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Suicaが「タッチ不要」のウォークスルーへ、JR東日本がUWB活用の次世代改札機を公開
2026年5月14日 18:34
JR東日本は、5月13~14日の2日間にわたって、東京・高輪ゲートウェイにおいてイベント「GATEWAY Tech TAKANAWA 2026」を開催した。
イベントでは、同社が開発を進めているUWBを採用した次世代の自動改札機がデモ展示され、実際に利用できる状態で一般公開された。
同社では2027年春のなるべく早いタイミングで、高輪ゲートウェイ駅や品川駅などの5駅からなる「広域品川圏」において実証する計画だ。
Suicaがタッチからウォークスルーに進化
JR東日本は、FeliCaをベースにした交通系ICとして「Suica」を展開しているが、このSuicaをさらに進化させる戦略として「Suica Renaissance(suicaルネッサンス)」を発表している。
今回のウォークスルー改札はその一環で、スマートフォンに搭載した無線技術であるUWB(Ultra-Wideband)を使うことで、従来のように改札機に「タッチ」をしなくても、そのまま改札を素通りできるようになる。
実際のウォークスルー改札では、市販のAQUOSスマートフォンを改造してデモ用のUWBに対応した端末を使用。アプリケーションが改札機側のUWBアンテナとの距離をセンチメートル単位で計測しており、スマートフォンを手に持った状態でそのまま改札機を通過できた。
ポケットや手提げカバンに入れた状態でも通過できるため、スーツケースなど荷物が多い場合や、ベビーカー、車椅子などの利用時においても、そのまま通過できる点が大きなメリットとなる。改札機側は既存の設備にアンテナを増設するだけで済むため、改札機の交換といった大規模な変更を伴わずに対応できるのも特徴だ。
ウォークスルー改札の本命
同社がこのUWBを「ウォークスルー改札の本命」と位置づけるのは、高速な処理が可能だからだ。
ウォークスルー改札としては、複数の事業者が顔認証にチャレンジしている。同社も新幹線の改札で顔認証改札の実証実験を行っているが、通勤ラッシュ時などに膨大な人数を処理する必要がある首都圏のターミナル駅においては、現時点の顔認証では対処できないと判断。
それに対してUWBは、従来と同じ速度で早足ぐらいであれば問題なく処理できるスピードがあり、大量の人数をさばくことができる。
同社では、すべての改札機をUWBに置き換えるのではなく、地方では位置情報を用いるなどしてウォークスルー改札を実現する方式も検討しており、適材適所で技術を活用していく考え。
UWBは無線技術であり、従来の交通系ICを代替するわけではない。当面は従来の「Suicaアプリ内の電子マネーや定期券情報を、FeliCaを使って改札にタッチして送信する」方式に加え、「同じSuicaアプリ内のデータをUWBで送信する」という新方式が追加される見込み。
これにQRコードや顔認証など、複数の方式を組み合わせることで、ユーザーの利便性を担保しつつ、新たなウォークスルー改札の実現に向けて展開していくのがJR東日本の考えだ。
さらに、UWBは国際的な標準規格としてFiRa Consortiumが仕様を策定しており、同社やソニーなど、主要な事業者が参加している。国際的な標準仕様でもあるという点も、同社がUWBに注力する理由の1つだ。
現在はiPhoneやPixelなど、一部の高級スマートフォンに搭載されている例が多いが、世界的にもUWBの用途やニーズは増えており、今後採用が増え、チップ価格が下がれば、安価な端末にも搭載されるようになることが期待されている。
UWBに対応したスマートフォンがどれだけ増えるかが、普及の鍵となる。そのため、まずは既存のFeliCaによるタッチも併用しながら、順次展開していく方針だ。現時点で、「すべての改札機でUWB対応にする」かどうかは決まっていないとのことで、まずは広域品川圏での実証実験などを踏まえて検討を行う。
JR東日本では、「Suica」を今後もブランドとして継続していく考えで、SuicaはFeliCaのタッチでもUWBでも、無線規格を問わずカバーした世界観を想定し、Suicaをさらに進化させていきたい考えだ。
交通だけでなく店舗決済もUWBで?
JR東日本は、今回のイベントではウォークスルー改札に関する展示のみだったが、デモ展示会場では、ソニーによる「UWBを使った決済」の技術デモも行われていた。
これは、Suicaに保管した電子マネーをUWBを使ってレジ端末に送信して決済を行うというデモで、1m程度の距離からスワイプして決済できた。
UWBによって、スマートフォンとレジの距離、方角が正確に判断できるため、確実に決済が行えるというのがUWBのメリット。今回のデモでは、手動でスワイプして支払いを行うほか、レジにスマートフォンを近づけるだけで支払いも可能で、従来のSuicaのタッチによる支払いと同様の体験が実現できていた。
これはあくまでソニーによるデモンストレーションであり、JR東日本側も現時点では店舗決済の導入を明言していないが、JR東日本はFiRa Consortiumによる標準規格を採用する考えを示している。
FiRa Consortiumはクレジットカードの業界団体であるEMVCoとも協働しており、クレジットカード業界がUWBに対応してレジ端末などが整備された際には、UWB対応Suicaでそのまま決済もできる可能性はある。
JR東日本では、まずは2027年春の早い時期に実証実験をスタートし、UWBの実現性を検証していく考えだ。この実証実験の内容は現在検討中で、一般公募も想定する。対応スマートフォンが何になるか、必要に応じて端末を貸し出すか、といった点も含めて検討しているという。







