法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

ローミング終了の「楽天モバイル」とはどう付き合う?
2026年9月18日 00:00
今年8月の決算会見において、KDDIが楽天モバイルに提供してきたローミングを9月末で終了することが発表され、ユーザーからは不安の声が挙がっている。
2020年4月に正式サービスを開始し、昨年12月には1000万契約を達成した楽天モバイルだが、今回のローミング終了でひとつの転換期を迎えることになりそうだ。ローミング終了の背景と今後の楽天モバイルについて、考えてみよう。
「ローミング」とは
国内では総務省が割り当てた周波数帯域を利用して、各社の携帯電話サービスが提供されている。現在は、NTTドコモ、KDDI及び沖縄セルラー、ソフトバンク、楽天モバイル、ワイモバイル、Wireless City Planning(WCP)、UQコミュニケーションズに周波数帯域が割り当てられており、各社は総務省に提出した開設計画に則って、基地局や設備を展開することを求められている。
1990年代まで、単独の携帯電話会社(事業者グループ)が全国エリアをカバーしていたのはNTTドコモのみで、サービスを提供できるエリアが限られていた他の携帯電話会社は各事業者が提携し、お互いの顧客が他の事業者のエリアでも携帯電話サービスが利用できる「ローミング」という形で全国エリアをカバーしていた。
たとえば、現在、auやUQモバイルのサービスを提供するKDDIも2000年の統合以前は、関東・東海・甲信エリアを日本移動通信(IDO)、それ以外の地域を第二電電(DDI)傘下のDDI-セルラーがカバーしていた。
関西在住のDDI-セルラーの契約者が東京に来たときは、IDOの携帯電話ネットワークに接続することで、音声通話などが利用できていた。さらに遡ると、DDI-セルラーとIDOはcdmaOneサービス開始以前、両社のエリアを補完するため、NTTドコモのPDC方式のネットワークを利用する「ドコモローミングサービス」を提供していた。
2000年代に入り、DDI、KDD、IDOの合併によるKDDI設立をはじめ、各携帯電話会社の合併や統合などが進んだ結果、NTTドコモ、KDDI、ボーダフォン(2006年からはソフトバンク)の3グループが全国エリアで携帯電話サービスを提供する形になった。そんな中、第4の携帯電話会社として、イー・モバイルが2007年に携帯電話事業に新規参入した。
当時は2001年に開始した3Gサービスのエリアが全国に拡大し、人口カバー率(当時の算出方式に基づく)も99%に達していたが、新規参入のイー・モバイルがエリアを全国に展開するには、一定の時間を要するため、2008年からNTTドコモがイー・モバイルに対し、ローミングという形で携帯電話ネットワークを貸し出した。
まだ従来型携帯電話での利用が中心で、モバイルデータ通信の利用は限定的だったが、イー・モバイルのドコモローミングは音声通話、モバイルデータ通信ともに、完全従量制で提供されていた。
ちなみに、当時のイー・モバイル端末ではドコモローミングのエリアに移動すると、アンテナピクトに「R」の文字が表示され、料金体系が異なるローミングエリア内であることが明示されていた。
イー・モバイルのドコモローミングは2010年10月末に終了したが、その後、契約数を伸ばすことができず、2014年にはすでにソフトバンク傘下となっていたウィルコムと統合され、現在のワイモバイルに移行している。
楽天モバイルに対するKDDIのローミング提供
1990年代のNTTドコモ以外の各携帯電話会社や2000年代のイー・モバイルを見てもわかるように、新規参入の携帯電話会社はサービス開始当初、エリアが展開できないため、他の携帯電話会社がサポートする形でローミングが提供されてきた。
2020年4月にサービスを開始した楽天モバイルも同様で、一定期間、ローミングという形でエリアをカバーすることになった。当初は最大手のNTTドコモが楽天モバイルにローミングを提供するのではないかと予想されていたが、実際にはKDDIが提供することになった。
ローミング提供を含め、楽天グループとの提携を発表した2018年当時、KDDI代表取締役社長の髙橋誠氏(現会長)は「ほっとくと、NTTさんに行ってしまう。今のMVNOと同じように、NTTドコモのネットワークを使うところが増えてしまい、競争環境として、アンバランスになってしまう」と話していたが、競争環境を重視するKDDIらしい判断だったのかもしれない。
本来であれば、競争相手である楽天モバイルに対し、ローミングによって、携帯電話ネットワークの帯域を貸し出すことは、敵を利することに見えるかもしれないが、通信ネットワークのNTT寡占を抑制できる一方、楽天グループから数百億円のローミング費用が収入として得られるため、KDDIとしてはプラスになる。
ただ、ローミング費用は一定額ではなく、当初は約款で定められた1GBあたり500円をベースにした金額が請求されていたとされる。
ところが、楽天モバイルの契約者増に伴って、ローミング費用の負担が増えたため、2023年5月にはKDDIとの間で、ローミング契約が見直されている。
詳しい契約内容は明示されなかったが、それまでのローミング契約と違い、楽天モバイルユーザーがローミングで利用できる周波数帯域が調整されたほか、楽天モバイルの自社回線が70%を超えたエリアから順次、ローミングを終了する方針がより明確になり、「2026年9月まで、ローミング提供を延長する」という項目も決まった。つまり、今回のローミング終了はすでに3年前に決められていたわけだ。
楽天モバイルの誤算
KDDIは昨年あたりから、2023年のローミング契約を踏まえ、2026年9月にはローミングの提供を終了する方針を示していたが、これに対し、楽天モバイルは事ある度にKDDIへの謝意を述べつつ、「ユーザーの不利益にならないように、KDDIとローミング契約の今後について、協議を詰めている」と、ローミング契約の延長の可能性がある旨を示していた。
しかし、今年5月12日のKDDIの決算会見では、代表取締役社長の松田浩路氏から楽天モバイルへのローミング提供について、「当初の役割は終えた。10月以降にどのような形で協調していけるかを協議している」と発言。
これを裏付けるように、今年5月末には都市部などで、楽天モバイルのエリアが整備された地域でのローミングがばっさりと切られ、ユーザーからは「つながらなくなった」といった声が多く聞かれるようになった。
そして、今年8月のKDDIの決算会見では松田社長から「楽天モバイル向けローミング契約について、基本的に9月末で終了」ということが明言された。翌週の楽天グループの決算会見では三木谷浩史会長兼社長がKDDIによるローミングが基本的に終了であることを認めつつ、「まず楽天モバイルがカバーを必要とするエリアに関しては、10月以降も契約に則ってローミングを継続していく」とコメントした。
ただ、SNSなどでローミング終了を不安視する声があまりにも大きかったからか、三木谷会長兼社長はSNSで「楽天グループの子会社である楽天モバイルのローミング契約につきましては、KDDI様とは現在も、詰めの協議を行なっています。楽天モバイルがカバーに時間を要するエリアに関しては、ローミングは10月以降も継続します。一方、楽天モバイルが十分カバーできているエリアはローミングを縮小していきます。」と投稿。
その内容を改めて広報部がメディア関係者に伝えていた。つまり、それだけ反響が大きく、10月以降のユーザー離れを不安視したわけだ。
ローミング終了の背景
前述のように、KDDIとしては楽天モバイルのローミングを提供することで、ローミング費用という収入が得られるが、どうしてローミングを終了するのだろうか。
まず、関係者から聞こえてくるのは、トラフィック増によるau/UQモバイルのユーザーへの影響が挙げられる。楽天モバイルを利用していないユーザーには、あまりピンと来ないかもしれないが、実は楽天モバイルのユーザーがスマートフォンやタブレット、モバイルWi-Fiルーターなどを利用しているとき、楽天モバイルの回線に接続されているのか、パートナー回線(KDDIへのローミング)に接続されているのかは、一見して、わからない。
前述のイー・モバイルのドコモローミングでは、アンテナピクトにローミングを示す「R」の文字がいっしょに表示され、ローミング接続は完全従量制で課金されていたため、当時のイー・モバイルのユーザーは不用意にドコモローミングに接続しないように、気をつけていた。
ところが、楽天モバイルは当初こそ、パートナー回線の接続に月5GBの制限があったものの、2023年6月開始の「Rakuten最強プラン」への移行後、楽天モバイルの回線とパートナー回線のどちらに接続されていても料金体系が変わらなくなっている。
極端な話をすれば、パートナー回線に接続したまま、何十GBものモバイルデータ通信を利用しても利用料金は変わらないわけだ。
その結果、通常であれば、KDDIの設備容量が十分なエリアでも楽天モバイルのユーザーが大量にデータ通信を利用してしまうため、au/UQモバイルのユーザーが混雑で影響を受けることが起きてしまった。
なかにはある程度、楽天モバイルの基地局が整備され、エリアが構築できているにもかかわらず、ネットワーク設備の設定でローミング先への接続を優先したり、ローミング終了への設備切り替えに積極的に取り組まなかったのではないかという指摘も聞かれた。
これらに加え、あまり印象がよろしくないのが楽天モバイルで利用したデータ通信量を「今月は○○GBも使いました」とアピールするSNSなどへの投稿だ。楽天モバイルのユーザーの投稿であれば、何も問題ないだろうが、楽天モバイルの公式アカウントがこうした内容をくり返し投稿していたことについて、KDDI以外の業界関係者からは「それって、どうなの?」という声も聞かれた。
\今月のデータ利用量の発表/
— 楽天モバイル (@Rakuten_Mobile)December 31, 2025
中の人のデータ利用量です👀
今月は、テザリングや動画視聴でたくさんデータを利用しました✨
みなさんは、今年一番データを使った月はどれくらい使っていましたか?🤔💭
ぜひリプライで教えてください✏️pic.twitter.com/m5CU5bdiTY
楽天モバイルの料金プランのモバイルデータ通信が基本的に無制限であることをアピールしたい狙いはわかるが、総務省から割り当てられた周波数帯域で、自社のエリアが十分に展開できておらず、KDDIからローミングという形でネットワークを借りている立場の企業として、こうした投稿やアピールが適切だったかどうかは非常に疑問が残る。
こうした背景や事情も相まって、KDDIは当初の予定通り、今年9月末で楽天モバイルへのローミング提供を打ち切ることにしたわけだ。
楽天モバイルが言うように、郊外や地方など、一部のエリアではローミングが継続されるだろうが、au/UQユーザーの利用に影響を及ぼさないように、通信のトラフィックはしっかりと監視される見込みで、10月1日以降、楽天モバイルのユーザーは今までと同じように利用できなくなることを理解しておいた方がいいだろう。
少し余談になるが、楽天モバイルがサービスを開始する前、筆者は政府関係者から楽天モバイルの事業の方向性について、ヒアリングを受けたことがある。詳しい内容への言及は避けるが、その際、「4Gでは1.7GHz帯しか割り当てられないため、人口の多い都市部中心でエリアを展開し、都市型の携帯電話サービスとして事業を展開した方が賢明。郊外については一定期間、他の3社が格安のローミングを提供するようなしくみを用意しないと、とても他の3社と戦っていけないのでは?」と答えた。今から振り返れば、現在の災害時の「JAPANローミング」のような形で、郊外や地方のエリアをカバーする手があったのかもしれない。
その後、政府関係者からは「楽天モバイルとしては、都市部中心の展開とは考えておらず、全国にエリアを展開し、戦っていく方針」であることを伝聞された。当時、筆者は「さすがに3社並みにエリアを展開するのは無理」と考えたが、それでも楽天モバイルは約5~6年をかけて、全国にエリアを展開し、人口カバー率も99.9%を達成した。
2020年のコロナ禍で基地局工事などが停滞していたことを考えると、結構なスピードでエリアを展開できたとも言えるが、人口カバー率は人が居住していない場所の接続が考慮されないなどの特性があるため、現状でも郊外や屋内、地下などのエリアは、他の主要3社に遅れを取っている場所が少なくない。
そういう意味でもこれまでのエリア展開の戦略やローミングへの対応が適切だったのかどうかは判断が分かれるところだ。
課題だった楽天グループ内の連携
KDDIが提供するローミングが終了することで、楽天モバイル及び楽天グループの今後を不安視する声を耳にするが、実際のところはどうなのだろうか。
振り返ってみると、楽天グループが携帯電話事業に参入するとき、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクは、銀行や証券、クレジットカード、オンラインショッピング、ポイントサービスなど、いわゆる経済圏競争について、ポイントサービスやコード決済などを軸に徐々に拡大しはじめた段階でしかなかった。
対する楽天グループは、経済圏競争を構成する各サービスを保有しているだけでなく、それぞれのジャンルごとに国内トップクラスのシェアを持っており、これらが連動して、携帯電話サービスに絡めてくることは、当然、3社とも脅威であると感じた。
ところが、いざフタを開けてみると、楽天モバイルと楽天グループ内の各サービスとの連動は非常に限定的で、当初は少し拍子抜けしたくらいだった。普通に考えれば、すでに高いシェアを持つ楽天銀行や楽天証券、楽天カードの顧客に対し、楽天モバイルの契約を優遇する施策くらいは打ち出しそうだったが、当初はこれといった施策が何も提示されなかった。
実状をバラしてしまうと、これまで楽天モバイルの記者会見にはサービス開始から何度も足を運んできたが、発表内容に楽天市場や楽天カードをはじめとした楽天グループの事業と絡むような話題があっても他の事業の広報担当やサービス担当が登壇したり、挨拶をするといったことはほとんどなく、ようやくここ1~2年になって、連携する優遇施策を見かけるようになったレベルだった。
内情はわからないが、もしかすると、楽天モバイルのサービス開始当初は、楽天グループ各社の温度感が意外に低く、赤字決算が連続したことで、「もしかして、これは我々も連携を考えないと、マズいのでは?」と、グループ各社も少し尻に火が付いて、慌てて取り組みはじめたのかもしれない。
こうした『楽天経済圏』重視の方針は、今月2日に発表された「楽天ID連携必須」の施策にも透けて見える。総務省の指摘もあり、9月14日の段階で撤回されたものの、当初は楽天IDと連携しない楽天モバイルの回線を11月30日を以て、自動解約と電話番号の失効を予定するという強気の施策だった。
今回は撤回されたが、今後、『楽天経済圏』への貢献が期待できない楽天モバイルの回線に対しては、ポイント付与などの施策で、今まで以上に差別化が図られることもありそうだ。
こうして楽天グループ全体の連動が遅れている一方、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は着実に『経済圏競争』の体制を整えつつあり、それぞれに独自の方向性を打ち出そうとしている。たとえば、NTTドコモはマネックス証券に続き、ドコモSMTBネット銀行(住信SBIネット銀行)を傘下に収め、金融サービスを新たな軸に育てようとしている。
KDDIは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)との間で、銀行と証券の資本関係を見直し、auカブコム証券(現在の三菱UFJ eスマート証券)を手放しながら、auじぶん銀行を完全子会社化し、au PAYやau PAYカードを組み合わせた『マネ活』路線を積極的に推し進めている。
ソフトバンクも傘下のPayPayを軸に、PayPayカードやPayPay証券、PayPay銀行との連携を強めており、なかでも『スマホ証券』とも言えるPayPay証券は若い世代を中心に獲得口座を急速に増やしている。
証券や銀行、クレジットカードなどの各サービスは、まだまだ楽天グループが強く、各携帯電話会社は追いかける立場だが、楽天グループが携帯電話事業への参入を決めたときに比べれば、それぞれが特色を活かしながら、戦える体制を整えつつあり、楽天グループも安穏とはしていられない状況にある。
楽天モバイルとどう付き合うか
第4の携帯電話会社として、2020年にスタートした楽天モバイルは、今年9月末、KDDIによるローミング提供が終了することで、大きな転換期を迎える。郊外のローミング継続も本稿で説明したように、過去の状況を鑑みると、段階的に終了していくことが確実視される。
郊外エリアについては、楽天グループが出資した米AST SpaceMobileによる衛星通信サービスに期待する向きもあるが、打ち上げた衛星の数がまだ多くないことから、リアルタイム通信が難しいとされ、ローミングが終了したエリアをカバーできそうにない。
もしかすると、今後、郊外にはAST SpaceMobileの衛星通信をバックホールに採用した基地局などが展開されるかもしれないが、今の段階では楽天モバイルからは「Rakuten最強衛星サービス」について、具体的な情報が何も示されていない。
こうした状況を踏まえ、ユーザーとしては楽天モバイルをどのように活用していけばいいのだろうか。
まず、第一に当たり前のことだが、9月末のローミング終了以降、自分の生活圏や主な活動範囲において、楽天モバイルの回線に接続できているのであれば、そのまま使い続けていいだろう。
ローミングが終了するとは言え、楽天モバイルも基地局などの設備投資を継続しており、利用者の多い場所を中心にエリアを拡充してくると考えられるからだ。逆に、人が少なく、利用が少ない場所などは、事業の効率性を考えて、エリア整備が後回しになる可能性が高く、あまり期待しない方が良さそうだ。
一方、9月末のローミング終了後、楽天モバイルの回線がつながりにくくなってしまった場合は、少し対応を考える必要がある。これを機に他の携帯電話会社にMNPで移行するのも手だが、改めて考えたいのが楽天経済圏との関わりだ。
今年8月に発表された楽天グループの2026年12月期第2四半期決算は、税引後利益が272億円となり、2020年度第2四半期以来、6年ぶりに黒字化を達成している。ただ、その内訳を見ると、楽天銀行、楽天カード、楽天証券のフィンテック部門の営業利益が692億円と大きく、楽天モバイルのマイナス331億円という営業赤字を補って余りある状況となっている。
このフィンテック部門の3社は今年10月に集約され、新楽天銀行グループを設立する予定で、預金集約力の最大化を図ると同時に、資産運用力も強化するとしている。つまり、フィンテック部門をもうひとつの核に据え、楽天グループの各サービスとの連携を強めていこうというわけだ。
楽天グループが携帯電話事業に参入する前から、楽天経済圏の強さは知られていたが、当初は前述のように、楽天グループ内の各サービスと連動し、楽天モバイルに取り込んでいくと予想されていた。ただ、本稿でも触れたように、この5~6年を振り返ってみると、契約者獲得のための連動施策は少なく、楽天グループ各社が楽天モバイルの契約増に貢献できたとは言いにくい状況にある。
しかし、逆に楽天モバイルの契約者による楽天グループの他のサービスの利用量は、未契約のユーザーに比べ、2倍以上と増えており、楽天モバイルが楽天グループの各サービスの利用を活性化したとも言える状況となっている。
つまり、モバイル業界では「楽天モバイルが楽天グループの力で、どう回線契約を獲得できるか」という視点で評価してきたが、楽天グループの事業全体で考えれば、楽天モバイルは楽天グループ各社のサービス利用を拡大し、グループ全体の活性化と成長を後押しするために取り組んできたという見方もできる。
携帯電話サービスの話をするうえで、よく「つながって、なんぼ」という言葉が使われる。携帯電話サービスは各社の携帯電話ネットワークに接続して、通話や通信ができるからこそ、通話料やデータ通信料が得られるわけで、ネットワークにつながらなければ、収入が得られず、ユーザーも離れてしまうという意味だ。
だからこそ、楽天モバイルのローミング終了の話も含め、昨今、話題になることが多い『つながりやすさ』も携帯電話サービスにおいて、もっとも重要な評価のひとつとされている。
脱線話としては、かつて端末メーカーが現在のマナーモードを開発し、携帯電話会社に提案したところ、携帯電話会社からは「うちは着信に出てもらってなんぼなのに、着信音を鳴らなくするとは何事だ!」とたしなめられたという。
その後、マナーモードのメリットが携帯電話会社にも理解され、今や世界中の携帯電話に同様の機能が搭載されるほど普及したが、携帯電話サービスは「つながって、なんぼ」が前提条件だ。
ところが、楽天モバイルはバックボーンに巨大な経済圏を持つ楽天グループがあり、携帯電話サービスの提供でグループ各社の成長を後押しできており、ある意味、「(多少)つながらなくてもなんぼ」を可能にしている。
たとえば、普段から外出が少なく、生活圏の多くがエリア内で、自宅に光回線やCATVサービスなどの固定インターネットがあるユーザーなら、楽天モバイルのみで十分、事足りるのかもしれない。楽天市場で買い物をして、楽天カードで支払い、そこで貯まった楽天ポイントで楽天モバイルの利用料金を支払えれば、実質的な負担はさらに抑えることができる。
もう一歩、踏み込んで、楽天ポイントを有効活用するために、楽天証券で楽天ポイントを投資に使ったり、投資で得られた利益を楽天銀行に貯めるといった使い方もできる。
料金と品質と経済圏のバランス
総務省の調査で、国内外の携帯電話料金の比較が取り上げられたとき、筆者は何度となく、「国内の携帯電話サービスは海外のサービスに比べ、圧倒的につながりやすく、エリアもかなり広い。こうした環境の違いを無視して、単純に料金だけで比較するのはいかがなものか」と記事で指摘した。現在は2021年以降の官製値下げによって、国内の携帯電話料金は一段とリーズナブルになったが、利用できるエリアの広さや通信品質は、相変わらず、国内の方が高いレベルを保ち続けている。
ただ、視点を変えて考えると、海外の携帯電話サービスのように、「都市部ではつながるけど、そんなに通信速度は速くなく、少し郊外ではつながりにくいかもしれないし、場所によっては圏外のこともある」といったレベルの携帯電話サービスもアリではないのだろうか。
携帯電話サービスの利用環境がライバル各社に比べ、やや見劣りするかもしれないが、銀行や証券、クレジットカード、旅行、ECなどのサービスは充実していて、生活を広く支えてくれるのであれば、それもひとつの選択肢になるはずだ。
もちろん、災害対策や顧客サービスなどはしっかりと拡充し、ネットワークの整備も計画に基づいて、順次、拡大していくことは必須だが、その分、利用料金が抑えられているのであれば、検討に値すると考えるユーザーはいるはずだ。
こうしたことを踏まえて考えると、9月末のローミング終了後、自分の生活圏や行動範囲で楽天モバイルの回線がつながりにくくなるユーザーは、楽天経済圏にメリットを見いだせるかどうかで判断するのが得策だろう。改めて説明するまでもないが、楽天モバイルのユーザーは、楽天SPU(Super Point Up)プログラムにより、楽天市場での買い物でのポイント付与が「+4倍」になるほか、楽天銀行では普通預金の金利が0.2%上乗せ、楽天カードでの端末購入時の分割手数料無料などの特典が用意されている。
楽天モバイルの月額料金の最少額は、データ通信料が3GBまでで月額1078円なので、月々1078円分のポイント還元が受けられるのなら、利用するメリットはありそうだ。こんな書き方をすると、楽天モバイルに怒られそうだが(笑)、楽天経済圏のサービス利用次第ではあるものの、月額1078円の『携帯電話回線付きポイントサービス』と捉えれば、意外に有用と言えないだろうか。
とは言うものの、いざというとき、ネットワークがつながらないのは困ってしまう。そこで利用したいのがスマートフォンで標準的に搭載されているデュアルSIMだ。
デュアルSIMを活用すれば、楽天モバイルが圏外だったり、電波が弱い場所では、もう一方の回線で接続でき、圏外のリスクを回避できる。もう一方の回線で負担を増やしたくないときは、主要3社の別ブランドやMVNO各社の契約を選んだり、povoのように、必要なときだけトッピングを追加する回線を利用するのも手だ。
また、現在販売されている端末のデュアルSIMは、iPhoneもAndroidスマートフォンもネットワークの状況に応じて、2つの回線を自動的に切り替える機能が搭載されており、回線切り替えをあまり意識することなく、使うことが可能だ。楽天モバイルの音声通話で利用する「Rakuten Link」も他社ネットワークに接続中でも通話ができるので、他社回線を主回線として使い、楽天回線は大量のデータ通信を活用したいときに利用するといった使い分けも可能だ。
ただし、「Rakuten Link」は着信拒否などの迷惑電話対策が非常に弱いので、その点は十分に注意したい。
今年9月末のローミング終了で、ひとつの転換期を迎える楽天モバイル。ユーザーとしては当面、楽天経済圏のメリットを享受しつつ、デュアルSIMで他社回線を組み合わせる方法がひとつの解決策と言えそうだ。
もし、楽天経済圏のメリットが物足りないと感じるようであれば、その段階でMNPを検討すればいいだろう。
裏を返せば、楽天グループとしては、楽天モバイルのユーザーに対し、安定した品質とエリアの携帯電話ネットワークを提供するだけでなく、楽天経済圏としてのメリットも今まで以上に提供できなければ、大きなしっぺ返しを受けることになるかもしれない。今後の楽天グループと楽天モバイルの取り組みを注視していきたい。
















