特集:5Gでつながる未来

透明な板でミリ波を反射、ケーブルを曲げるとアンテナに早変わり――5G展開に向けた技術をドコモが披露

 NTTドコモは、5G時代に向けた技術を披露するイベント「DOCOMO Open House 2020」を1月23日、24日に東京ビッグサイト青海展示棟で開催する。

 同イベントでは、VRやARを活用したサービスや次世代のAI機能、産業IoTなど、多方面の新技術に関する展示が行われる。5Gの通信技術についても展示エリアが設けられており、2020年春の5G商用化、そして早期の全国展開に向けて、エリア展開を効率的に進めるためのアイデアが見られる。

会場には可搬型基地局が設置され、一部の展示では実際に5Gを利用する

ミリ波のためのエリア拡張技術

 5Gの初期段階で使われる電波の周波数は、6GHz未満の「サブ6」と数十GHzの「ミリ波」の2つに大別できる。どちらにしてもこれまでのモバイル通信に使われてきた周波数よりも高く、直進性が強い。特にミリ波のエリアを広げるにはさまざまな工夫が必要になる。

 建物に遮られやすい都市部などでは、直進性の高いミリ波を基地局から見通せない場所にも届けるには反射波の活用が重要ということで、リピーター(中継器)のほか、電力供給を必要としない反射板も利用する。

手前の2台はリピーター、奥の白い板はメタマテリアル反射板

 上の写真にある2台の機器はいずれもリピーターで、後ろに写っている白色の正方形の板は「メタマテリアル反射板」。一見するとただの板だが、内部には小さな構造体がアレイ状に配置され、電波の反射角を変えて設計できるため、設置場所の自由度が上がる。

 表面は白色でなくても良く、景観に配慮して建物の外壁に合わせることもできるほか、広告と反射板を一体化させて設置コストを抑える手法も考えられている。

反射と透過を使い分けられる透明な板

 先述のメタマテリアル反射板は、設置角度や景観といった観点では街中に5Gのための反射板を設置するハードルを下げられるアイデアである一方、設置場所にあわせて反射角の設計を行わなければならないという弱点もあるという。

透明動的メタサーフェス

 そこで、同じく景観を損ねない反射装置として別のアプローチで開発された「透明動的メタサーフェス」が登場する。枠の部分に組み込まれた装置を除けばほぼ透明の板で、建物の窓などに組み込める。

 さらに、この装置は必要に応じて反射と透過を切り替えられることが特徴。たとえばオフィスの窓に設置した場合、日中は室内にも電波を通し、夜間や休日は市街地のエリア強化のために反射板として使える。

信号機や電柱に貼れるフレキシブルアンテナ

基地局用5Gフレキシブルアンテナ

 一見、電柱の一部のようなこの板は、「基地局用5Gフレキシブルアンテナ」という物。柔軟性がある薄型のアンテナで、街灯や信号機などにアンテナを貼り付けられる。利用イメージとしては街中に多数設置して協調させ、ユーザーのいる場所に電波を向ける。フレキシブルアンテナ自体の検討はAGCと共同で進められ、このアンテナを利用する基地局の検討にはエリクソンも参加している。

曲げるとアンテナ、伸ばすとケーブル

曲げてアンテナ。これこそ“5Gのケーブル”のようなものか

 「曲げてアンテナ」は、工事現場や展示会場など、一時的に5Gサービスを提供したい場所を迅速に簡易エリア化できる設備として構想されている。

 誘電体導波路を使用したケーブルで、伸ばした状態では伝送路となり、曲げるとその部分だけがアンテナとして動作する。曲げる場所や角度を変えれば5Gエリアを簡単に移動させることができ、ミリ波を使ったスポットでのエリア構築を低損失で行えるツールとして検討しているという。