ニュース

電波オークションについて、ドコモ井伊社長「検討する価値ある」KDDI高橋氏「事業者を後押しする方式を」

 総務省で16日、新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会(第2回)が開催され、携帯事業者からNTTドコモ代表取締役社長の井伊 基之氏と、KDDI代表取締役社長の高橋 誠氏(高は新字体)から発表があった。

ドコモ井伊社長「柔軟性確保が必要」

NTTドコモ代表取締役社長の井伊 基之氏(10月の中期戦略発表にて)

 ドコモの井伊社長は、現在の携帯電話環境について「音声のみならず、人と人、人と機械、機械と機械といった多様な通信を実現するICT基盤として成長している」と説明。人の加入数は飽和状態になっており、今後の増加は見込めない一方で、これからはIoTやAIなどの新たな技術急速な進化と「機械による通信利用」が今後増加していくとした。

 井伊氏は今後の周波数の利用について、「将来のIoTが増加していく未来への対応が必要で、より電波利用に柔軟性を確保していることが重要」と考えを述べ、これまでのような5年後7年後の基地局開設計画を事業者がコミットするやり方では、ネットワーク構築の柔軟性を確保できなくなるとコメント。

 オークションによる周波数の割り当てについては、透明公平で法的に堅牢な割り当て方式かつグローバルスタンダードになっている一方で、落札額の高騰や周波数の有効利用の確保に課題が残るという。オークションの実施にあたっては、「一定のカバレッジの義務」など一定の基準を課すことで課題解決ができるのではないかとコメント。「価格の透明性や将来の需要の変化への柔軟性をもったオークション方式を、今後の割り当ての方針として検討することは価値があるもの」(井伊氏)と考えを示した。

 また、高い周波数帯(5Gミリ波など)の割り当てについては「ピンポイントでエリアのニーズに即したソリューションと一体になって展開することが望ましい」とし、開設計画の自由度が高いオークション方式は適しているとコメント。

 一方で、入札に当たっては「合理的な投資回収計画に基づいた入札額の設定」が重要で、料金の値上げなどがなく、効率を高める努力義務をキャリア自らに課すことで、落札額の高騰は抑止できるのではないかと説明。

 電波の有効活用という点では、「割り当て時に適切なカバレッジ義務の設定を検討し、割り当て後に不十分であれば適宜指導するやり方が適当」とした。

KDDI高橋社長「政策目標を達成できるような割り当て方式を」

KDDI代表取締役社長の高橋 誠氏(10月のKDDI決算説明会より)

 KDDIの高橋社長は、日本のネットワークについて「高品質なネットワーク構築に成功し、自然災害が多い日本においても各事業者で、電源設備の設置など災害に迅速に対応できる体制を構築できている」とコメント。

 現行の割り当て方式でも「周波数の経済的価値」を評価する方式が採用されているが、これはオークション方式にかなり近づいたものではないかと評価した。

 一方で、電波オークションをすでに導入している国では、以前に入札額の高騰で「事業者が巨額の負債を抱えて第3世代の導入が大幅に遅れた」ことを取り上げ、事業者の健全な発展をモバイルネットワーク政策の目標とした制度に改善されたケースがあると説明。

 オークション方式については、フランスやイギリスのような政策目標の実現を重視するオークション方式と、政府の関与が限定的で価格重視の米国型が存在するとコメントした。

 高橋氏は、フランスやイギリス型のオークションは、日本の現在の総合評価方式と近い方式になっていると考えを示し、「政策目標を事業者が達成できるよう、設備投資を後押しできるような割り当て方式となることが重要」と延べ、今後の日本の割り当て方式に関する議論の参考になるのではないかと説明した。

 また、高品質なモバイルネットワークの整備には、事業者の先行設備投資が前提となるため、行政が投資できるような制度設計を実施してもらいたいとコメントした。

 最後に高橋氏は、今後の周波数割り当てにおいて得られる収入については、国際競争力の向上に向けた予算や社会課題解決に関するものに有効活用してもらいたいとした。