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渋谷に次世代通信基盤「IOWN」導入、仕事・娯楽の広がりに期待――NTTら3社

 NTTとNTTドコモ、東急不動産の3社は東京都渋谷区にの複合施設「Shibuya Sakura Stage」で「APN IOWN 1.0」を導入した。IOWN(アイオン)は、NTTがリードする次世代のネットワーク基盤であり、まちづくりでのIOWN導入は初の事例になるという。

左=東急不動産ホールディングス 植村氏。右=NTT 川添氏

まちづくりにIOWN導入

 NTTグループと東急不動産は、6月にIOWNの技術やサービスを活用したまちづくりで協業を発表しており、今回のShibuya Sakura Stageでの取り組みはその第一歩。APN IOWN 1.0は、IOWN構想における最初のサービスで、従来よりも低遅延での通信を実現。これまでの、インターネット回線では難しかったサービスなどが実現できるようになる見込み。

 13日に都内で開かれたイベント「IOWN WEEK」では、お笑い芸人らがIOWNと一般のインターネット回線の性能差を体感。ヨネダ2000の2人は、モニター越しに発表会の会場と遠隔地という距離的な差を超えて、息のあったネタを披露した。

 12月15日まで「IOWN WEEK」では法人向けに、高精細な4K映像でのビデオ会議などを体感できる。

 NTTグループと東急不動産の両社は、今後もIOWNを活用し東急グループが定める「渋谷広域圏」を中心とした次世代のまちづくりを進めるとしている。

IOWNで次世代支える

 NTT 代表取締役副社長の川添雄彦氏は、かつて日本企業が世界を席巻していた時代をリアル世界が重要視された「質の論理」の時代と表現。しかし、その後は中国など強大な市場を持つ国が台頭した「数の論理」に移り変わり、日本は苦戦を強いられていると認識を示す。

 そのうえで今後をリアルとバーチャルが交わる「価値の論理」の時代になると予測を示し、IOWNはそれを支える技術になると語る。IOWNの構想には国内外含めたさまざまな企業が参画しており、渋谷区は唯一、自治体としてIOWNに携わっている。

 東急不動産ホールディングス 代表取締役 副社長執行役員の植村仁氏は、同社のDXに取り組む姿勢を説明。Shibuya Sakura Stageは、渋谷再開発計画のなかでも最大級規模の施設で、同氏は「本施設を環境とDXを組み合わせたモデルケースにしたい」とした。今後、IOWNを活用して、海外の学術機関との国際的な連携、ゲームイベントなどさまざまな方面での活用に向けた展望を示した。

 APN IOWN 1.0は、サービスを支えるためのプラットフォーム。消費者がその恩恵を受けるには、活用するサービスがどれだけ増えるかにもよりそうだ。利用増に向けたサービス提供者へのアピールとして、NTTドコモ スマートライフカンパニー エンターテイメントプラットフォーム部の勝亦健氏は「技術だけを訴求しても、事業者さんのハートに火がつかない。IPとの連携などが考えられる。たとえばスタジアム同士をつなぐだけなら今でもできるがそれだけでは面白くない。そのうえで『こんなイベントをやります』というところまで踏み込むということを2024年~25年ぐらいでできれば」と展望を示す。さらに、ビジネス用途でのビデオ会議などを体感できるショールームなど、多方面で展開する可能性にも言及した。

IOWNで臨場感あるビデオ会議を実現

 IOWNを活用した取り組みはビジネス面でも広がる。NTTや東急不動産らが報道陣向けに公開したデモでは、高精細な映像で遠隔地とビデオ会議が行われた。

 一般的なインターネット環境では、映像品質の低さや遅延による映像と音声のズレなどが気になりがち。高速かつ低遅延なIOWNを用いることで、美麗な映像を保ったままの会話を実現した。相手の表情がわかりやすく、遅延による「間」がないため、自然な調子で会話が可能になる。さらに、4K動画をスムーズに流すこともできるほか、資料投影も容易に行えるなどそのスムーズさが明らかにされた。

 また、NTTのLLM(大規模言語モデル)「tsuzumi」が会議をサポートする仕組みも示された。会議を聞いていたtsuzumiに要点を聞くと的確にポイントをまとめるほか、会議運営のサポートなども行う。

エンタメにもIOWN

 発表の場では、鬼越トマホークなどお笑い芸人らが体を張って、IOWNの性能を体感。通常のインターネット回線では、遅延によりスムーズなやり取りが難しいもののIOWNでは、不自然な間もなく、円滑なコミュニケーションが可能な様が披露された。