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【第1018回】なぜ空が見えればスマホそのままで衛星と通信できるの? D2Cの仕組みと使い方

 2026年3月現在、「空が見えればつながる通信」として、KDDIの「au Starlink Direct」が提供されています。このようにスマートフォンが衛星と直接通信する仕組みは「D2C(Direct to Cell)」と呼ばれます。

 今後は、楽天モバイルの「Rakuten最強衛星サービス」、ドコモやソフトバンクからも提供が予定されており、普及が進むと見られています。

D2Cってどんなときに必要?

 大規模災害を考えてみましょう。地上の基地局が被災すると、通信は途絶えてしまいます。一方、宇宙の衛星は影響を受けにくく、通信手段として機能し続けます。

 ただし、従来の衛星電話は高額で、個人が常時利用するのは現実的ではありませんでした。

 その点、D2Cは普段使っているスマートフォンがそのまま衛星と通信できるのが特徴です。特別な機材や追加契約なしに、いざというときの連絡手段を確保できます。

 また、山間部や離島など圏外になりやすい場所でも通信できるため、登山やアウトドア用途でも大きなメリットがあります。

D2Cで何ができる?

 現在のサービスでは、SMSやiMessage、X、Messenger、WhatsAppなど、テキスト中心の通信が利用できます。通信容量は小さく、動画のような大容量通信には向きません。

 その代わり、登山アプリや防災アプリ、見守りサービスなど、「圏外でこそ必要になる用途」に特化したアプリが利用できます。

 これまでスマートフォンは、地上の基地局の電波が届く範囲でしか使えませんでした。しかし、衛星から電波を送ることで、「空が見えればつながる」という新しい通信の形が実現したのです。

なぜスマホそのままで衛星と通信できる?

 従来の衛星電話と違い、D2Cが普通のスマートフォンで利用できる理由は大きく2つあります。

 1つは、衛星との距離です。

 静止衛星(約3万5800km)ではなく、数百km程度の低軌道衛星(LEO)を使うことで、電波の届きやすさが大きく改善されています。

 もう1つは、衛星側の性能です。

 D2Cでは、衛星が「空飛ぶ基地局」として機能し、大型アンテナでスマートフォンの微弱な電波を受信します。つまり、スマホ側を変えるのではなく、衛星側を高性能化することで通信を成立させているのです。

2026年末には常識が変わる?

 現在はKDDIからのみの提供ですが、2026年末には主要キャリアすべてでD2Cが利用できるようになる見込みです。

 「圏外だからつながらない」という前提は、今後変わっていくかもしれません。災害時でも連絡が取れる安心感はもちろん、山間部や離島といった日本の地理的な弱点を補うインフラとしても期待されています。

 スマートフォンの通信は、地上から宇宙へと広がりつつあります。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)