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KDDI総研と名工大、テラヘルツ帯マルチビームアンテナの開発に成功

 KDDI総合研究所と名古屋工業大学は、テラヘルツ帯で電波の放射方向を変更できるマルチビームアンテナの開発に成功した。Beyond 5G/6G時代において、超高速・大容量通信の実現への貢献が期待される。

 今回開発された技術は、5月25日~27日に東京ビッグサイトで開催される「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2022」において、KDDI総合研究所のブースで紹介される予定。

 今回開発されたのは、アンテナ性能を示す指標「利得」が高い、高利得なマルチビームレンズアンテナと、小型な平面型マルチビームアンテナの2種類。

 両アンテナとも、テラヘルツ帯(300GHz帯)において、60度の角度(アンテナ正面を0度とし、プラスマイナス30度)でビーム方向を変更できる。

高利得なマルチビームレンズアンテナ

 高利得なマルチビームレンズアンテナは、レンズと1次放射器(ホーンアンテナ)で構成され、接続するホーンアンテナを切り替えることでビーム方向を変えられる。

 レンズには、テラヘルツ帯で誘電損失の小さい素材が選定された。また、レンズ形状とホーンアンテナの配置の最適化により、ピーク利得が27dBiになった。これは、全方向に同じ電波強度で放射する等方性アンテナと比較して約500倍の数字だという。

 また、60度の範囲で利得が22dBi以上となり、これは等方性アンテナと比較して約160倍となっている。

小型な平面型マルチビームアンテナ

 小型平面マルチビームアンテナは、マイクロストリップコムラインアンテナとビーム形成回路で構成され、ビーム形成回路の接続ポートを切り替えてビーム方向を変更する。

 アンテナとビーム形成回路を層状に重ねた構造により、大きさが25×17×2mmとなり、小型化を実現した。

今後の展望

 KDDI総合研究所と名古屋工業大学は、Beyond 5G/6G時代向けの技術として、端末が周辺デバイスとテラヘルツ帯で協調し、各デバイスに搭載されたアンテナを仮想的に束ねてひとつの端末として動作する「仮想化端末」を提案している。

 今回開発されたアンテナによって「仮想化端末」の実現に一歩近づき、Beyond 5G/6Gで求められる超高速・大容量通信の実現が期待される。

 両者は今後、さらに広い角度にビーム方向を変更可能なアンテナの開発を進めていく。また、開発したアンテナを用いて、「仮想化端末」の実現に向けたテラヘルツ帯の実証実験を進めるとしている。