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KDDI、最大1000機のドローン運航を管理できる管制システム、21年度中運用開始へ

 KDDIは、ドローンのレベル4運航を実現する、KDDI スマートドローンの管制システムを開発した。2021年度中の運用を目指す。

 市街地などの人がいる場所の上空を目視外飛行するレベル4運航を実現するためのシステムで、ドローンの運行事業者が複数のドローンが飛行する場合でも、衝突回避などの飛行管制を行えるもの。今後、ドローンの普及には市街地での目視外飛行ができるレベル4運航の実現が必須とされている。

衝突回避やより手軽なドローン運用をサポート

 今回の取り組みは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からKDDIが受託した実証事業の一環。

 KDDI 経営戦略本部 ビジネス開発部 ドローン事業推進グループ マネージャーの杉田博司氏は「レベル4の実現には、市街地上空でも自立飛行できる高い安全性が必要」と語る。

 そのため、レベル4運航では、多数のドローンが密集して飛行することが想定され、自社管理の機体のみならず、他事業者のドローンや有人のヘリコプターとの距離も含め、常にドローンの飛行の安全性が確保される必要性がある。

 KDDIが今回開発した管制システムは、KDDI スマートドローンや他社の制御システムで飛行するドローンの情報を収集し、全国で保有するドローンを統合的に管理できるもの。すでに商用展開している運行管理システムの上位システムにあたる。

 同時に最大で1000機ほどのドローンの同時管制が可能で、それぞれの機体について位置情報、高度、速度、運航社、フライトプランを確認できる。

 ドローン同士が接近するとその距離に応じて段階的なアラートが表示される。ドローン以外にも有人ヘリコプターの運行情報も表示でき、ヘリコプターの進行方向にドローンが飛行している場合は、同じく接近している旨がアラートとして表示される。

 航空法では、有人機が優先とされており、災害時などヘリコプターが密集する場所でもドローンに回避指示を出すといった事が可能で、目視に頼る現在に比べて、安全運行を可能にする。将来的には、管制システムから情報を受け取った運行管理システム側で自動回避する仕組みを目指すという。

 また、杉田氏によるとドローンの飛行に必要な各種手続きは、現状ではメールなどを用いて連絡を取り合っているという。そこで、将来的にはこのシステムを用いることで各種申請などの簡略化を実現。各種パブリックシステムと管制システムを連携させ、ユーザーがより手軽にドローンの運用ができるようにする。

 ネットワークは基本的に地上でスマートフォンなどを使うことを想定した一般的なものを使用しており、杉田氏によると100m程度の高度であれば、問題なく対処できるという。

 今後、ドローンがより一般的になり特定の航路を作るなどの計画が出た場合は、それに適した設備投資を行っていくとした。加えて、携帯電話基地局はあくまで地上で使うことを前提とした「陸上無線局」という扱い。上空での無線の扱いも今後、総務省と整理していくことが必要ではないかと語る。

レベル4実現で新たな市場開拓

 航空法では現在、レベル4運航は認められていないものの物流業界などからのニーズに対応するため国土交通省主体で要件検討が進められているという。KDDIでは、レベル4の実現により物流や警備業界などで市場が形成されると見ている。

 「KDDI スマートドローン」とは、4Gや5Gなどモバイルネットワークに対応したドローンのこと。従来のものよりも長距離の飛行が可能で、操縦者が不要なためより低コストで運用できるのが特徴。これまで人が行っていた作業を代替させることで、人口減少が進む国内産業における省人化を支援する。

 これまでも長崎県伊那市において、日本初の定期運行を開始しており、スマートドローンをユーザー自ら運用できる「お客様運用メニュー」も商用提供を開始している。

課題を洗い出し、21年度中に

 KDDIでは、2021年3月7日に今回の管制システムの運用検証のために宮城県、三重県、兵庫県の3カ所で同時運用の実証を行った。

 実証では、播磨科学公園都市で4事業者が4期を、志摩では災害を想定し、多数の有人機とドローンが協調するというシナリオで、有人機接近時に無人機運用者への回避指示などの検証を行った。

 杉田氏によると、今後の課題としては運用フローの簡素化のためのパブリックシステムとの連携の深化。さまざまな実証などを進めてはいるが「まだドローンを飛ばすためには、申請・手続きや自治体との調整が発生しているのが実情」という。今後は、官民連携で簡素化を目指していくとした。

 また機能面では一通り揃っているとしつつ、運用面では体制や運行管理システムとの役割や連絡手段の確立を課題とした。

 今後は、全国規模で行う地域実証で多くのユーザーとともに社会実装にむけての課題を洗い出し、制度動向に合わせつつ2021年度中の実用化を目指していくという。杉田氏は「さまざまな業種のユーザーなどと必要な機能を発展させ、レベル4運航の標準的プラットフォームとなるよう目指していく」と語った。