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ドローンの商品配達を実現、KDDIと伊那市が「ゆうあいマーケット」

 KDDIと長野県伊那市は、ドローンで商品の配達を行う「ゆうあいマーケット」を伊那ケーブルテレビジョンを主体として提供を開始した。

 ゆうあいマーケットはドローンにより、注文された商品を配送するサービス。注文は、伊那市で加入率の高い伊那ケーブルテレビジョンのシステムを活用。注文時には、ケーブルテレビの画面から操作する。午前11時までに受注された商品はその日の夕方までに届けられる。

 地域主体のドローン配送サービス、ケーブルテレビによる物流システムは日本で初の例。

 ドローンは、商品を近隣の公民館まで配送。利用者はそこまで受け取りに行くことで買い物が完了するが、公民館での受け取りが難しい場合はボランティアの手で配達される。商品代金はケーブルテレビの利用料とともに口座引落になるため、手間がかからない。

 サービスエリアは、伊那市長谷地域の非持、溝口、黒河内、中尾区。エリアは順次拡大していく予定。利用料金は、利用者は月額1000円に加えて購入した商品代金となる。

最終的に300品目の取り扱いに

 伊那市による調査では、同市におけるいわゆる「買い物難民」は、今回サービスエリアとなった長谷地区においては44%と他地域にくらべて圧倒的に高い。市全体でみても28.1%が買い物に不便を感じているという。中でも特に不便を感じる商品では、食料品や衣類が多く挙げられていた。加えて品目の多様さや商品を見て選べることを重要な要素として推す声が多い。

 ゆうあいマーケットでは、そうしたニーズもカバーすべくテレビ画面に商品写真を映し出し、選べるようになっており商品数については当面は100品ほどだが、最終的には毎月300品ほどを取り揃えることを目標とする。

 注文のシステムを提供する伊那ケーブルテレビジョンは、「ICTライフサポートチャンネル」の名称で地域住民の生活に関わるサービスを展開している。今回のゆうあいマーケットはそのひとつという位置づけ。他にはオンデマンドタクシー(サービス提供中)、病院の予約(実証実験中)、みまもりサービス(20年中にスタート)がある。

ドローンは無人操縦

 サービスに用いられるドローンはいわゆる「スマートドローン」と呼ばれるもの。通常は人間の操縦で有視界飛行のみというのがドローンだが、今回使われるものは、KDDIの4Gネットワークに対応。それを用いて完全に無人で規定のルートを飛行する目視外自律飛行が可能となっている。飛行を担当するのは、一般社団法人 信州伊那宙。

 基本的には人が操縦に介入しないため、パイロットの操縦ミスによる事故がなく、人的コストの削減にもつながる。今回のゆうあいマーケットの取り組みには、運行に必要なもの一式がワンストップでKDDIから提供される。

 KDDI 理事 経営戦略本部副本部長の増田晴彦氏は「地元での継続的な利用には、地元の人が運用していくのが一番」と説明、地元で運営を賄うことの重要性を語る。なお、運用に必要なサポートはKDDIからも提供される。

 使用される機体は、プロドローン製の「PD6B-TypeIII」。今回のために開発されたというもので、実証実験を通じて、プロペラの収納機能やバッテリー着脱の簡易化などの改良がなされた。5kgの貨物を搭載した状態で道の駅~中尾座間の約7kmのルートを補給無しで飛行できる。最大速度は60km/h。

 管理用のアプリケーションからは、フライトプランの設定や搭載されるカメラからの映像の監視、必要に応じて手動での操縦もできる。

 ルート策定については、リスクを考慮して、河川上空を中心としたルートが選ばれた。「補助者無し目視外飛行」の要件に基づく承認を得ているが、離着陸地点には監視役の人員が配置されている。