ケータイ用語の基礎知識

【第1023回】つながらないからこそ速くて安心、「オンデバイスAI」がスマホを“思考の相棒”に変える

 日々の生活や仕事の中で、年々存在感を増す「AI」。Webブラウザやアプリケーションから手軽に使えることもあり、お世話になっている人も多いのではないでしょうか。インターネットを通じて、巨大なデータセンターの能力で応える一般的なAIに並び、より実用的な存在になりつつあるのが、たとえ通信ができなくても使える「オンデバイスAI」です。

 では、オンデバイスAIとは一体どんなものなのでしょうか?  今回はAIの新たな形態であるオンデバイスAIの概要やどんな時に便利に使えるのかを解説します。

オンデバイスAIは、AIそのものを端末内に収めており、レスポンスも速く、プライバシーの観点でも扱いやすい。(イラストは、筆者がChatGPTにて作成)

オンデバイスAIとは? いわゆる「AI」と何が違う?

 オンデバイスAIとは、スマートフォンやパソコンなどの端末(デバイス)内部でAI処理を完結させる技術のことです。端末内の処理装置を使い、データを外部に送らず、その場で解析や推論を行います。

 現在「AI」といえば、ChatGPTやGeminiのようなクラウドAIを思い浮かべる人が多いでしょう。これらはインターネット上のサーバーで処理が行われ、端末はその結果を受け取る“窓口”として機能しています。これに対してオンデバイスAIは、AIそのものを端末内に収めている点が大きな違いです。

「オンデバイスAI」のメリットと制約

 オンデバイスAIの特徴は、通信を必要としないことです。これにより、いくつかの利点が生まれます。

 まず、レスポンスの速さです。クラウドAIでは通信の待ち時間が発生しますが、オンデバイスAIではその場で処理が完結するため、音声認識や画像処理などで即時に結果を得られます。

 また、データを外部に送らないため、プライバシーの観点でも扱いやすいのが特徴です。個人情報や音声、画像などを端末内に留めたまま処理できるため、機密性が求められる用途にも適しています。

 一方で、端末内で動作する以上、処理能力や扱えるモデルの規模には制約があります。精度や知識量の面ではクラウドAIに分がある場合も多く、用途に応じた使い分けが前提となります。

 ただし、使い始めること自体はとても簡単です。「Google AI Edge Gallery」というアプリをスマートフォンにインストール。リストから好きなモデルを選んでダウンロードすれば、無料で誰でもオンデバイスAIデビューできるのです。

オンデバイスAIはどう使う?

 オンデバイスAIの価値は、「オフラインでも使えること」だけではありません。本質は、AIが“待たずに応答する存在”になった点にあります。

 その特性を生かした使い方として考えられるのが、「思考の外部化装置」としての活用です。日記やメモ、過去の文章などを蓄積し、自分の思考や言い回しの癖を学習させる。いわば「自分専用AI」として使うという考え方です。クラウドAIでは預けにくい個人的な情報でも、端末内で完結するオンデバイスAIなら扱いやすい領域といえるでしょう。

 また、リアルタイムで思考を補助する使い方も考えられます。たとえば、その場で言い回しを整えたり、文章をリライトしたり、会話の要点をまとめたりといった用途です。待ち時間がほとんどないため、思考の流れを止めずに使える点が特徴です。

 さらに、カメラと組み合わせた活用も進んでいます。撮影した画像をその場で解析し、翻訳や要約、意味づけを行うことで、目の前の情報に対する理解をリアルタイムで補助します。

 こうしてみると、オンデバイスAIの強みは、ユーザーの思考や行動をその場で支援できる点にあるといえます。クラウドAIが「知識を引き出す道具」だとすれば、オンデバイスAIは「思考に寄り添う相棒」としての役割を担い始めているのかもしれません。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)