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NTT(持株)島田社長の決算会見一問一答、大規模通信時のローミングや地域会社の今後を語る

NTT代表取締役社長の島田 明氏

 NTT(持株)は、2022年度第1四半期決算を発表した。営業収益は前年同期比+6.1%の3兆688億7100万円、営業利益は同+3.5%の5033億5200万円、四半期利益は同+8.4%の3685億7000万円だった。グローバル・ソリューション事業の好調などが売上、利益を押し上げる結果となった。

 本稿では、主な質疑を中心に決算会見の模様をお伝えする。質疑の回答者は、NTT代表取締役社長の島田 明氏。

KDDIの通信障害について、ローミングなど

――先日KDDIで通信障害があり、政府でローミングについて真剣に検討を始めるということを表明しているが、島田社長としての課題や考えなどはあるか?

NTT代表取締役社長の島田 明氏

島田氏
 先般のKDDIの障害は、昨年ドコモも障害を発生させていることもあり、「他人事ではない」。まずは、KDDIの障害について、詳細をよくききながら、自らのネットワークについて見直すべきところがあれば経験に即して見直していきたい。

 ローミングに関しては、できるだけ早く実現できるように協力して参りたい。そのためには、事業者間の協力が重要で、総務省からの指導を仰ぎながら整理していくことが重要だと思っています。

 あまり時間をかけないで対応していくことが大事だと思っており、「折り返し機能」などの議論がありますが、時間やコストがかかることになるので、それなりの議論が必要。できることをできるだけ早く対応していくことが必要だと考えています。

 あとは、やはりIoT時代のネットワークそのもののアーキテクチャーとかオペレーションのあり方ということを、これからの自動運転などを考えた際に、再度強化していく必要があると考えています。

――ローミングについて、コスト負担の考え方について、事業者だけでなく国や政府も関連すべきなど、考えはあるか?

島田氏
 最低限、ローミングのコストについては、事業者で負担していくべき。いろいろな段階や要求水準などがあると思いますが、それに応じて考えていく必要があるのではと思います。

 単純なローミングをするのであれば、それぞれの事業者が負担していくべきという認識です。

――事業者負担となると、どれくらいかかるか試算しているか?

島田氏
 試算はできていない。

 ローミングについて、緊急通報だけなのかどこまでやるかという話もあり、結構複雑な問題。輻輳が波及することがまずいわけで、仮に緊急通報以外で考える際は、輻輳が波及しないように最大限考慮しなければいけないと思いますし、たとえばバックアップみたいないサービスを法人向けにサービスメニューとしても考えていく必要がある野ではないかと思います。

――緊急通報以外にローミングを広めていくべきか?

島田氏
 緊急通報以外にどこまでローミングを広げるかというのは、ある会社の輻輳がほかの会社に波及すると、重大な事故になってしまいますから、緊急通報以外で考えるにあたっては、「輻輳が波及しないということ」が最低限の前提になります。

 たとえば、SMSみたいなものを流すなどはあるのではないかと思います。ただ、それをどういう仕組みでお互いにやっていくかなど、コンセンサスを形成していかなければならないので、総務省が場を持たれるということでそういう議論があればと思います。

 ただ、大前提は「輻輳を波及させない」かつ、なるべくコミュニケーションの齟齬がないようにできるかということがやはり重要だと思いますので、その範疇で考える必要があると思います。

――ローミングの議論について、短時間でできることとしたが具体的には?

島田氏
 緊急通報に関しては、折り返し機能がない形のローミングの実現を考えるべきではないかと。コンセンサスがどこまでやるべきだというのは、議論することだと思うので、それだけをやればいいと言うわけではない。

 SMSみたいなものもやるべきだというコンセンサスがまとまれば、そういうことも必要だと思うが、お金がかかったり付加的なコストがかかってきますから、どういう風にしていくのかという議論がセットになっていきますので、広がれば広がるほど議論が長引くと思います。

 なので、(ローミングについては、)まずは最低限の議論からスタートするべきではないかと申し上げています。

――ローミング(コールバックなし)はいつごろ開始できそうか?

島田氏
 議論が全く始まっていないので、いつまでと明確に申し上げるのは難しい。

 一つの会社ではできないので、携帯4社でしっかり議論し総務省交えて早い段階で実現できればと思います。

――ローミング(コールバックなし)だと、どれくらいの設備改修が必要になるのか? すぐに開始できるものなのか?

島田氏
 すぐに開始できるということではなく、コールバック無しでも設備の改修が必要となるので、今日明日でできるものではありません。

――「コールバックあり」より「コールバックなし」の方が実現性は高いのか?

島田氏
 コールバックをするとなると、データベースの整備などが必要になってくるので、すぐに簡単にできるものではないです。

――通信障害時に「00000JAPAN(ファイブゼロジャパン)」のようなWi-Fiの活用に関する取り組みについて、考えはあるか?

島田氏
 具体的に、議論が始まっているわけではないが、災害時の特設公衆を使った方が良いのかなど災害時の施策を通信障害時に応用できるかどうかは、各社議論していきたい。

 その場合、コストの負担などが発生するだろうし、そういったことも考えていかなければならないと思っています。

――KDDIの通信障害では公衆電話の存在にも注目が集まったが、今春、公衆電話の設置基準が変わり、設置台数が削減する方向になっている。見直しなど考えはあるか?

島田氏
 今ある公衆電話よりも、災害時に個別に設置する「災害時公衆電話」の対応を重視していきたい。その方が、圧倒的に数も多く災害時公衆電話の扱いの方がお客様にとって使い勝手の高いものになると思います。

――今回のKDDIの障害に対して、ドコモの個人および法人の契約傾向に影響はあるか? 来期以降に影響はあると思うか?

島田氏
 法人のバックアップについて議論が始まっているという認識。ドコモだけを使っているお客様にとっても、バックアップをどうしていくのか、他社の回線でバックアップすると言うことになると思います。双方のネットワーク事業者がバックアップについてどういう提案をしていくかと言うことになります。

 たとえば、ダブルでSIMを入れるサービスや、お互いのMVNOになるというサービスなどがあるかもしれません。お客様の事業の継続性を考えたものになると思います。

 これまでも専用線やVPNについてバックアップされている法人さんはいらっしゃいます。NTTコミュニケーションズのメニューを使っている法人が、バックアップとしてKDDIを使っているのもいらっしゃる。こういうものが、モバイル回線にもつながっていくのではと思います。

――個人向けのバックアップサービスの展開はあるか?

島田氏
 スマートフォンを2台持っていただくとかになると思います。

 海外のNTTグループでは、1つのSIMで複数の通信会社が選択できるサービス(編集部注:NTTグループの「Transatel」が「Ubigi」ブランドで同様のサービスを提供している)はすでにあるが、コストがかかるのでそれをお客様が選択するかどうかになってくると思います。

KDDIの補償/おわび返金について

――KDDIの一律200円のお詫び返金についての受け止めは? また、現状のドコモの約款について現時点のユーザーの使い方では不十分ではないかという意見があるが、障害発生時の補償についての考えは?

島田氏
 KDDIの補償について、コメントは控えさせていただきたい。

 原則は、約款にあわせて返金するというのが原則だと思っています。(障害発生時の補償については、)障害の大きさや社会的責任などを考えて判断することだとおもいますので、それぞれの状況に応じて決めていくことだと思っております。

楽天モバイルの0円廃止について

――楽天モバイルが0円プランを廃止したが、それに関する受け止めと、その後のドコモのユーザー動向は?

島田氏
 楽天モバイルが0円をやめられたというのは、ネットワークビジネスにはコストが基本的にかかるものなので、それは当然の行動なんだろうなという風に思います。

 これを受けてのドコモの影響については、直接的にMNPがどうなったなどはわかりませんが、少なくとも今年の第1四半期ではプラスになっているのは事実です。これが楽天モバイルの影響なのか、ドコモの営業がしっかりやっているのかというのか、評価するのは難しいと思います。

――ahamoは順調?

島田氏
 ahamoはおかげさまで順調です。

NTT代表取締役社長の島田 明氏

決算について

――四半期ベースで営業利益と当期利益が過去最高だったということだが、何が一番効いたか? あるいは、想定の範囲内だったのか?

島田氏
 大体、業績予想に添った形での決算となりました。

 国内事業に関しては、大体ほぼ我々が想定した水準で進んでいます。

 海外は、おかげさまでNTTデータのデジタルやLimitedの付加価値サービスなど、今期は海外事業が全体を引っ張って持ち上げたといえると思います。

 一方で、海外の半導体供給の問題で、受注残がなかなか減らない。今期は、受注残が増えた結果となったので、半導体供給の影響で通信機器納入の店舗がどれくらい解消されるか、海外のビジネスをどこまで伸ばしていけるのかが重要だと思っています。

――地域通信について、マイナススタートとなっているが、東西会社の社長が交代したこともあり、地域会社の今後について期待していることはあるか? 方向性は?

島田氏
 東西に関しては、東西それぞれは25年で50%以上を非通信で売上を上げていきたい。地域のビジネスとして立ち上げた事業について、早期に3500億円規模に持って行きたい。

 東西それぞれ農業や漁業、たとえば畜産の飼料を電力に変えるようなバイオマス事業など、地域事業にチャレンジしています。地産地消的なローカルで新しい事業を立ち上げていくのは、当然これからの事業の大きなミッションだと思います。

 第1四半期は、前年の不動産売却などの影響でマイナスになっていますが、年間通してはおそらく計画達成するだろうと思っています。地域会社には、地域それぞれの特長を生かした「新しいビジネスの創出」に励んでもらいたいと思います。

――海外事業について、営業利益ベースで円安の影響はどの程度あるか? 海外影響利益率6.1%に対する評価は?

島田氏
 全体で1763億円の増収になっているが、為替の影響はそのうち570億円ほどあります。

 海外売上高でいうと、売上高が970億円増加しており、そのうちの570億円が為替の影響となります。一方で、利益にはほとんど影響していません。

地域への組織分散トライアルについて

――地域への組織分散トライアルについて、高崎市と京都市を選ばれた理由は?

島田氏
 地域分散の目的の一つは「レジリエンス」の強化です。やはり首都直下型地震をイメージし、従来の対策だけで十分かどうかを検証し、過去の地震の頻度や内陸である地理的条件、新幹線で行きやすい高崎や、(京都市は)1000年も都が続きましたので災害が少ないだろうということで京都市を選ばせていただいたということです。

――地域分散は、持株会社だけではなく、NTTドコモやNTTデータといった事業会社にも広げて行く考えはあるか?

島田氏
 今回は、事業の継続性の判断の部分で経営企画部門や災害時の現状把握などの部分や実際に遠隔で分かれて仕事ができるかを試していこうということで持株会社から始めます。

 その成果を見て、各事業会社の特性にふさわしいレジリエンスの強化を促していきたい。

リモートスタンダード部署について

――リモートスタンダード部署について、数字など成果は見えているか?

島田氏
 徐々に増えていっていると思います。

 たとえば、単身赴任の従業員がその組織で元々1500人いましたが、4月末の段階で200人減って1300人になっています。これは、後任の方などがリモートスタンダードで転勤しないで自宅から勤務することを選択した可能性があります。

 今後徐々に人事異動が行われていくので、少し時間がたった段階で数字のデータを整理して報告させていただきたい。

エネルギー問題について

――エネルギー/電力価格の高騰について、政府が冬の電力確保にむけて原発の再稼動などを実施するが、それについての評価と、電力価格高騰の影響はあるか?

島田氏
 エネルギー供給の強化は、非常に重要な問題だと思います。

 政府が最大限努力をされていることは、非常に重要な問題でありますし、それは率直に評価させていただきたいと思います。

 電力に関して申し上げると、今年大体20%くらい上がるかなという試算で事業計画を組んでいますが、第1四半期終わった段階で質は3割くらい上がっているんですね。ですから、電力のコストに関しては、よく注視していかなければいけないと思います。

 エネルギーコストの上昇や円安の影響というのは(業績に)影響してくると思いますので、我々大口の電力需要家にとってみると、この電力価格についてはよくウォッチしていかないといけないと思っています。