーム画面を上方向にスワイプすると、アプリ一覧画面が表示される。アプリのアイコンをフォルダーにまとめる機能がないため、アプリが増えると、くり返しスクロールさせることになる
ナビゲーションモードは従来の「3ボタン」と最新の「ジェスチャー」が選べる。ジェスチャーは[戻る]のスワイプをカスタマイズできるが、3ボタンは配列の変更などのカスタマイズができない

 実用面の機能では「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」に引き続き、「通話スクリーニング」が搭載されている。通話スクリーニングは音声通話の着信時、画面に表示される[スクリーニング]をタップすると、端末が代わりに応答し、通話内容を録音できる機能になる。録音した内容は端末に保存され、AIを利用した文字起こしによって、テキスト化される。家族や友だちなど、相手がわかっていれば、そのまま応答すればいいが、見知らぬ相手からの着信は[スクリーニング]で応答しておき、必要であれば、改めて折り返し電話をかけるといった使い方ができる。最近、特殊詐欺などの迷惑電話が問題になっているが、[スクリーニング]を利用すれば、こうしたトラブルを未然に防ぐこともできる。

[通話]アプリの[設定]で設定できる「通話スクリーニング」は、応答時の声を男女で選べる。デモで内容も確認できる

 ただ、回線経由の通話は相手によって、通話品質(音質)が違うため、文字起こしが標準の[レコーダー]アプリに比べ、やや間違いが多いような印象もあった。ただ、これは端末の機能というより、通話品質の部分なので、しかたがないとも言える。

 また、従来の「Pixel」シリーズに搭載されてきた「リアルタイム翻訳」やレコーダーの「文字起こし」など、人気の機能は「Pixel 8a」にも継承されており、快適に利用できる。ただ、「Galaxy S24」シリーズの「Galaxy AI」で実現された音声通話での「リアルタイム通訳」のような機能は搭載されておらず、「Pixel」シリーズでもさらにAIを活かした機能拡充が期待される。

背面に広角/超広角のデュアルカメラを搭載

 カメラについては、背面のカメラバーに6400万画素イメージセンサー(1/1.73インチ)/F1.89の広角カメラ(焦点距離26mm)、1300万画素イメージセンサー/F2.2の超広角カメラを搭載し、前面のディスプレイ上部のパンチホール内には、1300万画素イメージセンサー/F2.2のインカメラを内蔵する。

背面のカメラバーに広角カメラと超広角カメラを内蔵

 メインの広角カメラは最大8倍までの超解像ズームに対応し、超広角カメラは120度の画角での撮影が可能で、光学式および電子式の手ぶれ補正、レンズ補正などの機能も備える。撮影モードとしては、カメラアイコンを選んだときの静止画で「写真」「ポートレート」「夜景モード」「パノラマ」「長時間露光」、ビデオアイコンを選んだときの動画で「動画」「パン」「スローモーション」「タイムラプス」をそれぞれ選ぶことができる。「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」に搭載されていた[プロ]モードは用意されていないが、[カメラ]アプリの[設定]-[その他の設定]-[詳細設定]で[RAW/JPEGコントロール]をオンにすれば、撮影した写真をRAW形式とJPEG形式の両方で保存することができる。

カメラのファインダー画面。最下段中央部分のアイコンで、静止画と動画を切り替える。左下のアイコンで設定が可能。右下のアイコンで明るさやシャドウ、ホワイトバランスを設定できる
カメラのファインダー画面の左下のアイコンをタップしたときに表示される[写真の設定]。[RAW/JPEGコントロール]を有効にすれば、この画面に[RAW/JPEG]の項目が追加表示される
カメラの[設定]から[その他の設定]を選ぶと表示される[カメラ設定]の画面
ポートレートで撮影。背景は自然なボケ。右側からの太陽光で、顔は少し影になっているが、にこやかな表情が映されている。モデル:望月ゆうり(X(旧Twitter):@Tiara00107Instagram:@mochi.yuri_、所属:ボンボンファミン・プロダクション
インカメラで撮影。インカメラは固定フォーカス対応だが、ポートレートでも撮影が可能
超広角カメラで撮影。空はあまり青さが強調されていない自然な仕上がり

 撮影した写真や動画は、Googleフォトと連携した[フォト]アプリで確認できる。これまでの「Pixel」シリーズでおなじみの「消しゴムマジック」をはじめ、「Pixel 8」「Pixel 8 Pro」で新たに搭載された「編集マジック」「ベストテイク」「音声消しゴムマジック」なども搭載されている。「Pixel」シリーズの名を広めるきっかけとなった「消しゴムマジック」は、既報の通り、他のAndroidスマートフォンでもGoogleフォトで利用できるようになり、各スマートフォンの編集機能も充実してきたため、ややアドバンテージが薄れた感もあるが、やはり、「撮る」だけでなく、「編集する」楽しさは「Pixel」シリーズならではのものであり、今後も多彩な編集機能を増やしていって欲しいところだ。

おなじみの「消しゴムマジック」も利用可能。対象がすぐに検索され、操作も簡単なので、ビギナーにもわかりやすい
「ベストテイク」は他の写真から顔の候補を抽出し、合わせることが可能。複数人の撮影だけでなく、1人の写真でも利用できる

デザイン、AI、価格で、定番モデルへ突き進む「Pixel 8a」

 改めて説明するまでもないが、国内の携帯電話市場はアップルのiPhoneが半数近いシェアを占めている。しかし、ここ数年のiPhoneは性能や機能と価格のバランスが取れておらず、売れ筋も普及価格帯の「iPhone SE(第三世代)」や型落ちモデルに移行しつつある。

 その一方、この2年ほどの間に、着実に国内市場に浸透してきたのがGoogleの「Pixel」シリーズだ。2021年に発売された「Pixel 6」シリーズで独自開発のチップセット「Tensor」をはじめて搭載し、「消しゴムマジック」など、AIを利用した機能を積極的にアピールしたことで、市場での認知を向上させ、着実にシェアを拡大している。なかでも普及価格帯の「Pixel a」シリーズは、多くのユーザーが買いやすい価格帯を設定する一方、各携帯電話会社の積極的な販売施策によって、ときには「破壊的」とも言える価格で販売され、SNSなどで話題になることも増えている。

 今回発売された「Pixel 8a」は昨年秋に発売された「Pixel 8」と「Pixel 8 Pro」と同じチップセット「Tensor G3」を搭載し、「編集マジック」や「通話スクリーニング」など、AIを利用した多彩な機能を搭載しながら、7万円台というリーズナブルな価格を実現している。ハードウェアとしても機能的にも完成度が高く、価格を上回る性能や機能を持ち合わせ、多くのユーザーが手にして、存分に楽しめる端末に仕上がっていると言えそうだ。欲を言えば、AIを利用した機能をもっと増やし、ユーザーが実感できるユーザビリティを実現して欲しいところだが、今後の進化を期待しながら、待ちたい。

 昨年の「Pixel 7a」の好調な売れ行きを鑑みれば、今回の「Pixel 8a」はAndroidスマートフォンの「定番モデル」的な存在になっていくのかもしれない。店頭のデモ機を手に取り、ぜひ一度、その仕上がりをチェックしていただきたい。