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日本の5Gに世界が注目する理由とは? “ミリ波普及”など見すえた総務省の会合

 総務省は7日、「5Gビジネスデザインワーキンググループ(第2回)」をオンラインで開催した。

 同ワーキンググループにはエリクソン・ジャパン、クアルコムジャパン、サムスン電子ジャパン、NEC、富士通の5社からそれぞれ担当者が登壇。5Gにおけるミリ波などの普及に向けたプレゼンテーションのほか、意見交換などの時間が設けられた。

 なお、第3回は2月9日に開催され、MNOへのヒアリングが実施される予定となっている。

データトラフィックが増大する将来に向けて

 エリクソン・ジャパン 北東アジア・ネットワークエボリューション統括本部長の鹿島毅氏は、5G通信に関する日本と諸外国の状況を紹介した。

 Sub-6をはじめとしたミッドバンドの展開について、日本は基地局の密度などで諸外国に遅れをとっている。5Gのスループットに関しても、中国や韓国などと比べて劣っているという。

 今後はXR技術の普及により、データトラフィックの量が増えていくことが見込まれる。そこで鹿島氏は、5Gの基盤としてのミッドバンドの整備に加え、ミリ波と呼ばれる高周波数帯が重要になると説明。GSMAのレポートによれば、2030年までにミリ波帯で5GHzの帯域が必要とされている。

 ミリ波の普及に向けて重要となるのは「ビジネスモデルの確立」「対応端末の拡大」と鹿島氏。同氏は続けて「ミリ波のパフォーマンスを体感できるような機会をつくることも重要」と語った。

ミリ波端末に限定して、端末値引きの上限額を引き上げる?

 クアルコムジャパン 政策渉外本部長の篠澤康夫氏は、5Gについて「あらゆる産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)をけん引する」とコメントした。

 そのなかでもミリ波については、「5Gのフルポテンシャルを発揮すると期待されている」(篠澤氏)。

 日本ではすでに28GHz帯の高周波数の商用利用がはじまっているほか、ミッドバンドもバランスよく事業者に割り当てられ、世界的に見ても先進的な状況になっているという。篠澤氏は「日本がどのようにミリ波ビジネスを成功させていくのか、世界各国がモデルケースとして着目している」と語った。

 ミリ波対応の端末について、世界で65以上のベンダーから、170以上の対応デバイスが発売・発表された。しかし日本では高価格帯の端末が中心となっており、たとえば携帯電話市場全体におけるミリ波対応端末の割合は5%程度。これは米国と比べて1/10以下の数字になる。

 篠澤氏は、ミリ波の利活用促進を見すえた取り組みの例として、現在の携帯電話端末の値引きの上限額(2万円)を、ミリ波対応端末に限って上限を引き上げること(4万円)などを提案した。

韓国におけるミリ波帯の状況とは

 サムスン電子ジャパン ネットワーク事業本部 顧問の竹中哲喜氏は、同社の事業の状況を紹介。5Gの導入初期にあたる2016年~2021年にかけ、マクロセル基地局のシェアはグローバル市場・国内市場の両方で拡大した。国内市場では、スマートフォン端末のシェアも伸びている。

 新たなサービスの実現などを想定し、サムスンでは豪州の企業などと連携しながら、技術開発を進める。

 ミリ波における韓国の状況として、オークション形式による周波数の割当が2018年6月に実施された。第1段階が帯域幅、第2段階が周波数の位置という2段階制で実施され、ネットワーク構築の義務として装置の数も定められた(28GHz帯では3年以内に1万5000装置)。

 しかし、事業者は3.5GHz帯のサービスを展開することを優先し、28GHz帯のネットワーク展開が遅れているという。要因として、「対応端末やキラーアプリがないということがある」と竹中氏は語った。

 停滞する状況を打破すべく、韓国政府は既存事業者への28GHz帯の割当を取り消し、新規事業者を募集するような状況となっている。

ミリ波の特性を考慮した新しい割当方式も検討

 NEC ネットワークサービスビジネスユニット コーポレート・エグゼクティブの渡辺望氏は、オープンなネットワークを構築する「オープンRAN」に関する同社の状況を紹介した。

 グローバル市場でオープンRANに対するニーズが高まっており、NECではNTTドコモや楽天モバイルの国内事業者に加え、海外ではテレフォニカ(スペイン)やボーダフォン(英国)など個社との関係の深化を図る。また、新たな顧客も開拓していく。

 続いて5Gのユースケースなどを紹介した渡辺氏は、ミリ波など高周波数の割当方式について言及。伝送距離が短いという特性などを考慮に入れながら、割当方式を検討する必要があるとした。

ミリ波の普及にあたっては低コスト化も必要

 富士通 モバイルシステム事業本部 ワイヤレスプロダクト開発統括部 シニアディレクターの関宏氏も、NECと同様、5Gにおけるオープン化や仮想化などに関する同社の取り組みを紹介した。

 同氏は、5Gのさらにその先の「6G」を見すえてミリ波を活用するうえで、「カバレッジ拡大の技術開発だけでなく、低コスト化などの課題解決も必要」と語った。