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KDDIがこだわる「モバイル通信できるドローン」ソリューションとは

 KDDIとKDDI総合研究所では、「モバイル通信ができるドローン」いわゆるスマートドローンの開発や活用したソリューションを展開している。

 同社のドローンの強みはどのようなものか。KDDI事業創造本部ビジネス開発部ドローン事業推進グループマネージャーの松木 友明氏と、KDDI総合研究所イノベーションセンターマネージャーの川田 亮一氏、同課長補佐の西谷 明彦氏が、ドローン事業や新しい取り組みについて説明した。

スマートドローンで目指すもの

 松木氏は、ドローンがモバイル通信でつながることで「新たな価値を作ることができる」とし、例として「買い物に行けないユーザーに商品を配送する」ことや「災害時の監視業務」、「危険な場所の設備点検」など「ひとつひとつの想い」を叶えられるという。

 これらの想いを実現するために、KDDIでは目視外自立飛行(操縦者が現場にいなくてもドローンが自立飛行するもの)を実現する「スマートドローンプラットフォーム」を開発している。

 このプラットフォームでは、現在位置や発着地点を正確に把握するための「高精度測位」や、上空の状況を確認するための「ドローン用気象情報」、飛行ルートを作成し遠隔で監視する「飛行制御」、人物の検知や設備点検時のヒビやサビの確認などを行う「AI解析」といったものをオールインワンで提供するという。

 目視外自立飛行は2022年に解禁となるが、ドローンの運行管理システムの実証検証事業を同社は受託しているといい、解禁時に向けてプラットフォームの提供や、政府が主導するレベル4目視外飛行実現に向けて取り組みを進めている。

地方での配送やインフラ監視ソリューション

 KDDIでは、2020年8月に全国初の自治体配送サービスの商用提供を伊那市で開始。また、都市部や離島間、災害時の物流について目視外自律走行で「さまざまな届けたい」を叶えるとしている。

 インフラ被害状況確認ソリューションでは、地震発生後など鉄道などのインフラの点検を、遠隔での飛行指示とリアルタイムで監視することで「現場に行かなくても点検できる」ため、早期復旧を実現する。

 監視ソリューションではこのほか、沿岸や河川監視、山岳救助にも活用できる。

風力発電の遠隔点検

 これまでの風力発電設備の点検は、高さ100mを超えることもある設備に登って点検するため、作業者2人で1日がかりで点検する必要があり高コストとなっていた。コストだけでなく、高所での点検であるため安全性が課題なほか、作業員スキルに依存した点検精度などが課題となっていた。

 KDDIは、Jパワー(電源開発)からドローンによる風力点検業務を受託し、ドローンによる「オールフライト撮影」や「損傷個所AI解析」を行った上で自動でレポートを作成するソリューションを提供した。

 ドローンによる施設点検は、これだけでなく通信鉄塔や送電線鉄塔、ダムや高所プラントの点検にも活かされていく。

測量ソリューション

 KDDIは、高精度測位技術をもつ「JENOBA」と解析ソフトを手掛ける「国際航業」、「アイサンテクノロジー」と連携し、スマートドローンによる測量ソリューションを提供する。

 測量ソリューションでは、スマートドローンによる撮影から、撮影画像を測量用途に合わせてデータ変換し、出来型管理図など公共測量にも対応した成果物をワンストップで作成するもの。

 測量ソリューションでは、これ以外にも森林資源調査や橋梁修繕などへの活用、災害時の地形調査なども実現できるとしている。

スマートドローンのラインアップと水空合体ドローン

 KDDIでは、用途にあわせてスマートドローンを5機種ラインアップしている。

 今回は、これに加え水面に離着水でき、子機による潜水ができる「水空合体ドローン」を開発し、ラインアップに加わった。

 水空合体ドローンでは、目的地まで自立飛行し、到着後子機が親機から分離し潜水を開始、水中映像を水面に浮かぶ親機を通じてモバイル通信で遠隔監視/操縦できる。

 水空合体ドローンは、水産漁場や養殖場の監視やダムなどの設備点検などへの活用を想定している。

自律走行で監視センターと通信が切れても大丈夫?

 今回のスマートドローンによるソリューションでは、監視センターなど遠隔地でスマートドローンを一括で監視制御するソリューションを提供する。

 万一、監視センターとスマートドローンとの通信が切れてしまった場合、ドローンは路頭に迷うことはないだろうか?

 筆者の疑問に松木氏は「安全な場所に自動で着陸するようになっている」と回答。ドローンの飛行ルートを作成する際に、安全に着陸できるポイントをいくつか設定しておき、通信が切断してしまった場合など、有事の際はそのポイントや目的地まで飛行し、自動で着陸するようなシステムとしているとのこと。

 KDDIとKDDI総研は今後もスマートドローンによるソリューションの実用化に向けて、実証実験を重ねるなど取り組みを続けていくとしている。