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KDDI、2022~2024年度の中期経営戦略を発表――5G浸透やメタバースなど注力

 KDDIは、2022年3月期第4四半期決算の中で、中期経営戦略(2022~2024年度)を発表した。

KDDI 髙橋氏

通期で増収増益に

 発表の場には、KDDI 代表取締役社長の髙橋誠氏が登壇。同社の決算の概況を説明した。連結業績は、売上高が5兆4467億円で、営業利益が1兆606億円。2019年3月期からの年平均成長率はそれぞれ、+2.3%と+1.5%となった。

 グループID数は3184万と期初予想の3180万を超える成長とを見せた。一方で、通信ARPUは4200円と前年同期比で200円減だったが、髙橋氏は「予想通りの着地」とコメント。付加価値ARPUは前年同期比で200円アップしており、通信事業の収入低下をカバーするかたちとなった。

 5G端末の累計販売台数は800万台を超えており、順調に推移しているとした。

 ライフデザイン領域は営業利益で2540億円と年平均成長率は+20%と躍進。au PAY会員数は3700万、そのうちau PAYカード会員数は760万。決済・金融取扱高は11兆7000億円で前年同期比29%と大きく伸びている。

 髙橋氏は、2022年3月末で20年の歴史に幕を下ろした3Gサービスにも言及。「今まで、3Gサービスをご利用いただきまして、本当にありがとうございました。約20年間多くのサービスをご利用いただきました。厳しい環境下において大きなトラブルなく終了できたのは次につながる成果」とコメント。「消費電力のかさむシステムであったため、環境への取り組みとしても大きな成果だった」とした。

5Gを中核に見据える新規中期経営計画

 髙橋氏は、同社のビジネスを取り巻く環境が大きく変化していると説明。価値観やワークスタイルの多様化、DXによる新ビジネスの創出、持続可能性の高まりやBeyond 5G(6G)研究の進展を一例として挙げる。

 「KDDI VISION 2030」のメッセージのもと、さらゆる産業・生活シーンで付加価値を提供できる、社会を支えるプラットフォーマーを目指すと語る。

 同社では従来から、「通信とライフデザインの融合」としてスマートフォンを軸として、さまざまな非通信サービスを展開してきたが今後は、2030年を見据えて「5Gを中核に据えた事業変革を推進する」という。

 新たな中期経営計画では、「サステナビリティ経営」をかかげ、、事業戦略(サテライトグロース戦略)の推進とそれを支える経営基盤の強化でパートナーとともに持続的成長と企業価値の向上を目指すとした。「社会の成長が次のKDDIの事業戦略に活かされ、ふたたび社会に還元される」好循環を目指していくと熱意を見せる髙橋氏。

 長期的な視点での社会課題と同社グループの経営重要度を総合的に網羅した「新重要課題」として、通信を核としたイノベーションの推進やカーボンニュートラルの実現、人財ファースト企業への変革などを策定した。

 同社の新たな事業戦略では、通信事業の進化とそれを中心とした5つの注力領域である、デジタルトランスフォーメーション、金融、エネルギー、ライフトランスフォーメーション、地域共創をメインとして企業価値の最大化を図るという。

 事業の中心となる、5Gエリアの構築では、引き続き、商業地域や鉄道、高速道路など生活動線に沿った展開で進め、政府の示す「デジタル田園都市国家」に貢献する。

 このほか、今夏には個人向けにも提供を予定している5G SA(Stand Alone)についても、ソニーとの協業などを通じてエンターテイメント分野での活用を進めている。「諸外国に遅れを取っていた5Gだが、テクノロジー・利用シーンを積極的に取り入れ、Beyond 5Gを見据える」とした。

 5Gの契約目標としては、2025年3月期に80%までの上昇を目標とする。通信ARPU収入についても2022年3月期比で上昇を目指し、ネットフリックスやYouTube PremiumといったOTTパートナーとのサービス拡充、5Gならではの体験を提供するとした。

 このほか、DX分野においては、法人事業でもNEXTコア事業を成長させ、通信に次ぐ第2の柱として、営業利益の年平均成長率二桁増益を目指していく。IoTについても「グローバルパートナーと培った信頼医の運用・保守体制が大きな強み」として、IoT累計回線数の増加、5GをベースとしたDXによる新たな価値を創造する。

 将来的に自動車、工業設備、メーターなどに溶け込ませ、ユーザーが意識することなく5Gを活用できる環境を整備。業界のニーズに応じたビジネスプラットフォームを提供しながら日本のDX化を図る。

 同社では、すでにJR東日本と「空間自在ワークプレイス」などDXの取り組みを進めている。

 加えて開発体制についても「DX推進本部」を設置。社内組織の垂直統合でソリューションを一気通貫で提供する体制を整えたという。さらに「KDDI Digital Divergence Holdings」も設立しており、グループ内の連携強化、多様なDX人財の荷重を図る。

金融分野やライフトランスフォーメーションを推進

 金融分野でも、売上・営業利益の年平均成長率2桁成長を目指していく。これまでも金融事業は堅実な成長を見せてきたが、新中期経営計画においても、住宅ローンやクレジットカード会員数を中心に成長を目標とする。

 各種金融サービスの相乗効果によりエンゲージメントを向上。さらに、将来的な姿として金融サービスでもプラットフォーム化を目指す。すでに同社が保有する金融サービス各種をほかの非金融事業者へ提供、利用者へ提供することで「BtoBtoX」型のサービスを展開し、事業領域を拡大するという。

 このほか、エネルギー分野でも年平均成長率2桁成長を目指す。電力小売事業も引き続き強化していくほか、カーボンニュートラル事業として、基地局などで再エネ発電を活用すべくパートナーとの連携を拡大、需給バランスの不安定化解消に向けてVPP推進にも取り組む。

 「ライフトランスフォーメーション」(LX)では、5Gの浸透やテクノロジーの進化で生活体験を革新する将来の事業を創出するという。ネットワークやセキュリティ、空間認識、画像解析、AIなどを活用。髙橋氏は「生活者の目線に立ったLXに注力する」とした。

 具体的には、ブロックチェーンなどの活用が見込まれる「Web3.0」に向けて、それを活かしたメタバースでアバターを活用した次世代コミュニケーション、クリエイターが主導するオープンな創作環境などを実現すると目標を示した。

 このほか、無人配信や映像関連でのドローン活用、スペースXとの連携による都市品質の通信品質を全国津々浦々に提供することを目指す。

 加えて、地域共創の一環として、1500万のデジタルデバイドの解消を目指す。同社ではすでに、ウィラーとともに共同するMaaSの「mobi」やスマホ教室をすでに提供しており、地域社会が抱える課題に向き合い、地域共創を実現していく。

働き方変革、社員のDXスキル向上も推進

 経営基盤強化として、KDDI単体で2030年度、グループ全体で2050年度のカーボンニュートラル達成を目指すとしたほか、「KDDI版ジョブ型人事制度」で全専門領域でプロ人材30%を目指すほか全社員のDXスキルを向上させし注力領域への要員転換、社内DX推進、「KDDI 新働き方宣言の実現」で人財ファースト企業を目指す。

 また、事業活動における人権尊重の徹底などでグループ経営推進・ガバナンス強化を目指すさらに、インフラシェアリング推進、先端技術活用による効率化、営業体制の変革や販売チャネル効率化で1000億円規模のコスト効率化を目指す。

 2023年3月期の連結業績予想としては、売上高で5兆5600億円、営業利益は1兆1000億円を目指す。