ニュース

5Gミリ波の人口カバー率はほぼゼロ、総務省の会合で4キャリアの担当者が語ったこと

 総務省は9日、「5Gビジネスデザインワーキンググループ(第3回)」をオンラインで開催した。

 同ワーキンググループにはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルからそれぞれ担当者が登壇。“電波オークション”を含めた周波数帯の割当方式などについて、各社からのプレゼンテーションのほか、意見交換などの時間が設けられた。

 ワーキンググループ事務局の資料では、通信事業者ごとの5G基地局の整備状況などの現状が示された。NTTドコモや楽天モバイルは高周波数帯の基地局が中心で、KDDIやソフトバンクは低~中周波数帯の基地局が多くなっているという。

 また、ミリ波と呼ばれる28GHz帯の人口カバー率については、4キャリアとも0.0%で、限定的な利用にとどまっている。これに比例して、ミリ波で扱う通信量も0.2%とごくわずかなものとされている。

NTTドコモは「健全な事業運営を維持しながらオークションに参加」

 NTTドコモ 常務執行役員の山﨑拓氏は、同社が進める5Gの展開について紹介した。5Gの契約者数は2022年9月時点で1602万契約、基地局は2022年3月末で2万局となっており、いずれも拡大が続いている。

 山﨑氏は5Gの普及を図るうえで、Sub6と呼ばれる3.7GHz/4.5GHz帯や、ミリ波の活用がキーポイントになると説明。高周波数帯は直進性が強く、減衰量が大きくなるが、ドコモではそうした課題を解決するための取り組みを進める。

 高周波数帯の割当方式について、山﨑氏は「エリアカバレッジなど、事業者の義務に関する条件は極力とどめてほしい」とコメント。オークションについては「健全に対応する」とし、サステナブルな経営につなげるために、中長期の事業計画に反映したうえで参加する必要があるとした。

 先述のとおり、ミリ波には電波が減衰しやすいという特性があるが、山﨑氏は「必要なときに、必要な場所へ持っていくという使い方であれば活用しやすいのでは」という見方を示す。同氏は、各種制度の変更なども含めた課題解決は必要としつつ、対応端末の拡大も含めて今後への期待感をのぞかせた。

KDDIが提案した新たな割当方式とは

 KDDI 執行役員 技術統括本部 技術戦略本部長の前田大輔氏によれば、auやUQ mobile、povoのマルチブランドベースにおける5Gの契約浸透率は、2022年12月時点でおよそ5割となっている。また、1人あたりのデータトラフィックは、4G LTEと比較して2.5倍超になっているという。

 高周波数帯の電波をめぐる諸外国の状況を紹介した同氏は、日本国内の状況についてもコメント。KDDIで販売するスマートフォン19機種のうち、ミリ波の対応端末は5機種となっている。前田氏は「対応端末の拡大によってチップコストなどの低減につながる」と語った。

 周波数の割当について、全国的なカバレッジを求められる低周波数帯の場合は「総合評価方式がふさわしい」(前田氏)。一方、たとえばミリ波などの高周波数帯では「比較審査項目」も異なるため、総合評価方式と条件付きオークションを使い分けるべきとした。

 また、ミリ波の周波数の割当方式に関して、従来のように「周波数単位」「使用区域」で割り当てると、設備投資コストや電波干渉の面で課題が生じるとコメント。両方を組み合わせ、“ブロック”のようなかたちでより細かく割り当てる新たな割当方式を提案した。

4.9GHz帯の早期割当を求めるソフトバンク

 ソフトバンク 渉外本部 執行役員本部長の松井敏彦氏は、日本国内における4G LTEの周波数割当について、「政策が有効に機能した。LTE接続率やスループットは世界的に見ても高い水準にある」と評価する。

 同社の5G展開の進捗として、2022年9月時点での基地局数は4.7万局超となり、人口カバー率は92%超となっている。エリアカバーでは低周波数帯が中心になるとしつつも、増え続けるトラフィックを吸収するためにはSub6などの高周波数帯も重要になるとした。なかでも4.9GHzについて、松井氏は「5Gの大容量ネットワークを広範囲に整備するうえで適しているため、早期の割当を求めたい」とコメントした。

 ミリ波以上の周波数帯割当について、松井氏は「新たな割当方式の検討が合理的ではないか」と語る。同氏は続けて「基地局要件の緩和などもセットで提案していきたい」と語った。

「4キャリアのミリ波のトラフィックは0.01%」、楽天モバイルが披露したデータとは

 楽天モバイル 執行役員 技術戦略本部長の内田信行氏は、同社の基地局整備の状況を紹介。3.7GHz帯(Sub6)の屋内・屋外基地局数は、2022年第2四半期で7383局。28GHz帯(ミリ波)では7198局となっており、「特にミリ波の屋外基地局数は、他社の2倍以上」とアピールする。

 一方、ミリ波はトラフィック的にほとんど使われていないという課題もあるようだ。内田氏が披露したデータによれば、4G LTEも含めた4キャリアの月間総トラフィックのうち、ミリ波が占めるのはわずか0.01%。都道府県別に見た場合、都市と地方の間でトラフィックの量に大きな差もある。

 内田氏はその要因として、「日本で50%以上のシェアを誇る(スマートフォン)端末が、ミリ波に対応していないこともあると思う」とコメント。基地局の拡大とともに、端末の普及も図っていく必要があるとした。

 周波数割当に関するオークション方式の課題について、「落札額の高騰」「特定事業者への周波数の集中」などを挙げた内田氏。「ミリ波に関しては空き帯域が豊富にあるため、そういった課題は生じづらい」としつつ、後発事業者に配慮した制度設計を求めた。