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KDDIの「スマートドローン発表会2022」――JALとの協業や新会社設立など

 KDDIは15日、「スマートドローン発表会2022」を実施した。発表会のなかでは、ドローンの“社会インフラ化”を見据えたJAL(日本航空)との協業や新会社設立、法人向けパッケージの提供が発表された。

 発表会ではまず、KDDI 執行役員 事業創造本部長 松田浩路氏が登壇した。

松田氏

 松田氏は、2022年を“ゲームチェンジの年”と表現し、ドローン関係者にとって特別な年であることを強調する。

 その理由は、ドローンの「レベル4飛行(有人地帯における目視外飛行)」の解禁にある。これまでは現地で人が操縦していたが、遠隔での自律飛行が可能になる見込みだという。

 これにより、国内ドローンサービス市場は、警備や監視、農業など多岐にわたる分野で大きな伸長が予想される。

 同市場の規模は、2025年度に4361億円になると予想されている。これは、2020年度(828億円)との比較で5倍以上の数字になる。

 そんななか、「ドローンで空から変えてゆく。」というキャッチフレーズを掲げるKDDIは、ドローンの“社会インフラ化”を目指す。

 そのための2つの鍵として同社が挙げるのは、ドローンを接続し、飛行させ続けるための「モバイル通信」。もうひとつが、ドローンを管理・制御するための「運行管理」だ。

 「モバイル通信」に関しては、2020年12月に、電波法に関する省令が改正された。これによって上空でもモバイル通信を利用することが可能になっている。

 「運行管理」について、KDDIは約6年間にわたり、ドローンの運行管理システムに関する実証実験を実施してきた。

JALとの協業

 省令改正やこれまでの取り組みを踏まえ、松田氏は「ドローンが多数飛び交う世界を考えると、基礎固めは終わって応用問題を解くという段階」と表現。

 そのうえで「ここからは強力なパートナーの力が必要」と語り、JALとの協業を発表した。

写真左:JAL(日本航空)常務執行役員 西畑智博氏、写真右:松田氏

 KDDIは、ドローンの運行管理システムにおいて、JALの航空安全技術試験を適用していく。

 JALでは、安全推進本部や各部門でそれぞれ連携して安全管理システム(SMS)を機能させ、飛行機の安全な運行を実現している。

 また、安全に関するリスク評価なども実施しており、こうした知見を活用することで、ドローンの運用管理体制の構築に協力する。

 KDDIとJALはこれまで、兵庫県での医薬品配送をはじめとしたドローンの物流実証を実施し、知見と経験を蓄積。

 両者は今後、ドローンの運用管理体制の構築だけでなく、ビジネスモデルなどの構築も図っていく。

新会社の設立と「スマートドローンツールズ」

 続いて松田氏は、KDDIのスピンオフベンチャーとして、「KDDIスマートドローン株式会社」の設立を発表した。

 同社の代表取締役社長には、博野雅文氏が2022年4月1日付けで就任する。博野氏は、KDDIで10年以上モバイル通信全般の開発に携わってきた。

写真左:松田氏、写真右:博野氏

 また、法人向けに「スマートドローンツールズ」の提供が始まった。

 月額4万9800円の「スマートドローンツールズ」は、ドローンの遠隔運用に必須となる通信・運行管理・クラウドをパッケージにしたもの。モバイル通信はデータ使い放題で、クラウドは100GBの保存容量が用意される。

 メインターゲットは、遠隔でのドローンの運用を検討する企業や自治体。広域監視や災害対応などが具体的なユースケースとして想定されている。

 「スマートドローンツールズ」には、スマートドローン活用に役立つさまざまなオプションが用意されている。

 今後は、米スペースX(SpaceX)の衛星通信サービス「Starlink」を活用したオプションなども提供される予定。同社とKDDIは2021年9月に業務提携を発表していた。

 4月からは、上空での電波状況を可視化できる「電波ログ解析機能」や運行管理システムとの連携機能を備えた、ドローン専用の通信モジュールも提供される予定。

 「スマートドローンツールズ」に関してはトライアルキャンペーンが実施され、まずは試したいというニーズに対応する。

 新会社のKDDIスマートドローンは、「スマートドローンツールズ」の提供に加え、物流や点検といった用途別のソリューションも提供する。

 博野氏は、「ニーズに応じたドローンサービスを機動的に提供していきたい」とした。

質疑応答(一部)

――4月1日以降、KDDIとKDDIスマートドローンの事業はどう分けられるのか。

松田氏
 会社分割ということで、ドローン事業のほうはKDDIスマートドローンへ移管する。

 ただし、いわゆる大手企業への窓口に関しては、KDDI本体のソリューション事業部門でも持っているため、そことしっかり連携をしていくということになる。

――ドローン事業での売上目標は。

松田氏
 先日の会社分割の適時開示のときに、昨年度の売上として約8.6億円という数字を出した。今年度はだいたい倍増するかたちで伸びてきており、我々としては2024年度に売上約100億円、3桁億円を目指してやっていく。

――中山間地で飛んでいるドローンに関しては、上空でモバイル通信が切れているという声もあるが。

松田氏
 ドローンは150m上空まで飛べるということで、我々の基地局によってカバーできるということになっている。ただ、すべての空間をチェックできているわけではないので、それは今後ドローンを飛ばすときにチェックしていく。

 また、どうしても既存の基地局でカバーできない場合は、スペースXの衛星通信サービスも活用するなど、柔軟に展開していきたいと思っている。

――上空のエリアカバレッジについて、地上(のエリアカバレッジ)と比べるとなにか違いがあるのか。

松田氏
 上空での電波利用については、地上での利用に追加されるかたちになったので、我々が免許を取得するための条件がある。

 そのひとつとして挙げられるのが、周波数が限定されているということ。我々の場合は、800MHzと2GHzの周波数のみが使える。

――上空でも、地上のエリアカバレッジと同じという認識でよいか。

松田氏
 問題ない。今後は、ドローンを飛ばすエリアごとにチェックして調整していく。

 我々もさまざまなタイプの基地局を保有しており、たとえば高い鉄塔ベースだと(電波が)上空まで届きやすい。タイプの異なる基地局を組み合わせて電波を届けていこうと思っている。